2015 Fiscal Year Annual Research Report
急性脳梗塞のターゲティングによる画像診断と薬物治療のためのキャリアー設計
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26282139
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
横山 昌幸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20220577)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 急性期脳梗塞 / MRI / 造影剤 / 高分子 / 高分子ミセル / 脳保護薬 / ターゲティング |
Outline of Annual Research Achievements |
急性期脳梗塞の画像診断をより正確かつ迅速にすること、および、脳保護薬による予後改善が望まれている。高分子キャリアーを用い、脳梗塞局所に造影剤・薬物をターゲティングすることで、新規画像診断法および新規薬物治療のProof of conceptが本研究の目的である。本年度は以下の3項目を遂行した。 (1)ポリグルタミン酸造影剤の合成:分子量3.2万~8.0万のポリグルタミン酸に、エチレンジアミンをスペーサーとし、キレート剤DOTAをグルタミン酸残基の30%に結合させ、Gdイオンを導入した造影剤を合成した。有機系酸と塩基の添加のタイミングと量を最適化して、均一系で反応が進行させ、未反応エチレンジアミン残基をゼロとした。グルタミン酸残基部分に結合して架橋構造となるGdイオンをEDTAによって除去することに成功した。 (2)ポリグルタミン酸造影剤によるMRI観察:よりサイズの大きな高分子ミセル造影剤との造影挙動の比較が目的であったが、このMRI造影剤は血中半減期が短く、肝臓に急速に捕捉された。この事実は、DOTA-Gd部分が肝臓に容易に捕捉されることを示している。高分子ミセル型造影剤のようにDOTA-Gd部分をキャリアー内部に格納することが必須であることが判明した。 (3)薬剤封入用高分子ミセルの免疫学的性質検証:脳保護薬等の疎水性薬物を運搬する高分子ミセルキャリアーでは免疫現象のABC現象が起こることが知られているが、その機構には未知な部分が多い。ブロックコポリマーの構造と会合数を変えた高分子ミセルの血中濃度の変化とin vitroでの特異抗体への結合解析を行った。高分子ミセルでABC現象が見られない場合があるのは、特異抗体結合に結合しないためではなく、粒子数が多いために特異抗体によって捕捉され得ないためであることが分かった。これまで未知であった、ABC現象をどのように避けるかの方針が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では想定していなかった新しい発見を得ることができた。すなわち 1,ラットの急性期脳梗塞モデルにおいて、従来場合分けができていなかった病態の類型を、MRIによって分類してより正確な病態モデルの利用が可能となった。 2,造影剤の主成分であるキレートGd錯体構造が造影剤の血中濃度を下げる要因であることが判明し、血中濃度を高く保てる分子ミセルMRI造影剤の価値が新たに認識された。 3,PEGを用いたキャリアーで起こるABC現象を避ける方法を発見した。 以上の発見のための実験に比重を多く置いたために、当初予定していた光音響画像と脳保護薬封入高分子ミセル作製は実施しなかったが、新発見を考慮すれば研究成果としては当初予定したレベルであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けては、以下の点に重点を置いて研究を遂行する。 1,脳出血とMRI画像相関解析 昨年度に得たMRIを利用した、より病態の軽重にぶれが少ない急性期脳梗塞モデルを活用して再現性のよい脳出血モデルを作製し、高分子造影剤の集積挙動と出血の相関解析を進める。 2,キレートGd錯体構造がターゲティングに及ぼす影響の検討 従来は、キレートGd錯体構造は、ターゲティングに影響しないと考えられてきた。本年明らかになった新発見から、Gd系のMRI造影剤の基本的な設計方法の確立を推進する。
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Causes of Carryover |
8配位型キレート剤の受注生産を発注する予定であったが、市販の8配位型のキレート剤による予備検討を行ったところ、試薬の疎水性が高く高分子との複合体がかなり広い組成範囲で非水溶性となることを観察した。この検討を詳細に行ったために、今年度中の発注ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以上の理由に記述した結果を基に、より親水性の構造の化合物を選択して、翌年度に発注して次年度使用額を使う予定である。
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Research Products
(13 results)