2015 Fiscal Year Annual Research Report
システミック・リスクと社会経済システムのレジリエンスに関する研究
Project/Area Number |
26282089
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
有賀 裕二 中央大学, 商学部, 教授 (40137857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生天目 章 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (70546051)
海蔵寺 大成 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10265960)
井上 純一 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30311658) [Withdrawn]
和泉 潔 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10356454)
佐藤 彰洋 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50335204)
佐藤 浩 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 准教授 (30295737)
久保 正男 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 准教授 (30292048)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チェックポイント / アルファ中心性 / カスケード障害 / 雇用集積 / 統計力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、有賀教授は、ネットワーク型生産システムの観点から経験的データを用いる投入産出表にランダム行列理論とα中心性を用いて、商業(モノの配分)、金融(カネの流れ)、モノの生産を統合的に解析可能にすることができた。一方、生天目教授は、ネットワーク解析の立場から、確率的伝搬ダイナミクスによる解析とオープンデータの使用によって現実ネットワーク上でのリスク伝搬に着目し、ノードの脆弱性や増幅度の定量化、現実のネットワークの特徴と脆弱性の関係性及びリスクの低減策について分析・評価した。詳細は以下のとおり。 (1)α中心性が隣接するリスクの伝搬を到達と増幅の影響を推定する。日本経済ではα中心性がもっとも高い産業は商業、次いで金融保険であった。流通はモノのネットワーク、金融はカネのネットワークであるので、α中心性が主として生産システムの側からモノとカネのネットワークのチェックポイントを示唆していることがわかる。一方、国際経済がα中心性に影響を与えることも判明した。競争型輸入を仮定する投入産出係数を用いると、石油精錬が首位となる。これより、われわれのモデルでも、システミックリスクの伝搬は国際経済全体のモデリングが必要であることも確定した。 (2)航空ネットワークについては、重力モデルとは代替的な新モデリングにより、生天目教授が確率的伝搬ダイナミクスとオープンデータを用いて、日本国内の航空ネットワークと世界航空ネットワークを構築し、これらの現実のネットワーク上でのカスケード故障を扱い、それらの性質や脆弱性を明らかにした。日本国内の航空ネットワークと世界航空ネットワークは、本質的に異なる特徴を持つことをシミュレーションで確認した。 (3) 研究の金流については、海蔵寺、和泉教授が予定通り、シミュレーションを展開し、証券市場、資産市場の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は年初に研究分担者・井上純一博士の急逝という筆舌に尽くし難い大きな不幸に遭遇することになった。しかし、生天目教授の速やかな研究継承により井上博士の研究は補完され、プロジェクトは計画どおり研究を達成することができた。また、プロジェクトの個別研究と並行して、有賀教授が分子生物学の最新の成果を参考にシステミックリスクに「チェックポイント概念」を導入し、レジリエンスの評価について新たな測定法を提案することができた。そのような次第で研究はほぼ予定通り進捗したと考える。 井上博士の急逝は佐藤博士提案の航空ネットワーク重力モデリングの改訂作業中の半ばのことであった。直ちに井上研究室で井上博士の研究作業の復元を試みたが、技術と法律の壁に阻まれ復元は適わなかった。そのため、別途、新たに確率的伝搬ダイナミクスとオープンデータを用いて航空ネットワークの研究を行った。不幸中の幸いであるが、研究実績の項で述べた通り、日本国内の航空ネットワークと世界航空ネットワークは、本質的に異なる特徴を持つことをシミュレーションで確認することができた。 また、当該プロジェクトで予定した国際会議・国内ワークショップも計画通り実現することができた。 (1)当該プロジェクトのテーマによる国際会議(2016年3月)を東京大学小島ホールで開催し、海外ゲスト10名の講演を含む45報告を実現した。この会議では、Professors Bikas K Chakrabarti, Anirban Chakraborti, Enrico Scalas等の国際協力を得て、井上純一博士の追悼セッションを盛大に開催することができた。 (2)台北で開催された国際会議CEF2015 (2015年6月で 当該プロジェクトと同名のセッションSS12を開催した。 (3)金融ネットワーク研究会(2015年12月)を京都大学で開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は研究分担者の井上純一博士の急逝のため航空ネットワーク解析に重大な支障を来したが、生天目教授等がオープンデータ解析によって、国内と世界のネットワークのカスケード障害について十分な知見を得た。今年度は、昨年度の研究成果を踏まえて、以下のようにして研究を完了する。(1)分子生物学の免疫系のシステミックリスクの多次元的概念を確立する。(2)ネットワーク型生産システム解析でチェックポイント概念を確立するために、投入産出ネットワークにα中心性を用いてリスク伝搬を解析し、国際貿易を含む世界投入産出表で世界的なリスク変動解析を改善する。特に、経験的解析だけでなく理論モデリングも確立する。(3)α中心性と雇用ベクトルの分析により、金融、商業部門のネットワークの影響、また、ヒトのネットワークにおける「雇用集積」の影響を分析して、モノとヒトのネットワークのチェックポイントを同定する。(4)金融市場のファンダメンタルスの解析およびダークプールの解析を精緻化する。(5)以上を総合して、モノ、ヒト、カネの多次元局面から、社会経済システムの各局面に固有のレジリエンスの実装ポイントを提案する。(6)平成28年3月26・27日開催の当該科研費主催の国際会議International Conference on Socio-economic Systems with ICT and Networksが成功したことにより、科研費メンバーの研究成果と科研費招聘ゲストの講演を基礎にして英文モノグラフ Systemic risks in evolution of the social complex system(仮題)を作成して、研究成果の一部として上梓する計画である。出版についてはSpringer japanより情勢金出版を条件としないという内諾を得ている。
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Causes of Carryover |
有賀の基金分の実際の支出額は1,811,625円であったが、防衛大・生天目教授からの返金11,924円発生したため、8,886円の残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議の記録映像委託代金の一部として4月に返金処理した。
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[Journal Article] Effects of Price Regulations and Dark Pools on Financial Market Stability: An Investigation by Multiagent Simulations2016
Author(s)
Mizuta, T., Kosugi, S., Kusumoto, T., Matsumoto, W., Izumi, K., Yagi, I.,Yoshimura, S.
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Journal Title
Intelligent Systems in Accounting, Finance and Managem
Volume: 23
Pages: 97-120
DOI
Peer Reviewed
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