2014 Fiscal Year Annual Research Report
運動による炎症性老化予防効果におけるマクロファージ時計遺伝子の役割
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26282186
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
木崎 節子 杏林大学, 医学部, 教授 (00322446)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マクロファージ / 運動 / 炎症性反応 / 老化 / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
体内時計―肥満・代謝性疾患―炎症反応の間に密接な関係があることが明らかになってきた。例えば、加齢性疾患である糖尿病では患者の感染症に対する抵抗力が低下すると考えられている。実際に、感染防御の第一線を担うマクロファージの炎症性応答能は高血糖により低下すると報告されている。一方、マクロファージの炎症性応答能は、時計遺伝子Rev-erbαにより調節を受けていることが明らかにされているが、高血糖により如何に影響を受けるかは不明である。そこで本研究では、マクロファージのRev-erbαの発現に及ぼす高血糖の影響とその生理的役割を検討した。 マクロファージ細胞株RAW264.7を5.5 mMまたは25 mMのグルコース濃度条件下で48時間培養した。その後、細胞内のRev-erbαのmRNA発現量とタンパク質発現量・リン酸化レベルをそれぞれリアルタイムPCR法とウェスタンブロット法で分析した。 Rev-erbαのmRNA発現量は高グルコース培養による影響を受けなかったが、タンパク質発現量は顕著に高まった。Rev-erbαのリン酸化レベルも高グルコース培養により著明に高まったことから、リン酸化の亢進によるタンパク質の安定化が引き起こされたと推定される。実際に、高グルコース培養によるRev-erbαタンパク質のリン酸化と発現量の増加は、Rev-erbαのリン酸化酵素として知られるGSK-3βの阻害剤・塩化リチウムの添加により減弱した。一方、LPS刺激に伴うIL-6 mRNAの発現誘導は高グルコース培養により低下したが、この影響は低分子干渉RNAの導入によりRev-erbαの発現量を低下させるとさらに増強された。 以上の結果より、高グルコース培養によるマクロファージのRev-erbαタンパク質発現亢進には、高血糖による感染防御能低下を予防する働きがある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生体内時計機構とマクロファージの炎症反応制御機構がどのようにリンクしているのか明らかにすることで、炎症性疾患に対する時間免疫学的あるいは薬理学的な治療や予防法の確立に寄与することを目的としている。老化は全身性慢性炎症状態で炎症性老化とも呼ばれる。一方、老化に伴う2型糖尿病は感染症に対する抵抗力が低く、感染防御の第一線を担うマクロファージの炎症性応答能は高血糖により低下すると報告されている。さらに、われわれはすでに運動はインスリン感受性の改善に効果があることを明らかにしており、その作用にマクロファージの関与が示唆されている。そこで本年度は、マクロファージの時計遺伝子の発現に及ぼす高血糖の影響とその生理的役割をin vitroにおいて検討した。さらに、時計遺伝子と運動や老化との関連についての検討も進行中である。これらの運動と高血糖と炎症性老化についての基礎的なデータは、次年度の研究をスムーズに進めることを可能にするもので、従っておおむね予定通りに実験は進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症反応性マクロファージが優位なC57BL/6マウス、組織修復能が高いマクロファージが優位なBALB/cマウス、マクロファージ欠損マウス、種々の時計遺伝子欠損マウスにおいて、マクロファージ炎症反応性の違いが老化に伴う炎症反応へどの様に影響するかを明らかにする。さらに、運動トレーニングによる全身性の炎症状態への影響と時計遺伝子の関連を、血液中の炎症性及び抗炎症性サイトカインなどの濃度変化と、腹腔細胞(マクロファージ)、白色・褐色脂肪組織、肝臓、骨格筋における炎症性及び抗炎症性サイトカインとその受容体、炎症性分子、抗炎症性分子などの遺伝子発現変化から解析し、関与していると考えられる時計遺伝子、受容体、情報伝達系を突き止める。また、炎症性と抗炎症性マクロファージの割合の変化と、関与が推測される時計遺伝子欠損マウスを用いた実験から、運動トレーニング効果において時計遺伝子が調節している分子や情報伝達系の役割を明確にする。次に、慢性炎症反応に関与する受容体のアゴニストあるいはアンタゴニストをマウスに投与し、運動トレーニング効果と時計遺伝子発現調節機構への影響を確認し、時計遺伝子を中心とした炎症反応制御に関する運動効果のメカニズムを明らかにする。加えて、老化に伴う高血糖における時計遺伝子の関与を明らかにするため20~24ヶ月齢の老化マウス、慢性炎症性疾患モデルとして高脂肪食マウス、遺伝的肥満(ob/ob、db/db)マウス、KK-Ay 2 型糖尿病マウスを用いる。各マウスをコントロール群と概日リズムを乱す群に分け、運動効果を検証し、老化に伴う慢性疾患治療のための運動療法の可能性を追求する。
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Causes of Carryover |
より有効な動物実験を行うために、老化に伴う高血糖が慢性炎症反応にどのように関与するかを明らかにすることが必要と考えた。そこで、マウスから採取した細胞または細胞株を用いて、高血糖がマクロファージに与える影響についてin vitroにおける詳細な検討を先に着手した。その結果、マウスを用いたin vivoでの本格的検討と遺伝的バックグラウンドの違うマウスを用いる実験を次年度に回したため、動物実験に予定していた費用を次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の結果を踏まえて、老化に伴う高血糖における時計遺伝子の関与を明らかにするため20~24ヶ月齢の老化マウス、高脂肪食マウス、慢性炎症性疾患モデルとして種々の遺伝的バックグラウンドの違うマウス(遺伝的肥満(ob/ob、db/db)マウス、KK-Ay 2 型糖尿病マウス)を用いる。コントロール群は通常の24時間の明暗サイクル(12h明/暗)で、概日リズムを乱す群は本学の実験動物行動観察室を使用し、20時間の明暗サイクル(10 h明/暗)で8週間飼育する。運動群には回転かご付きケージを用いる。以上の方法で、老化と高血糖と慢性炎症反応に対する概日リズムの影響と自発性運動による運動効果を詳細に解析する。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] ETAS, an enzyme- treated asparagus extract, attenuates amyloid β-induced cellular disorder in PC12 cells.2014
Author(s)
Junetsu Ogasawara, Tomohiro Ito, Koji Wakame, Kentaro Kitadate, Takuya Sakurai, Shogo Sato, Yoshinaga Ishibashi, Tetsuya Izawa, Kazuto Takahashi, Hitoshi Ishida, Ichiro Takabatake, Takako Kizaki, Hideki Ohno
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Journal Title
Natural Product Communcations
Volume: 9
Pages: 561-564
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The effects of long-term exercise on cerebral function and the maintenance of concentration in the elderly.2014
Author(s)
Shukoh Haga, Takuya Sakurai, Shogo Sato, Michiko Sasahara, Fumio Aita, Kazuki Esaki, Koji Toshinai, Etsuo Ueya, Noboru Hashimoto, Junetsu Ogasawara, Takako Kizaki, Yoshinaga Ishibashi, Tomonobu Sakurai, Shuji Oh-ishi, Hideki Ohno, Eimatsu Takakuwa
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Journal Title
Journal of Exercise, Sports & Orthopedics
Volume: 1
Pages: 6-11
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Direct and indirect suppression of interleukin-6 gene expression in murine macrophages by nuclear orphan receptor REV-ERBα.2014
Author(s)
Shogo Sato, Takuya Sakurai, Junetsu Ogasawara, Ken Shirato, Yoshinaga Ishibashi, Shuji Oh-ishi, Kazuhiko Imaizumi, Shukoh Haga, Yoshiaki Hitomi, Tetsuya Izawa, Yoshinobu Ohira, Hideki Ohno H, Takako Kizaki
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Journal Title
The Scientific World Journal
Volume: 2014
Pages: 685854
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] A circadian clock gene, Rev-erbα, modulates the inflammatory function of macrophages through the negative regulation of Ccl2 expression.2014
Author(s)
Shogo Sato, Takuya Sakurai, Junetsu Ogasawara, Motoko Takahashi, Tetsuya Izawa, Kazuhiko Imaizumi, Naoyuki Taniguchi, Hideki Ohno, Takako Kizaki
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Journal Title
The Journal of Immunology
Volume: 192
Pages: 407-417
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Enzyme-treated Asparagus officinalis extract shows neuroprotective effects and attenuates cognitive impairment in senescence- accelerated mice.2014
Author(s)
Takuya Sakurai, Tomohiro Ito, Koji Wakame, Kentaro Kitadate, Takashi Arai, Junetsu Ogasawara, Takako Kizaki, Shogo Sato, Yoshinaga Ishibashi, Tomonori Fujiwara, Kimio Akagawa, Hitoshi Ishida, Hideki Ohno
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Journal Title
Natural Product Communications
Volume: 9
Pages: 101-106
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] ETAS, an enzyme-treated asparagus extract, has the ability to enhance both the differentiation and the neurite outgrowth in PC12 cells2014
Author(s)
Junetsu Ogsawara, Jun Takanari, Takuya Sakurai, Ken Shirato, Yoshinaga Ishibashi, Junichi Nagasawa, Tetsuya Izawa, Hideki Ohno, Takako Kizaki
Organizer
The 22nd ICNIM
Place of Presentation
Sapporo
Year and Date
2014-07-26 – 2014-07-27
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