2014 Fiscal Year Annual Research Report
保存療法を行うがん患者向けのリハビリテーションプログラムの開発に関する段階的研究
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26282156
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 治郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20380834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 瞬 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (20437859)
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 血液がん / リハビリテーション / 理学療法学 / 運動療法 / 骨格筋 / 温熱療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では,基礎研究「骨髄腫に伴う骨格筋病態の解析とそれに対するトレーニング効果の検討」を行いつつ,調査研究「保存療法を実施するがん患者の身体活動量とその他の身体・精神症状等との関連の調査研究」を進めた. 基礎研究では,化学発がん物質DMBAを投与する白血病モデルラットを作成したところ,白血球ならびにヘマトクリット値の減少,炎症マーカーの増加,タイプⅡ筋線維優位の筋萎縮の発生が認められ,これは臨床像と合致する.ただ,本モデルは死亡率が高く,運動・温熱刺激等の実験を進めるためには,DMBA投与量等を再検討する必要がある.次に,当モデルに赤外線を用いた温熱刺激を負荷したところ,白血球数や炎症マーカーの推移および死亡率には影響せず,白血病の病態に対する温熱療法の悪影響は認められないことが確認できた.運動負荷は未実施である. 一方,調査研究では,がん患者60名(平均年齢71.4±12.4歳,男性31名,女性29名)のデータを収集した.そして Performance statusに従い,PS1群,PS2群,PS3群,PS4群の4群に分け,各運動機能の評価結果を比較した結果,膝伸展筋力と握力はPS1群に比べPS2群,PS3群,PS4群が有意に低値を示し,また,PS2群,PS3群に比べPS4群が有意に低値を示した.身体活動量,FIMはPS1群とPS2群の間に有意差はなく,それらに比べてPS3群とPS4群は有意に低値を示した.TUGではPS1群,PS2群に比べPS3群が有意に高値を示した.大腿筋厚はPS1群,PS2群,PS3群の間に有意差はなく,それらに比べてPS4群のみが有意に低値を示した.以上の結果から,各評価項目の推移には違いがあるが明らかと成り,これは新たな知見である.また, PSのそれぞれの段階においてリハビリのターゲットにするべき運動機能の病態と残存機能は異なるといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究では,白血病モデルラット作製方法の確立には追加実験を必要とするが,温熱療法が白血病の病態に悪影響をおよぼす可能性は低いというある程度の見解は既に得られている.平成27年度中にはすべての基礎実験を完了し,がん患者を対象とした介入研究を開始するにあたり,温熱療法の安全性を示すことができる見込みである.一方,調査研究は順調にデータは収集されており,期待通りの結果が得られつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
基礎研究では,モデル動物の死亡率を下げることを目的に,化学発がん物質投与量を再検討し,作成プロトコルを確立させた上で,温熱負荷実験と運動負荷実験を行う.次に,調査研究では,精神症状と運動機能との関連についての解析が未実施であったためそれを行い,傾向を確認する.また,平成26年度に引き続きデータ収集を進め,対象者数が100名を越えた時点で論文発表を行う予定である.その結果を踏まえて,介入研究として行うリハビリテーションプログラムの作成し,介入研究の準備を進める.介入研究では,筋力増強促進を目的とした温熱療法を組み込む予定であるが,病態に対する影響を懸念して敬遠される可能性があり,温熱療法の安全性を定量的に示す必要がある.したがって,介入研究に入るためには,先だって基礎研究の結果を論文にまとめて国際学術雑誌に発表するのが妥当と思われ,その作業を優先する.
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Causes of Carryover |
H26年度計画では,超音波診断装置としてポータブルのUSB超音波診断装置SeeMore(メディコスヒラタ社,850000円)とロコモ計測・観察装置JA6(メディケアー社,1380000円)を2装置を購入する予定であった.前者は解析度は低いが極めて軽量・小型であり携帯性にすぐれたもので,予定通り購入してデータ収集に使用した.一方,後者は高解析度であるが重量があり,院内での持ち運びはできたとしても外部への持ち出しは困難なタイプで,研究計画上では必要な機器ではあった.しかし,研究の進行に伴い,外部の複数の医療施設でもデータ収集をすることとなり,施設外に持ち運びができる携帯性にすぐれた超音波診断機器の追加が必要となった.熟慮の結果,H26度予定のロコモ計測・観察装置JA6の購入を断念した.そのため,ロコモ計測・観察装置JA6購入の分の経費が未使用のまま残った形となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度の繰り越し経費を用い,携帯性にすぐれたポータブルのUSB超音波診断装置SeeMore2台を追加購入する予定である.
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Research Products
(7 results)