2015 Fiscal Year Annual Research Report
無知覚運動を生起する脳内機構の解明と脳可塑性誘起への基盤的研究
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26282157
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
金子 文成 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (00344200)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / リハビリテーション / 理学療法 / 神経科学 / 脳神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で,視覚刺激を用いて自己運動錯覚を誘起するのに同期して,“意識にのぼらない運動(無知覚運動: non-perceived movement, NPM)”が頻繁に生起されることを経験した(未発表)。この現象には,我々の過去の機能的核磁気共鳴法(fMRI)による研究(PLOS ONE, 2015)から,高次運動野,下頭頂小葉,大脳基底核,島皮質などを含む脳神経回路網の活動が関わっている可能性が高い。視覚刺激による自己運動錯覚を,慢性期の脳卒中片麻痺症例に適用すると,急性的に ① 痙縮の低減,および ② 随意運動の発現しやすさ,が観察されることから,随意運動遂行に障害を持つ病的状態に対して,陽性の治療的介入効果を示すことが推察される。当該研究では,まず① 無知覚運動の存在を示す。そして,② 無知覚運動の強さと皮質脊髄路興奮性との関係,③ 無知覚運動と大脳皮質複数領域の興奮性との関係,④ 無知覚運動の強さと脳神経回路網活動との関係,を解析する。それにより,無知覚運動の脳科学的実態を示し,神経科学基盤的リハビリテーションで自己運動錯覚を臨床応用する次段階につなげる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の中で,平成26年度の目標は,① 無知覚運動の存在を示す。そして,② 無知覚運動の強さと皮質脊髄路興奮性との関係を明らかにすることであった。また,平成27年度以降は,標的とする脳部位の活動と無知覚運動との関係,視覚誘導性運動錯覚中の脳波活動の特徴,などを明らかにすることであった。この目標を達成するために,これまでに以下の実験を実施してきた。 ① ヘッドマウントディスプレイおよびパソコン用液晶モニタを使用して,視覚刺激によって四肢の自己運動錯覚がより強く起こる方法を探索した。② ①で探索した方法を用いて,視覚刺激による自己運動錯覚を誘導し,その刺激を経日的に反復することによって(錯覚介入)無知覚運動が起こるかどうかを明らかにするための実験を実施した。運動学的情報として,自己運動錯覚で標的とした関節運動に関わる筋から,表面筋電図を記録し,解析した。③ ②の錯覚介入前,5日間の錯覚介入後,およびそれら経日的刺激介入の中間日にあたる3日目に,経頭蓋磁気刺激を用いて皮質脊髄路興奮性検査,皮質内抑制検査,そして皮質内促通検査を実施した。④ 錯覚介入の継続による,運動野可塑性に関して検討する実験を実施した。⑤ 錯覚介入の継続によって,運動野における皮質内抑制効果が変化するかを検討する実験を実施した。 以上の実験から,平成26年度までに無知覚運動の存在を示すことができた。平成27年度に実施した経頭蓋磁気刺激による解析によって,錯覚介入の継続により,一次運動野のマッピングに変化を生じ,体積(運動誘発電位振幅×基準を超えて応答する面積)が増大することが示された。また,短潜時皮質内抑制の解析によって,脱抑制が生じることで興奮性が増大していることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実施計画 これまで同様に,錯覚介入の影響として生じる無知覚運動および脳活動状況を調べる実験を継続する。ただし,錯覚介入としては,HMDを使用した実験を終了し,液晶ディスプレイを使用した実験を行なう。予備的な実験から,HMDを用いた場合よりも液晶ディスプレイを用いた場合には主観的な自己運動錯覚感は強い。しかし,無知覚運動の出現は,HMDの方が高い頻度で,かつ大きな筋活動をともなっているようである。このように,視覚刺激の種類によって無知覚運動が異なるかについても検討する。臨床的に,どのような刺激方法を用いて錯覚介入を治療に用いるかは重要な論点であり,その基礎資料となる。 脳波実験は,多チャンネル脳波を用いた実験を行ない,視覚刺激オンセットから時系列的に標的とする脳波の信号周波数の変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
繰り越した研究予算は,当初,年度末に行なう実験のために使用するものであった。2名について,MRIを撮像した上で経頭蓋磁気刺激を用いた実験をするというものである。しかし,ぎりぎりになり被験者の都合によりMRI撮像を実施することができなくなった。このため,MRI撮像費用および実験被験者費が残ることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に引き続き,経頭蓋磁気刺激を用いた実験を継続する。まず,27年度に残っていた被験者2名を対象とした実験を実施し,その後,さらに今年度計画していた実験を追加する。標的脳部位(一次運動野,頭頂葉,運動前野)へ経頭蓋磁気刺激を実施し,NPMの量へ与える影響を解析する。
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Research Products
(33 results)
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[Journal Article] Brain regions associated to a kinesthetic illusion evoked by watching a video of one’s own moving hand2015
Author(s)
Kaneko, F., Blanchard, C., Lebar, N., Nazarian, B., Kavounoudias, A., Romaiguere, P
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Journal Title
PLoS One
Volume: 10(8)
Pages: e0131970
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Visually induced kinesthetic illusion positively affects on motor function in patient with stroke -a case series-2015
Author(s)
Kaneko, F., Inada, T., Matsuda, N., Koyama, S., Shibata, E
Organizer
9th World Congress of the International Society of Physical and Rehabilitation Medicine, Congress
Place of Presentation
Berlin Germany
Year and Date
2015-06-19 – 2015-06-23
Int'l Joint Research
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