2017 Fiscal Year Annual Research Report
断面分析試料からの極微量試料の採取とその化学分析手法の開発
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26282070
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 嘉美 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第三部生活技術開発セクター, 副主任研究員 (90445841)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文化財分析 / 高分子分析 / 有機化学 / 熱分解分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は,断面切削を担当していた共同研究者の勤務地変更に伴い切削試料の分析は行うことが出来なかったため,主として分析手法の再評価と封管による微量分析の可能性についての検討を行った。 ヤモリテープの研究向け販売が終了したため,多層カーボンナノチューブ(MWCNT)や同じ炭素同素体である松煙や炭をその代用品として分析への影響を検討した。その結果,MWCNTとは転換率が異なるものの熱分解反応に影響を与えられることが分かった。これは,漆器の下地に炭が用いられた場合にその分解生成物の組成への影響を与える可能性を示唆している。よって,他の分析によって炭の存在が認められている場合にはその点を考慮した解析が必要になることが示された。 また,ガラス管に封管した熱分解手法を用いた場合に漆膜から炭素数30以上のアルキル鎖の検出がはじめて認められた。これは,文化財分析への直接的な寄与は少ないが,漆が塗膜を形成する際にどのような構造をとっているのかが不明であった化学の面から新しいアプローチ法として用いる事が出来る手法であるということが分かった。一方,この分析手法を他の天然物に適用することでこれまでは識別不能であったバイオマーカーの特定などを行える可能性が高い。今後,この分析によるバイオマーカー等の特定が行う事で,これまでよりも微少な試料による分析や,熱分解-ガスクロマトグラフィー/質量分析以外の手法でのデータベース構築へと発展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者の本務地変更とヤモリテープの研究用途販売中止(2017年5月)に伴い,実試料からのサンプリングが行えないためこの部分についての研究は進展していない。 一方で,ヤモリテープと同じ構造の多層カーボンナノチューブを利用した分析への影響や,多層カーボンナノチューブと同じ基質をもつ黒鉛,炭,松煙などを用いた時の差異については当初予定していた以上の成果を得ている。とくに,多層カーボンナノチューブは分解を促進する性質が強い一方で,炭素表面の面積との相関は得られておらず今後,この原因解明も進める予定である。さらに,封管熱分解時に多層カーボンナノチューブを加えることで,これまでに見られないバイオマーカーになり得る化合物が生成されることも見いだした。これは,本研究のみならず,今後の発展に寄与するものだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2018年度内には,(断面からの切削回収では無いものも含めた)微量試料への封管熱分解とこれまでに結果の出ている分析手法による実試料への応用を研究主体として行う。2017年度に埼玉県を中心とした縄文遺跡群(大木戸遺跡,デーノタメ遺跡),中国地方の弥生時代古墳(南方遺跡)などの遺跡より,状態の良い分析試料片を提供していただいているので,これらについての分析を進め,年度末に報告書,もしくは紀要の形で発表することを目指す。 また,これまでの研究成果の外部発信に関しては,PYRO2018や文化財科学会にて報告を行う。
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Causes of Carryover |
研究分担者本務地変更に伴い,期末に分担金の返還が発生し,この金額の全額を使い切れなかったため。
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Research Products
(4 results)