2014 Fiscal Year Annual Research Report
知的エージェントアプローチによる都市空間内の歩行者流シミュレータの開発
Project/Area Number |
26282083
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
兼田 敏之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10192543)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 雅和 山口大学, その他の研究科, 准教授 (20621105)
市川 学 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (60553873)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | モデリング / 回遊行動 / 能動的探索行動 / 人工社会 / 都市多様性条件 / 限定合理性 / 外部性 / 知的機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)展開著しい空間認知科学分野における既存研究文献をおもに探索し,モデル体系化のための概念枠組み再整理を行なった.その産物としてスペースシンタックス理論を援用したメンタルマップ未知状況における顧客エージェントの能動的探索行動モデルの設計・試作を行ない,特許出願にも及んだ.このモデルは,既存アルゴリズムにヒューリスティックスを付加したもので,同時に試作した仮想空間行動実験システムを用いてのパラメータ同定が可能である.メンタルモデル不完全状況における回遊行動モデルへの組込みなどの体系化への途を拓いた(一部今年度の成果,他は次年度に公表). (2)回遊行動エージェントモデルのテストベッドとして,人工社会型商業モデルを精緻に動学化した人工社会シミュレータDDyn(Downtown Dynamics, ASSA-SCを改称)を新規に開発した.顧客エージェントは,メンタルモデル完全の仮定を置いているが,Errandの多様性を考慮しての,ごみ箱モデルによる外出意思決定の理論的検討,来訪地区決定のための事前期待地区効用を導入したロジットモデルの改良,機会主義的行動プラン作成のアルゴリズムの簡略化,強化学習による店舗効用値の更新アルゴリズムの改良,地区来訪の実績に応じた地区効用の更新アルゴリズムの導入など,限定合理性と知的機能の双方で顧客エージェントに多様な「性格」を与えうる整合的なモデルに改良した.また,新しく近視眼的合理性原理に基づく店舗エージェントの設計ならびにこれらの相互作用系の構築もあわせて行なった.顧客エージェントのミクロ経済的動因による多彩な空間行動を規定する,エージェント間の動的相互作用を経済学の称する「外部性」仮定条件を分類整理して,相互作用系の「拡張可能性」を担保した.また,シミュレーション分析によりJacobsの言及した都市多様性条件の検討を試みた(次年度に公表決定).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)基礎研究のうち,エージェントモデルに対する認知機能については,想定以上に進展した.とくにスペースシンタックス理論を批判的に発展させたアイデアにより,いまだヒューリスティックス・ベースではあるが,メンタルマップ不完全状況下における回遊行動エージェントモデルの設計が視野に入った点で今後の展開を有望視している. (2)また,回遊行動エージェントモデルのテストベッドとしての人工社会シミュレータDDynの開発では,経済的なミクロ動因を持つ顧客・店舗の双方のエージェント集団から,Jacobsの都市多様性条件のモデル分析にまで進むことができ,基礎研究として話題性のあるアピーリングな試みが遂行できたと考えている.また,エージェント間相互作用を「外部性」のミクロ分解により,仮定条件を整理できたことは,エージェントシミュレーションの相互作用について操作的理論を前進させたことを意味し,単なるマイクロシミュレーションと異なる複雑系のモデル構成理論の必要性を喚起していると考えている. (3)また,今回研究で掲げた,認知・情動・パーソナル情報機器のうち,認知については今年度に体系化研究を前進させることができたが,情報・パーソナル情報機器については,平常時状況よりは非常時状況のほうが向いているという観点から,もう一つのテストベッドシミュレータ(仮称,SOARS-SR)において検討すべきとなったが,このモデリングのためのプラットホームの開発に前進が見られ,次年度でのモデル設計・試作に繋いだ.
|
Strategy for Future Research Activity |
そのため,次年度で最緊急で取り組みたいのは,エージェントの情動・パーソナル情報機器や,空間上に設置されるであろうインタラクティブなデジタル・サイネージュの効果を検討するための大規模テストベッドシミュレータの試作である.そのため,このシミュレータでは,各種被災などの非常時状況を想定し,被災者エージェントの被災から72時間にわたる空間行動をテーマとする.その際,共同研究者の市川が中心となって開発を進めているモデリング・プラットホームSOARSの空間表現改良版を用いて,にシミュレータ設計を行なう.そのために,防災科学分野の研究者達を新たに研究協力者として学外から招きコラボレーションを積極的に推し進める. また,今年度の研究成果を拡大させるとともに,成果公表を積極的に行なう.
|
Causes of Carryover |
シミュレータ開発を補助するプログラマの適任者を十分な時間雇用できなかった.また,そのためのコンピュータなどの購入を差し控えた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には,シミュレータ開発を補助するプログラマの適任者を見出し開発の遅れを取り戻す.また,コンピュータなどの購入を行なう.
|
Research Products
(9 results)