2014 Fiscal Year Annual Research Report
BMIを用いたペダリング型下肢運動リハビリテーションシステムの構築と有用性の検討
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26282162
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
満渕 邦彦 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50192349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 望 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10453151)
深山 理 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30508205)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リハビリテーションロボティクス / BMI・BCI / 脳・神経工学 / 神経情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、主な研究項目として、1)ヒトを対象としたシステムのうち、ハードウエアであるペダリング装置の構築・改良、2)患者が意図したペダリング動作を脳情報(脳波・NIRS)からリアルタイムで予測するソフトウエアの構築、および、3)機能的電気刺激(FES)によって患肢の筋肉を収縮させ、患肢を固定したペダルを強制的に回転させてやるための電気刺激ハードウエア・ソフトウエアの構築、を予定していたが、前2者を中心として研究を行った。1)に関しては、反射が亢進している脊髄損傷などの患者さんでも間代などを発生させることなく漕ぎやすいように改良したクランク機構を用いたペダリング装置の開発を行い、また、2)の運動意図の検出に関しては、アルゴリズムの改良によって正答率の改善を試みると共に、ペダルの回転の方向(正転・逆転)や速度を脳波から判別・判定する手法などに関しても検討を行った。また、脳活動の評価手法として、脳波以外にもNIRSを用いた運動意図の解析を行った。 システムの評価に関しては、健常者、および、脊髄損傷の患者さんを被験者として、実際に装置を漕いだり(健常者)あるいは漕ぐことをイメージしたり(患者さん・健常者)してもらい、作成したシステムを作動させ、ハードウエア(漕ぎ易さなど)に関する性能評価を行うとともに、動作の意図を脳波からリアルタイムで推定するソフトウエアの改善を進めた。その結果、安定して高い正答率で弁別する事が可能となった。また、動物実験により、筋収縮と大脳皮質運動野の神経細胞の発火を関連付け、結合を強化させる試みも行い、肢の強制的作動に同期させて大脳皮質(運動野)に電気刺激を加えることにより、両者の活動の相関が強化されるかどうかについての検討も行った。 これに対して、ペダリングに対するFESの応用に関しては、倫理審査申請などによる遅れにより来年度から実験を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、研究の初年度であり、研究開発を予定していたいくつかの課題の中で、研究が順調に進んだ課題を重点的に進めたこともあるが、概ね順調に進展していると考えている。具体的には、研究の本筋であるペダリング装置の改善と構築、および、運動意図を検出してリアルタイムでペダルを回転させるソフトウエアの改善と構築に力を注ぎ、前者については新しい装置がほぼ期待通りに作動し、また、脳波による運動意図の検出に関しても、データ処理系の改善により運動意図のリアルタイムフィードバックが高い正答率で可能となり、さらに、ペダルを回転させる速度や回転方向の判別の可能性も示されるなど、これらの項目では概ね順調な成果が得られている。また、動物を対象としたリハビリテーション実験に関しても、被験者(であるラット)が何かの運動を行った際に運動野のニューロンに対していわゆる皮質内微小電気刺激を繰り返す事により、運動と特定の神経細胞の結合を強化することが可能、という結果も得られ、進行は順調である。一方、実施のスケジュールが遅れた項目としては「機能的電気刺激(FES)を用いて筋肉を収縮させる事によりペダルを回転・駆動させるシステムの構築」が挙げられるが、これは、倫理審査の申請などにより実施予定が遅れていることに起因したもので、研究の進行を総合的に判断すると、概ね順調な成果が得られていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ペダリングのハードウエアに関しては、まず、今回試作したクランク型の疑似歩行装置の改良をさらに推し進める。また、現在の脳波計測システム関しては、脳波電極の装着に多大な手間とペーストなどの塗布を必要とし、患者さんが簡易に使用する事が難しいので、電極をドライアクティブ電極を用いた系でも同様の脳波信号の取得が可能となるように改良を行い、さらに、現在、モータで強制的に肢を回転させているシステムをFESにより足の筋肉を収縮させ、その力によりペダルを駆動するシステムへの変換を試みる。 一方、ソフトウエアについては、ERDに関する周波数帯域設定や意図判別のための特徴量の選択などにより、意図検出の正答率の改善を進めると同時に、ペダリングの速度や方向(前転・後転)などの判別も続行する。また、ペダリング動作をイメージする際に、リズミカルな視覚刺激・聴覚刺激を加え、このリズミカルな刺激によるイメージングの効率上昇に対する効果についても検討を行う。なお、意図検出に用いる脳活動測定装置として、脳波以外にも、脳磁図(MEG)、f‐MRI等も試みる。 また、主に動物を対象とした実験系で(一部人を被験者とした系でも)、麻痺肢を強制的に動かした際の固有感覚情報が意識上に登るようにフィードバックをかける系の構築と、そのリハビリテーション効果への影響、また、運動意図発生から肢の強制駆動(筋肉収縮)までの最適時間遅れに関する検討なども進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に実施を予定していた「モータの代わりに機能的電気刺激を用いてペダルを回転させる」という研究項目を、倫理審査申請などによる遅れのために、実施する順序を変えて次年度回しとしたことによる。最初予定していた機能的電気刺激用の電気刺激装置を購入するための予算を、ペダリング装置の部品、その他の費目に使用したが、両者の間で差額が生じたため、次年度使用額が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に機能的電気刺激用の電気刺激装置を購入する際の費用(の一部)に使用する予定である。
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Research Products
(16 results)