2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会変化や気候変動を考慮できる都市・建物強風被害リスク評価プラットホームの構築
Project/Area Number |
26282108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 敬 京都大学, 防災研究所, 教授 (00190570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友清 衣利子 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (30346829)
石川 裕彦 京都大学, 防災研究所, 教授 (60263159)
西嶋 一欽 京都大学, 防災研究所, 准教授 (80721969)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 災害リスク評価 / 適応策策定 / 建物強風被害リスク / 気候変動 / リスク評価 / プラットホーム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は強風ハザードおよび都市・建物の強風被害リスクの予測を可能とする“強風被害リスク評価プラットホーム”を構築するものである。本年度の実績を以下にまとめる。 ・「気象モジュール」については、平成27年に発生した台風の計算を行い、観測結果と比較した結果、用いた気象モデルでは地面付近で観測地よりも大きめの風速を予測することが判った。そこで、建物の被害リスク予測の精度を高めるために、地形や建物・植物などの地面粗度の影響を取り入れ、変動風速場を予測できるラージエディシミュレーションを用いたダウンスケーリングを検討した。 ・「確率台風モジュール」は「建物被害モジュール」と組み合わせて、プラットホームに組み込むための調整を行った。また、建物被害モデルに取り込む被害発生メカニズムの改良と、建物耐風性能要素の感度解析を行った結果、精度向上のためには外装材の耐力評価と風圧力の精度評価が重要であることを明らかにした。 ・「建物被害モジュール」については、建物被害モデルに取り込む被害発生メカニズムの改良を行った。また、建物耐風性能要素の感度解析を行った結果、外装材の耐力評価と風圧力の精度評価が重要であることが判った。そこで、屋根ふき材の風圧力に対する耐力評価と、建物群内における各建物に加わる風圧力特性を明らかにするために風洞実験を行い、建物群内で建物に加わる風圧力を明らかにした。また、過去の台風被害との比較により精度検証のための準備を行った。 ・「建物耐風性能データベース」については、前年度と異なる場所を選び、建物耐風性能要素の調査収集を引き続き行った。また、住宅統計調査、都市計画基礎調査、国勢調査や住宅登記簿など、既存のデータベース上の建物耐風性能要素を活用し、現地調査を行わなかった地域においても「建物耐風性能データベース」を構築するための方法を検討し、より広い地域への拡張法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.「気象モジュール」については平成27年に発生した台風の計算を行い、観測結果と比較した結果、用いた気象モデルでは地面付近で観測地よりも大きめの風速を予測した。これより、建物の被害リスク予測の精度を高めるためには、地形や建物・植物などの地面粗度の影響を取り入ることが必要として、地面粗度の影響を取り入れ、変動風速場を予測できるラージエディシミュレーション(LES)を用いたダウンスケーリングを行えるように設計を変更した。そのため、当初予定していたアンサンブル予報の機能、および、渦位逆変換を用いたコースや強度の異なる多数の台風を発生させる機能の開発は中止とした。 2.「確率台風モジュール」については「建物被害モジュール」と組み合わせて、プラットホームに組み込むための調整を行った。建物被害モデルに取り込む被害発生メカニズムの改良と、建物耐風性能要素の感度解析を行った結果、精度向上のためには、外装材の耐力評価と風圧力の精度評価が重要であることが判った。そこで、屋根ふき材の風圧力に対する耐力評価と、建物群内における各建物に加わる風圧力特性を明らかにすることが重要であるとして、風洞実験により建物群内で建物に加わる風圧力を明らかにした。このように、当初予定していた建物耐風性能要素の洗い出しと精度検証はほぼ達成された。なお、将来気候予測結果の公開が遅れたため、当初予定していた将来気候下における“確率台風モデル”用のパラメータの最適化は、平成28年度に行う予定とした。 3.「建物耐風性能データベース」に関しては新たに4都市で実地調査を行い、建物耐風性能要素に関して地域差を調べた。また、建物数値データから建物耐風性能要素を抽出する方法を検討した。以上により、当初予定していた建物耐風性能要素の洗い出しと精度検証はほぼ達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
「気象モジュール」、「確率台風モジュール」、「建物被害モジュール」については、引き続き最新の研究成果をもとに機能の更新と追加を行う。 「建物耐風性能データベース」についても、九州・沖縄地方において平成26,27年度で選ばなかった地域において建物耐風性能要素の調査収集を行い、データベースの拡充を進める。このとき、得られた建物耐風性能要素は市町村単位でアーカイブし、市町村単位での都市の強風被害リスクの予測を検討する。なお、研究期間内に台風の襲来などにより建物強風災害が発生した場合には随時被害調査を行い、被害調査結果との比較により、本研究成果を使って求めた“強風ハザード”や“建物強風被害リスク”の予測精度の検証を行う。台風などによる強風災害が発生しない場合は、過去の被害調査記録との比較により、予測精度の検証を行う。最後に、研究の総括として以下の検討を行う。 ・将来の気候変動や社会変化を仮定し、その条件下において日本全域における“強風ハザード”を求める。・“強風ハザード”に対する“建物強風被害リスク”をこれまでに建物耐風性能データベース」を作成した地域において求める。・強風被害に対する対策の有無による、リスク額の得失を求める。・上記資料を住民の防災適応策に対する合意形成や政策的な意思決定のための資料の提供方法について検討する。さらに、上記の検討結果を参考に、国民・住民の合意形成を進め、政策的意思決定を助けるための適応策評価機能を開発・実装する。これにより、建物耐風性能データベースを参照しながら社会変化や気候変動の影響のもとで強風ハザードおよび都市・建物の強風被害リスクの予測を可能とし、適応策評価機能を持った“建物の強風被害リスク評価プラットホーム”を完成させる。
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Causes of Carryover |
本研究には現地調査が含まれ、調査の際に携帯電話やインターネットによる収集データの転送や管理を行っている。そのため、携帯電話やインターネット接続用の通信回線の契約を結んでいる。この費用に関して、平成28年3月までの通信回線使用量を支払う必要があるが、本報告書作成時点(4月初め)において、最終月の使用料金の請求金額が確定していないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度も、本年度と同様に、報告書作成時点において、最終月の使用料金の請求金額が確定していないため、同様に次年度使用額が発生するが、最終年度に関しては、契約を早めに解除して、次年度使用額が発生しないようにする予定である。
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