2015 Fiscal Year Annual Research Report
筋および腱の力学的特性からみた「バネ」の機能的役割と可塑性
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26282173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 啓太郎 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70323459)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 筋ステイッフネス / 腱組織 / 超音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
(研究1)陸上長距離選手の足底屈筋群におけるactive筋ステイッフネス 最近、我々はヒト生体におけるactive条件での筋ステイッフネスの定量法を開発した(Kubo 2014 J Appl Physiol)。本研究ではその手法を応用し、陸上長距離選手の足底屈筋群におけるactive筋ステイッフネスを一般成人と比較することを目的とした。被検者は、長距離選手群20名および一般成人24名であった。等尺性最大筋力の30%~90%を維持させている間に急速に足関節を背屈させた際の足底屈トルクおよび腓腹筋内側頭の筋束長の変化から、active筋ステイッフネスを算出した。長距離選手のactive筋ステイッフネスは一般成人と比べて有意に高い値を示した。固有振動法などにより測定された筋腱複合体のステイッフネスは長距離選手が一般成人よりも高いとする結果は、長距離選手におけるactive筋ステイッフネスが高いことと関連していることが示唆された。
(研究2)陸上長距離競技成績に及ぼす下肢筋群の腱組織の力学的特性の影響 本研究では多人数の陸上長距離選手を対象にして、競技成績に及ぼす下肢筋群腱組織の力学的特性の影響を検証することを目的とした。被検者は、高度にトレーニングされた陸上長距離選手64名であった。超音波法により、膝伸筋群および足底屈筋群における筋厚、腱厚、腱ステイッフネスを測定した。5000mベストタイムは、膝伸筋群の腱ステイッフネスと有意な負の相関関係、足底屈筋群の腱ステイフネスと有意な正の相関関係が認められた。その他の筋および腱における測定値と5000mベストタイムとは有意な関係はみられなかった。以上の結果より、膝伸筋群および足底屈筋群の腱組織は、走トレーニングに対する適応と長距離競技成績に及ぼす影響がそれぞれ異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究課題で開発した、ヒト生体における「active筋ステイッフネス」の測定法を応用して、競技選手と一般成人と比較することにより、横断的なデータを取得することができた。さらに、多人数を対象にした研究から、腱特性と競技パフォーマンスとの関連についても明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
active筋ステイッフネスの横断的研究データに基づいて、3ヶ月間のトレーニング実験を実施して縦断的なデータと併せて、active筋ステイッフネスの可塑性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
短距離選手を対象とした本実験を遂行予定で、被検者謝金、MR使用量などを計上していたが、当初予定していた競技力(100mの公式記録)を有する被検者を十分な人数確保することができず、予備実験レベルのデータ取得にとどまってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた競技力(100mの公式記録)を有する被検者を研究代表者が所属する東京大学だけでなく、他大学にも協力を要請して被検者の確保をして本実験を遂行する予定である。
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