2015 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋のミトコンドリア呼吸活性を修飾する酸素輸送担体の新たな分子相互作用
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26282183
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 筋細胞 / 代謝 / ミトコンドリア / ミオグロビン / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋細胞内のMb量の多寡がミトコンドリアの呼吸活性に及ぼす影響については明らかにされていない。さらに、ミトコンドリアに内在するMbによる呼吸活性への貢献については全く検証が及んでいない。 平成27年度では、Mb単独の影響を確認するために構築したFlagタグ付きMbを発現するC2C12細胞を用いて、その細胞のミトコンドリア呼吸機能特性を検証することに重点を置いた。高感度酸素電極を搭載した細胞代謝計測機を用いて、Mbを過剰発現した筋細胞のミトコンドリア呼吸活性(酸素消費速度)を計測したところ、呼吸活性が亢進する結果が得られた。これらの呼吸活性の亢進は基質に依存することなく(つまりは複合体には非特異的に)生じていた。また、酵素タンパク質の検証から、Mbを過剰発現した筋細胞のミトコンドリアの複合体が増えていることは確認できなかったため、呼吸活性の亢進はMbが増加したことによる相互作用の可能性が考えられた。また、Mbの発現を抑制(shRNAの導入による)したC2C12では呼吸活性が抑制される傾向が観察されたため、次年度では更に呼吸活性を含めた表現型の詳細な検証を通じて、ミトコンドリアへのMbの相互作用機序を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定としていたMbを過剰発現した筋細胞のミトコンドリア特性(呼吸活性や酵素タンパク質量、各種酵素活性)を検証することができた。さらに、Mbの発現抑制をした筋細胞の呼吸特性についても付加的に検証することができた。Mb過剰発現によって複合体の酵素タンパク質の量に変化を生じずに呼吸活性が亢進する現象は非常に興味深く、本研究課題のミトコンドリアに対するMbの相互作用を示す重要な知見と思われる。次年度では引き続き検証結果を再確認しながら、分析の積み上げを進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究内容を継続しつつ、Mbの局在場所を探る。ミトコンドリアを単離したサンプルを膜透過処理し、段階的に分画を行いながらMbの存在場所を検討する。また、Mbの発現調節機構についても検証を行う。ミトコンドリア生合成を促進/抑制する転写因子がMbの発現に影響を及ぼす可能性がある。例えば、持久的トレーニングによる筋の有酸素性代謝能力の向上にはミトコンドリア生合成の亢進が強く影響しており、そこにはCa2+経路やPGC-1α経路、AMPK経路など複数の合成経路が関与すると想定されている。Mbも持久的トレーニングによって増加するが、Ca2+経路に依存している可能性が高い。Ca2+に依存しない経路によってミトコンドリア生合成が亢進する可能性があることから、刺激因子によってはMb発現もCa2+に依存しない経路によって一部惹起されている可能性が推測される。ミトコンドリア生合成にはフリーラジカル、脂肪酸やポリフェノール、カロテノイド等の基質も想定される。加えて近年、エリスロポエチン(Epo)が骨格筋のミトコンドリア呼吸機能を改善するという報告がある。こうした種々の刺激因子によるMb生合成の機序の詳細とミトコンドリア生合成機序との共通性は明らかにされていない。そこで細胞モデルでは、脂肪酸やポリフェノールなどの因子によるミトコンドリア生合成の亢進とMbタンパク質発現について、Western Blot法やCo-IP、組織学的観察によって検証する。さらに細胞への運動模倣刺激として、AICAR(AMPK賦活)やカフェイン(Ca2+放出促進)の薬理刺激についても検証する。動物モデルでも一過性のミトコンドリア誘導刺激(有酸素運動、薬理刺激等)を行い、Co-IP法やWestern Blot法などによって、Mbとミトコンドリアタンパク質の発現量やそれらのタンパク質間での相互作用の程度を検証する。 また、3カ年の成果を取りまとめ、成果報告を行う。
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Research Products
(9 results)