2014 Fiscal Year Annual Research Report
高負荷活動従事者の生体情報を活用した疲労度判定システムの構築
Project/Area Number |
26282093
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
岡 泰資 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (10240764)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗山 幸久 東京大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10373648)
沢口 義人 木更津工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50455119)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 疲労 / 高負荷活動 / 周波数解析 / RR間隔 / 体温 / 呼吸代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
防火衣を着装して消火・救助活動する消防隊員,化学防護服を装着して薬物採取・除去活動する従事者,暑熱環境下で建設・港湾現場での作業者などは,過酷な環境条件下での高負荷活動を強いられる。防火衣や非エアー供給型の防護服は,通常の綿製の作業服に比べて,熱がこもりやすく,透湿性が悪いため,防火衣や防護服の中は,活動に伴う産熱や発汗により高温多湿状態となる。このような状態での活動の継続は,活動従事者の加速度的な体力消耗を招き,疲労蓄積だけでなく,適切な水分補給や休息,あるいは積極的な放熱がなければ,機能低下として現れる集中力の低下,人的ミス,安全管理の欠如あるいは熱中症を招く要因となる。 本研究では,消防活動を高負荷活動の代表例に位置づけ,活動従事者の疲労状態を客観的に推し量る手法を検討するために,体温,RR間隔の周波数解析から得られるパワースペクトル密度の形状変化およびゆらぎ指標を追跡することで,心肺機能への負荷程度を客観的に推し量ることができるかを検討する。 活動従事者の疲労状態をリアルタイムで捉えるには,身体的疲労度を判定する指標の閾値の設定,データ処理アルゴリズムの高速化,現場活用に向けての測定機器の小型化・防水化および現場での情報の共有化(個々の活動従事者と現場指揮者との情報共有)が必要である。そこで,活動従事者の個人差の影響を検討するために中層建物火災での消防活動を模擬した消防活動モデルに沿った活動中における各隊員のRR間隔の周波数解析結果と外耳温度の変化を積み重ねるとともに,計測機器開発を通して,疲労度判定システムの構築を目的とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
消防活動従事者の疲労状態を客観的に推し量る手法を検討するために,負荷程度と消防隊員の心肺機能および生体情報の関係を示すデータを安定した条件下で再現性よく収集できること,活動内容毎に心電データの周波数解析が可能な時間履歴データを取得できることを条件として,中層建物火災での消防活動を模擬した消防活動モデル沿った活動を温度・湿度が制御できる人工気候室(設定条件:35 ℃,70 %)にて,18名の現役消防隊員に実施いただき,活動中のRR間隔および外耳温度の連続測定,模擬活動前後での,血中乳酸値,VAS値の変化などの各種データを収集した。これらのデータをもとに,RR間隔の周波数解析結果として得られるパワースペクトル密度(PSD)の形状が,活動状況に応じて特徴的な変化が生じることを確認した。 また各消防隊員の活動限界に近い状況における生体・生理情報を入手すること,およびこれらの情報をもとに疲労状態を推し量る指標の閾値を決定するために,同じ温度・湿度の設定条件下の人工気候室にて,自転車エルゴメータを用いた2段階の負荷活動(1.5 kg・mを10分,3.5 kg・mを漕げるところまで(最大40分))を実施し,活動中のRR間隔,外耳温,酸素摂取量,二酸化炭素排出量,換気量および呼吸数の連続測定を行った。その結果,呼吸代謝とPSDに呼吸反射の影響が現れる周波数領域にパワー変化に相関があることを確認した。 さらに,出動時に迅速に装着でき,耐久性・防水性に優れ,消防活動の阻害を可能な限り低減した生体信号測定装置の作製と,従来から使用されてきたディスポ電極の代わりに近年開発された機能素材を用いたRR間隔測定を試み,取得データの差異の有無を検討した。
|
Strategy for Future Research Activity |
RR間隔の周波数解析から得られるPSDスペクトルの形状変化を現場で常時監視することは非常に難しいため,PSDスペクトルの形状変化および心肺機能への負荷の程度を何らかの形で数値化するために,指標の探索と閾値について検討する。具体的には,昨年度に取得したデータを用いて,PSDの周波数に対する揺らぎ指標の変化および呼吸反射がPSDスペクトルに現れる周波数領域のパワー値の変動に注目する。これらの指標と呼吸代謝データとの比較から,酸素摂取量と二酸化炭素排出量との関係についても検討する。得られた結果の妥当性は今年度取得するデータで検証する。 昨年度に作製した生体信号測定装置に,測定結果として得られるRR間隔,心拍数,外耳温度および身体的疲労情報に関する数値データを送出する無線通信機能を付加する。活動中の隊員自身が装着する測定装置から送出される無線信号(拍数や体温などの数値データ)を見易く表示する腕時計型の表示装置,複数の測定装置からの無線信号を受信し全装着者の数値データを一覧表示する装置,および周波数解析した結果がタブレット型端末に表示されるようなシステム化に向けたプロトタイプモデルの作成を試みる。
|
Causes of Carryover |
2013年度Londonで開催されたInterflam 2013で研究発表したところ,独自で消防隊員の訓練基準を作成中であった英国ケント消防の方々が非常に興味を持たれたことを受けて,申請者等が構築した標準消防活動モデルの高度化についての共同研究を視野に入れ,調整していたが実現できなかった。このための費用を繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
英国全体の消防士の訓練を統括するChief Fire Officers AssociationのFireFit Steering Gropeに,われわれが目指している消防隊員の疲労状態の把握研究と英国消防隊員の体力向上に注目した研究は表裏の関係があることを説明し共同研究を提案したところ,FireFit Steering 会議の議長が所属するLancashire Fire & Rescue Serviceにおいて実施できることなった。この測定にかかる経費として繰り越した費用を使用する。
|
Research Products
(1 results)