Project/Area Number |
26282089
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
有賀 裕二 中央大学, 商学部, 教授 (40137857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生天目 章 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (70546051)
海蔵寺 大成 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10265960)
井上 純一 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30311658)
和泉 潔 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10356454)
佐藤 彰洋 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50335204)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モノと人の流れ / 銀行と企業のネットワーク / 生産ネットワーク / 国際研究者交流 スイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は金, モノ, 人の流れ相互の関係性から複合的リスクを評価, レジリエントな社会システムの構築を目標とするが, 初年度である今年度は, 各「流れ」についてのデータ収集・予備的解析を行った. 金流においては, 金融経済と実体経済の両部門の複雑な相互作用に着目し, 金融, 実体経済の主体をなす銀行, 企業をエージェント化し, 両者間の融資関係をネットワーク表現することで,エージェント状態やネットワークの動的変化が系全体に与える影響を明らかにした. ここから得られたデータを可視化・分析することで, リスク伝搬プロセスを解明するための枠組みを構築した. 物流に関しては, マクロ有効需要成分に関する非確率的要因の同定を行った. 特に, モノのネットワークの固有性の解析において, 1995/2000/2005各年度の「日本の投入産出表」に基づくランダム行列分析を行い, ランダムに分布可能な産業クラスタ(固有モード)と非ランダムに分布しているクラスタを抽出することができた. 人流に関しては, 国土交通省航空輸送統計とICAO航空統計からデータの収集, 人流モデルについて先行研究の調査を実施した. また, 簡単な空港輸送統計に対する生成モデル構築の予備解析も行った. 具体的には2空港間距離と双空港利用者数間に重力モデルが成り立つと仮定した場合の空港利用者数の従う微分方程式を導出し, 平均場近似を用いてその振る舞いを評価した. また, 空港利用者の占有分布を相互作用する壷モデルにより説明した. 特に利用者数密度の増加とともに「凝縮現象」が生じ, 少数の有力空港が利用者を独占, 残りの空港の利用者数分布はベキ則に従うことが明らかとなり, この結果は国内主要空港統計からも指示(→支持)された. なお、Dirk Helbing 教授 (ETH Zurich)との議論により、上記の個別研究諸課題の統合は, 社会経済システムの基礎概念の多次元的理解によって可能になるという新たな知見を新たに得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にあげた学術的成果に加え, 本年度では, 金, モノ, 人流の個別問題を洗い出し, 各問題の定義, 先行研究の調査, 現場業務, そのネットワーク構造の調査を行うことも当初計画であった. これは十分に達成できたと言える. 事実, 人流物流ネットワーク研究会を2回開催, 人流・物流に関する予備調査を行った(2014年12月27日第1回於京大, 2015年2月18日第2回於京大). また, 2015年3月21, 23日, 京大とグランフロント大阪にてEU-Japan Workshop 2015 in Kyoto and Osaka "Exploring complex socio-techno-environmental systems across the boundary" を共催. 当研究計画に関する成果発表とレジリエンスを高める方法を検討した. さらに, 金融ネットワーク研究会を2014年6月6,7日(於 東京田町), 2015年1月23, 24日(於 横須賀)の計2回開催し, 当該分野の現状を調査し, 問題点の整理を行った. また, 国際協力体制の確立を目指し, ICT支配システムにおけるシステミックリスク回避の政策について, 国際連携協力者Dirk Helbing 教授 (ETH Zurich)と継続的に議論を続けることができ, 著者の依頼により, Helbingの新著Thinking aheadの翻訳出版が検討され, smart digital revolutionの政策処方の基礎概念と多次元的システミックリスク回避について明確化する段階に達した. さらにGiovani Dosi教授 (ピサ大学)とも緊密な国際研究力体制が形成できた(研究代表者がmanaging editorを務めるジャーナルEIERを通じて特集号「幾何学の経済学への応用」を制作).
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Strategy for Future Research Activity |
金, モノ, 人流のうち, 金流に関しては予想を上回るペースで研究が進んでいる. 事実, 今年度構築されたシミュレーションからの出力データを経済物理学で知られている諸法則と比較, モデルの妥当性を検証しながら,経済サイクル,銀行と企業の資産形成,銀行や企業の倒産などについて系統的に調べていくことができる. 従って, 金流においてはこの路線を継続していくことで, 今後多くの成果が期待できる段階にある. 物流に関しては, 新コンセプト「幾何学による経済学へ新接近」において, 生産システムとイノベーションに関し, 本質的にミンコフスキ幾何学ゾノトープの観点から解析できること, 従って, ネットワークの再形成問題も議論できることに着目し, 研究を推進していく. また, 人流においては, 生成/予測モデルは既に多数提案されており, 我々独自の特色を出すため, 各空港の利用者数の占有分布に焦点をあて, 空港閉鎖と占有分布変化の関係を探る数理的方法論を構築する. 具体的には, 今年度得られた結果を非一様な重力モデル指数を持つもの, 相互作用をRadiationモデルへと拡張した場合に対する知見を蓄積していく. さらに, 研究体制の整備として, 平成27年度統数研共同利用研究集会「人流物流ネットワークとその周辺」研究会が採択されたことを受け, 各年度2回, 統数研にて人流物流に関する研究者, 実務家が集う研究集会を開催する. さらに, 金融ネットワーク研究会2回を北大 (7月)と京大 (12月)において開催予定である. これらを通じて先端的研究, 実務上の問題, および, 社会実装に関する議論を深める. さらに, リスクとレジリエンスを日本国内・世界規模で計量するためのデータ収集と分析について着実に推進する. なお、当該研究課題によるセッションを国際会議21st CEF (June 2015 in Taipei)、JAFEE2014年次大会 (東大本郷)などで組織化する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画に沿った航空輸送のデータを提供する「(株)アマデウス・ジャパン/Amadeus Japan K.K.」」と料金交渉を行ったが、データ料金はAirTraffic=12000EUR/月、 MID=Daily=2153EUR/月であった。そのうえ、データ提供にはアマデウス社とデータサイエンティストとの契約を課せられ、その料金はDay - EUR 1,200、Week - EUR 6,000と高額であった。この結果、200万円前後の支払いが予想され、カレントデータの購入は予算制約上断念せざるをえなかった。したがって、平成27年度に一部基金を繰り越し、再度、上記アマデウス社とデータ購入を再折衝を行うことにして、平成26年度は当座の研究に必要なCD-ROM版で以下のデータ購入を行なった。 M5: On-Flight Origin and Destination DTPL-5U $2,100 M6: Air Carrier Fleet & Personnel DTPL-6U $1,050
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記データ提供会社アマデウス社と再度、航空輸送のカレントデータの購入について再折衝を行い、費用節減のためデータサイエンティストの契約を解除できうかどうかを交渉を行う。データ購入で余剰が出た場合、次年度使用額の一部、予定する学会国際セッション設定費用などに割り振る予定である。
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