2014 Fiscal Year Annual Research Report
中部日本における最終氷期後半の新たな植物群垂直分布像と現在への変遷過程
Project/Area Number |
26282077
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
沖津 進 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (70169209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百原 新 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (00250150)
三宅 尚 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60294823)
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植生 / 土壌 / 最終氷期 / 垂直分布 / 分布変遷 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化が懸念されるなか,日本でも山岳中,上部の植物群を中心に分布域縮小や生物多様性の危機が予測されている.これに対処するには,最終氷期から現在への温暖化過程での植物群の挙動を具体的に明らかにする必要がある.本研究では,大型植物化石,花粉分析,地形・土壌形成,植生地理解析を総合して,中部日本における,最寒冷期を含む最終氷期後半の新たな植物群垂直分布像を実証的に構築し,現在に至る変遷過程をきめ細かく復元することを目的とする.さらに「最終氷期最寒冷期でも低地・低山帯には針葉樹湿生林や針葉樹・落葉広葉樹混交林,山地帯には現在の針葉樹林と類似する疎林が分布し,後氷期には立地ごとに独自の変遷を経て現在に至った」との,全く新しい植生変遷像を提示する. 平成26年度には,中部日本とその周辺を中心に,魚沼丘陵,戸隠山周辺,関東山地~御坂山地のフィールドで露頭調査を行い,大型植物化石と花粉試料の採取を行うとともに,周辺地域の地形および地層の調査を行った.さらに,露頭調査のフィールド周辺で現生調査を行った.これまでの野外調査で試料採取を行った宇都宮市中里や土浦市花室川,大台町薗川等の最終氷期最寒冷期の化石群について,花粉・大型植物化石試料の数を増やし,AMS法によるより詳細な年代測定を行った.この結果,関東地方から東海地方の低地域と山地帯では針葉樹林の種組成が異なっており,山地帯斜面にはトウヒ,シラビソ,コメツガ,ダケカンバを中心とする現在の針葉樹林と類似する植生が分布し,低地域のチョウセンゴヨウ,トウヒ属バラモミ節が優占する森林とは組成が異なっていたことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はこれまで分析を行った資料の論文化にむけた整理を中心に行ったため,新たな地点でのフィールド調査は,甲府盆地周辺などに限定されたが,中部地方の植生の垂直分布の解明に向けたデータ整理を順調に行うことができた.長野県梓川流域の池尻湿原でのボーリング調査を平成27年度に延期したため,この地点での年代測定や化石分析は本年度に行うことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査で蓄積した,日本各地の最終氷期最寒冷期以降の植物化石・地形調査結果の整理と論文化を中心に,研究成果の公表をめざす.中部日本での植物化石資料はかなり蓄積されてきているので,27年度以降は北海道や,四国・九州にも植物化石データの収集の範囲を広げ,中部日本との比較を行う.
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた池尻湿原でのボーリング調査を27年度に延期することになったため,それに伴う年代測定費等の諸経費を平成27年度に持ち越して執行することになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には池尻湿原のボーリング調査に伴う放射性年代測定委託費や分析に伴う諸経費を支出するとともに,平成26年度に行った調査結果に伴う,年代測定や論文作成費に主に使用する.
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Research Products
(7 results)