2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26282161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎌田 実 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20224644)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移動 / 交通 / 高齢社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢ドライバ対応として、認知症・MCI患者対象の検討を、敦賀温泉病院の協力の下に実施した。15名の対象者についての、医学的な面からの特性評価と、簡易運転シミュレータを用いた運転能力評価を行い、それらの関連性について検討した。国が免許更新時の扱いを変える道路交通法改正にむけて動きがあり、高齢者講習のデータ収集は十分数を集めたため、本研究を認知症・MCI患者の方を中心に行うこととした。 地域交通については、大槌町でのパーソナルモビリティ・ゴルフカートの実証的検討、釜石市でのデマンドバスを中心とした交通再編成などの検討を行ってきた。前者については、市販の原付ミニカー、海外製の電動低速モビリティ、ゴルフカートなどのツールの特性を明らかにし、地域特性・住民の生活特性にどのようにマッチさせるかの検討を行った。特にゴルフカートについては被災地の嵩上げ工事による不便さ解消のため、専用コースを設定し、自動運転(保安要員付き)の試行も行ったほか、全国初のナンバー取得を輪島・大槌で行い、公道走行をはじめることができた。後者については、デマンドバスの試験運行の終了後の姿について検討し、一般路線バスの一部休止・デマンドバス化を実現した。 このほか、柏市と東大で協議会をつくり、超小型モビリティの認定を大学として初めて受けることができ、2人乗りの超小型電気自動車の実証実験を始めた。大学で試作した2台を市内でモニター実験開始し、メーカ作成の新型1台を市役所の公用車としての使用実験を行っている。 また、被災地では、嵩上げ工事に時間がかかること、工事中は大型車両が多く走行し、市民モニター実験が安全に行えないことから、大槌町での展開を当初予定より一部縮小し、新たに中山間地域での過疎の中での移動と交通の問題を対象として取り上げ、豊田市足助地区をフィールドとして展開すべく準備をはじめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高齢者講習の実車データ収集は打ち切り。(議論に必要な数は集まったことによる) 警察庁での道路交通法改正に向けての動きがあるため、認知症・MCI患者の特性評価の方に研究のリソースを集中していくこととした。 パーソナルモビリティの検討は、大槌町での実路において公道走行が認められていない車両も含めた評価ができたことと、ゴルフカートの専用道による実証運行ができ、一部自動運転の試行もでき、公道走行まで進んだことは、当初の想定以上の進捗。一方、超小型モビリティ認定については、メーカの都合等もあり、被災地での実証試験は実現できず、代わりに柏市での市民モニター実験および公用車しての使用を行うこととなった。デマンドバスについては、釜石市での実証試験運行の最後の3ヶ月で、次を見越した形で、路線バスからデマンドバスへの一部転換が図られ、大きな進歩が得られた。 しかしながら、被災地での検討は、嵩上げ工事の進捗に左右され、また工事車両の通行が多いため、安全上の点から市民モニター実験を当初想定とおりにできなくなった。そのため、新たな対象地として、中山間地域である豊田市足助地区を選定し、そこでの地域交通構築に向けての諸々の準備を始めた。 以上のように、想定したものができない部分と、想定以上の進捗が得られたものがあり、総じて言うと概ね順調な推移と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前記のように、当初予定から多少の計画修正を行うが、以下のように各地域での取り組みを進める。 福井県の敦賀温泉病院の物忘れ外来の患者を対象として、運転データ、シミュレータ操作特性、認知症の医学的指標の間の関連性について、対象者数を増やしてき検討を進める。 岩手県大槌町では、パーソナルモビリティやゴルフカートのモニター実験を続けるが、復興には時間がかかるので、復興後の交通まちづくり検討はH28年度に行うこととする。岩手県釜石市では、津波被害の大きい鵜住居地区では復興に時間がかかるため、デマンドバスの実績の推移は見ていくものの、市南部の小集落への路線バス便の再構築、幹線・支線化についての検討を進め、国土交通省が新たに打ち出す貨客混載などのテーマも可能であれば盛り込んでいく。 千葉県柏市では、超小型モビリティ認定車両の実証実験を継続し、その使用実態や走行データの分析を行い、地域特性と車両性能等の関連について考察していく。石川県輪島市では、ゴルフカートの自動運転に向けた検討を進める。関連省庁の反応次第の部分もあり、どこまで進められるかは未知数であるものの、人の乗らないコミュニティバスのゴルフカート転換の可能性について検証していく。 新たに対象となった豊田市足助地区においては、原付ミニカークラスの車両を題材に、地域特性にあわせたカスタマイズを行い、その改造プロセスを地域住民と一緒に行うことで、コミュニティづくりも深めていき、名古屋大学の研究室と連携してモビリティブレンドの検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初計画において、被災地の大槌町でのゴルフカートの実証試験に関わる経費は物品費に積んでいたが、コースの整備に関わる費用はその他の項目に入ることとなり、そこにおいて当初計画と食い違いが生じた。また超小型モビリティの車両代として2台の購入計画としたが、1台のみの執行で、残り1台はメーカからの無償貸し出しがあり執行されていないため、物品費が予定より残ることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
その他の費目に該当する経費を再度見直し、交付申請書に反映させる。また、車両の購入費は、まとまった数の中古車両を地域へ投入するような計画に変更し、それも交付申請書・今後の研究計画へ反映させる。
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Research Products
(2 results)