2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島の地形変動の総合復元に基づく国土防災のための地形分類体系の再構築
Project/Area Number |
26282078
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須貝 俊彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90251321)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 地形分類 / 斜面変動 / 河川地形 / 地形計測 / 自然災害 / 地形層序 / 階層分類 / 類型分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球表面を構成するすべての地形を対象として、地形の階層的類型分類体系を再構築することを試みている。 斜面・重力変形については、線状凹地地形の新たな分類法として、木曽山脈において、3次流域を地形単位とした統計解析を進め、斜面地形の類型化を試みた。また、表層崩壊地形については、広島において、落水線解析による表層崩壊場所の地形特性の定量化を試みた。さらに、地すべり地形については、Z軸(地形の厚み)を導入することを目指し、奥羽山脈を対象に、地すべり土塊内の湿地分布に着目した地すべり変形と地下水面との関係を検討した。 河川地形に関しては、2015年9月関東・東北豪雨で発生した鬼怒川の破堤地形について、写真・GPS測量・堆積物分析を進め、破堤微地形モデルを構築し、これを地形単位として、自然堤防の詳細分類を行った。また荒川扇状地の堤外地において、過去70年間の河床変動を復元し、堤外地の微地形分類基準について検討した。さらに、氷期の河川地形分類を進めて、沖積層基底礫層の分布・発達と海水準変動・地殻変動の関係を検討した。また、多摩川上流域を対象として、氷期の本流ー支流間の地形形成相互作用の復元を試みた。 火山地形に関しては、直接的な進捗はなかったが、中後期更新世の広域テフラについて、日本海海底、男鹿半島安田海岸・濃尾平野大深度地下における対比・同定を行い、阿蘇3火山灰の降下域の再検討、前・中期更新世境界の鍵層の同定、などで一定の成果を得た。巨大噴火が日本列島スケールでの地形形成に与える影響評価へつなげていきたい。 ネオテクトニクス・海水準変動・河川作用の複合作用の結果としての造構運動史と地形発達史の関係について、濃尾平野・関東平野を対象に地形層序学的観点から検討を進めた。以上の成果はAGU, INQUA大会等で発表し、一部は査読付き論文として公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個別地形を対象とした地形分類方法や分類基準を新たに導く試みは進んでいる。2014年秋の広島豪雨、2015年9月の鬼怒川破堤等、自然災害を伴う地形変化が相次ぎ、それぞれの現地調査や地形分析はそれなりに進捗した。しかし、なぜ、いま、そこで、そうした地形変化が生じたのか説明できるレベルからは遠い。、直接防災に貢献するために、本研究課題である地形分類の体系化は必須である。しかし、新たな地形分類体系が、概念的な分類(地形の見方)にとどまっていては、防災への貢献度が低い。全地表面を体系的にとらえなおすという試みと、個別災害事例に学ぶという、2つのアプローチが統合できていないので、個別成果は多く得られているか、十分進捗したとは言えないと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
地形分類体系といっても、内容は多岐にわたっており、(1)ハザードマップや災害実績図におけるの現手法開発、といった社会実装につながる出口を意識したアプローチと、(2)自然現象としての地形変化の認識体系の一般化という純粋理学的なアプローチとを統合する、という高い目標をもって地形分類の体系化を進める必要がある。最終年度を迎えるので、これまで取得したデータや知見をこうした方針のもとで整理し、補備的調査を積極的に推進し、空間的分解能を革新的に高めた地形分類例を示し、それと地形プロセスとの関係を論じることで、イベントごとの地形変化の累積として地形発達がある、という基本的考え方が重要であること、ハザードマップ等へ応用されなければならないことを示したい。そして、中期的な目標を掲げ、今後5年間で取り組むべき優先課題を提示できるようにしていく。
|
Causes of Carryover |
設備備品を購入せずに、災害発生地での現地調査を実施した結果、野外で研究に費やすことができる時間的制約があり、次年度使用額が生じた。また、H27年度に予定していたデータベース構築が遅れており、当初の目標を達成するため、謝金その他を次年度に持ち越すことにしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
地形を構成する表層堆積物の構造をイメージングするために、機器をリース・借用するなどして、データ取得する。災害発生地における現地調査がなお不足しているため、SタームとAタームの間の時期などを活用して、野外調査を継続する。数編の論文と本の章を準備中なので、それらの校閲や投稿料・別刷代として予算執行が間に合うように計画的に執筆を進める。
|
Research Products
(35 results)