2014 Fiscal Year Annual Research Report
アパタイトの金属腐食抑制機構の解明及び防錆コンクリートの開発
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26282096
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
掛川 寿夫 香川大学, 工学部, 教授 (50325320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末永 慶寛 香川大学, 工学部, 教授 (00284349)
田中 康弘 香川大学, 工学部, 准教授 (10217086)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アパタイト / 防錆作用 / アノード反応抑制作用 / 鉄筋コンクリート |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の電解液中での各種金属からの金属イオン遊離に対するHAP(骨由来天然ヒドロキシアパタイト)の抑制作用を検討した。その結果、0.5M塩酸及び5%塩化ナトリウム溶液中での鉄、銅、アルミニウム、亜鉛からのイオン遊離が有意に抑制された。また、硝酸銀溶液中でのアルミニウムからのイオン遊離も有意に抑制された。直流電位差計(JIS Z8805)を用いて電気化学的腐食及び自然電極電位発生に対するHAPの影響を検討した結果、鉄、銅、アルミニウム、亜鉛の各電極及び銀電極間の自然発生電位に対するHAPによる抑制作用が確認された。以上の結果、HAPには明らかなアノード反応抑制作用のあることが示された。 HAP配合コンクリート供試体(HAP配合濃度;内割1%、3%、外割1%、3%)の材齢7日、28日、91日での圧縮強度試験を検討した。その結果、内割1%、外割1%、及び外割3%のコンクリート供試体では、材齢7日で約30N/mm2、材齢28日及び91日で約40N/mm2を確保することができた。また、HAPを配合していないコンクリート供試体と比較して、90%以上の圧縮強度を実現することができた。 砂鉄(3%)及びHAP(1%、3%)は、外割り配合したコンクリート供試体を用いて砂鉄からの鉄イオン溶出に対する抑制効果を検証した。コンクリート中の砂鉄の腐食を加速させるため、HAP及び砂鉄配合コンクリート供試体を1M塩酸含有2%塩化ナトリウム溶液に浸漬した。その後、砂鉄の腐食及び鉄イオン溶出を確認した。実験の結果、150日後、HAPを配合していないコンクリート表面に明らかな酸化鉄(赤さび)が確認された。一方、HAPを配合した場合、150日後においてもコンクリート表面の赤さび生成は、ほぼ完全に抑制された。また、コンクリートからの鉄イオン溶出は、150日後においても、HAPにより完全に抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HAP(骨由来天然ヒドロキシアパタイト)のアノード反応抑制作用について、HAPによる種々の電解液中での各種金属からの金属イオン遊離に対する抑制作用、硝酸銀溶液中での金属からの金属イオン遊離に対する抑制作用、電気化学的腐食及び自然電極電位発生に対する抑制作用を確認することができた。さらに詳細なアノード反応抑制メカニズムの検証については、現段階では、確認できていないが、今後、金属腐食電位(酸化還元電位)等に及ぼすHAPの影響を検討する予定である。 HAP配合コンクリートの土木建築用コンクリートとしての品質検証については、内割1%、外割1%、及び外割3%のコンクリート供試体では、材齢7日で約30N/mm2、材齢28日及び91日で約40N/mm2を確保することができ、HAPを配合していないコンクリート供試体と比較して、90%以上の圧縮強度を実現するという当初の数値目標を達成することができた。また、生コンクリートのJIS規格適合性についても、全ての項目において十分な結果を得ることができた。 HAP配合によるコンクリート供試体中での金属鉄腐食抑制効果の検証については、砂鉄(3%)及びHAP(1%、3%)は、外割り配合したコンクリート供試体を用いて砂鉄からの鉄イオン溶出に対する抑制効果を検証した結果、HAPを配合していないコンクリート表面に明らかな酸化鉄(赤さび)が確認されたが、HAPを配合した場合、150日後においてもコンクリート表面の赤さび生成は、ほぼ完全に抑制される結果を得ることができた。また、本実験において、コンクリートからの鉄イオン溶出についても、HAPにより完全に抑制されたることが確認され、土木建築用の防錆コンクリート材料としての有用性を確認することができた。 以上、本研究は、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、未だ明らかになっていないHAP(ヒドロキシアパタイト)のアノード反応抑制メカニズムの解明を主とした研究を推進する。金属腐食におけるHAPのアノード反応抑制メカニズムを解明することを目的として、金属腐食電位(酸化還元電位)等に及ぼすHAPの影響について詳細に検討する。実験方法としては、各種条件下での各種金属からの金属イオン溶出に及ぼすHAPの影響、2つの電極間での起電圧発生におけるHAPの影響、各種金属の腐食電位に対するHAPの影響等について検討する。また、HAPにより金属イオン溶出が抑制された金属組織表面を電子顕微鏡を用いて観察することにより、HAPのアノード反応抑制作用(防錆作用)が、化学的反応によるものなのか、物理的反応によるものなのかを追求する。また、電気化学的実験によるHAPのアノード反応抑制メカニズムを検討する。例えば、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)におけるHAPの影響を検討する。3%NaCl溶液に対して、HAPを添加しないもの、1%、5%あるいは10%HAPを添加したものを電解液として使用し、作用電極は、JIS G3123及びJIS G3108に規定された材質と形状の鉄電極、参照電極には銀塩化銀電極、対極には白金電極を用いて電気化学測定システム(HZ-7000)により、開始電位-0.7V、終了電位-0.1V、スイープ速度40mV/sの条件下、LSV測定を行う。
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Causes of Carryover |
物品費及び旅費が、少なかったことによるものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用する。
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Research Products
(1 results)