2014 Fiscal Year Annual Research Report
山岳地形変動システムの統一的理解-欧州アルプスと日本アルプスの比較研究-
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26282076
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松岡 憲知 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10209512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西井 稜子 独立行政法人土木研究所, つくば中央研究所, 研究員 (00596116)
池田 敦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60431657)
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 准教授 (80378918)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地形変動 / 土砂災害 / 中部山岳 / 自然現象観測 / 国際研究者交流 / スイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画を「UVプロジェクト」として立ち上げ,日本・スイスの両国で同等な斜面変動総合観測システムを設置して観測を開始するとともに,崩壊・土石流による谷壁斜面の地形変動史の解明をめざす調査を行った。また,UVプロジェクトの国内および国際的展開をめざして,国際学会発表での紹介,キックオフ・シンポジウムの開催と現地での技術講習会を行った。 1.平成26年 6 月にポルトガルで開催された第4回欧州永久凍土会議の基調講演で,谷壁斜面変動の解明と国際比較を推進するための方法論について紹介した。 2.平成26年7月~8月にスイス・マッターバレーのU字谷流域で,海外協力者のM. Stoffel,D. Trappman(ベルン大学)両氏と共同で短期斜面変動に関する総合的観測を開始した。対象は,岩盤崩壊,岩石風化,落石,永久凍土クリープ,土石流等である。地温,降水量,土壌水分,地形変位量の観測機器と自動撮影カメラを活発な地形変化が起こる地点に設置した。また,観測地周辺の崖錐・沖積錐・雪崩堆積地形において,地形や堆積物の特徴,斜面変動の種類・強度・影響範囲,地形変動の発生時期に関する総合的な調査を行った。 3.平成26年5月~11月にかけて,南アルプスのV字谷流域において,スイス同様の短期斜面変動に関する総合的観測を開始した。既存の観測システムも強化して,定期的に現地でのデータ回収や観測機器の維持を行った。 4.平成26年10月にStoffel,Trappman両氏を招へいし,南アルプス流域における落石・崩壊・土石流による長期地形変動史を解明するための樹木痕調査を共同で実施した。また,10月17~19日には筑波大学井川演習林において,両氏の招待講演を含むミニ国際シンポジウム「傾斜山地における斜面変動と生態系-スイスアルプス・日本アルプスの比較-」と測定技術講習を含む現地検討会を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.スイスと日本での総合的観測網の設置は計画通り進んだ。スイス側研究者との強固な共同研究関係を築くことができた。 2.スイスの共同研究者を日本に招へいし,短期間ではあったが集中的に土石流による樹木痕分析を実施し,日本では最初の分析結果を得ることができた。 3.スイスの共同研究者の基調講演を含むミニ国際シンポジウムと現地技術講習会(5大学から22名が参加)を開催し,当プロジェクトの意義を国内外の研究者に広く紹介し,プロジェクトの拡張に向けて具体的な方策を練ることができた。 4.研究成果のうち「安倍川源流大谷崩における土石流発生史」に関する最初の報告は,地形学の代表的な国際誌「Geomorphology」の特集号に投稿する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
観測の継続と観測地の拡大,航空測量データに基づく流域斜面の精密地形分析,年輪分析等の年代測定法に基づく長期変動史の調査に重点をおく。 1.日本アルプスでの短期地形変動の観測:観測地域を大井川上流域の間ノ岳,東河内地区,安倍川上流域の大谷地区に加えて,低標高域にある大井川中流域や他地域に拡張する。低標高域では,表層崩壊や表層クリープを重視する。既存の観測地域ではデータの回収,観測システムの改良を行い,頑強で精密な観測網を築く。最新版の航空測量データやデジタル空中写真を入手し,精密な三次元地形計測に基づき,地すべり,岩壁,崖錐,沖積錐等の各地形種が占める面積率をGIS解析で求める.また測量年度の異なるデータの解析によ李,地形変動を数値化する。 2.日本アルプスでの長期地形変動の調査:海外研究協力者StoffelとTrappmanをスイス・ベルン大学から招へいし,森林下の斜面,崖錐,沖積錐で自然林や50年以上を経過した植林を対象に樹木痕の調査を行い,数百年間の地形変動の履歴を解明する。堆積域での土石流や河床変動の履歴については,有機物の炭素同位体年代を併用して,より長期的な変動を調べる。山頂部や谷壁上部の岩盤においては,地中物理探査や地質構造解析を実施し,地盤条件と岩盤崩壊や地すべりの発生様式や発生年代との対応関係を解明する。 3.欧州アルプスでの調査・観測の継続と拡張:マッターバレーでの調査・観測も継続する。夏にスイスに渡航し各対象地形(岩石氷河,岩盤崩壊,土石流堆積地)に設置した観測システムからのデータ回収,観測システムの改良と拡張を行う。対象地域では,ベルン大学により航空レーザ測量データが取得されているので,その三次元情報をGIS解析に利用する。長期地形変動や地盤構造に関しても,樹木痕解析に加えて,日本と同等な調査を実施する。
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Causes of Carryover |
26年度からスイスアルプスにおいて観測を開始したが,現地の過酷な気象条件から,26年度晩秋には観測システムに問題が生じた。しかしながら,26年度は現地の気象条件から補修・補強が困難であった。そのため,27年度に予算を繰り越すことで,27年度に重点的な補修・補強を行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度にスイスアルプスで調査を行うための旅費,観測機器の補修資材および代替機器の購入のために使用する。
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Remarks |
上記URLに2014年10月に筑波大学井川演習林で開催したミニ国際シンポジウムの簡単な報告がある。
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Research Products
(12 results)