2016 Fiscal Year Annual Research Report
Safeguarding in Schools in England
Project/Area Number |
26282205
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
岡本 正子 大阪教育大学, 教育学部, 非常勤講師 (50379319)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 あおい 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00343260)
山崎 洋子 福山平成大学, 福祉健康学部, 教授 (40311823)
二井 仁美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50221974)
平岡 篤武 常葉大学, 教育学部, 准教授 (90749938)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 教育的環境 / Safeguarding / 子ども虐待 / イギリス / 学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.イギリス・レスター州からSafeguarding Development OfficerのSimon Genders氏とAnne Prideaux 氏を招聘して、研究成果の社会還元及び啓発を行った。 ①日本子ども虐待防止学会第22回学術集会では、「学校における子ども虐待問題への新たな支援に向けて」のテーマで Genders氏・文部科学省国立教育研究所総括研究官・大学教授をシンポジストとして国際シンポジウムを開催した。「チームとしての学校」構想の中に、児童虐待対応体制をどのように整備するかに関しては、日本からは学校内や学外連携を担当する「教員であるコーデイネーター」が存在する意義とSSWやSCとの役割の違いが報告された。また虐待を受けた子どもの支援や、その子どもに対応する教員への支援の視点として「援助を求める力」に目を向ける重要性が指摘された。ついで参照事例として、イギリスの学校では、国のガイドラインに沿って子ども虐待防止の取り組みが行われており、その担当教員である「Designated Safeguarding Lead」の活動の実際と有用性について日本で初めて紹介された。それを踏まえて、日本での体制整備に関する有意義な討論が行われた。 ②日英教員交流セミナーでは、 Genders氏とPrideaux氏を講師として「虐待を受けている子どもたちに学校は何ができるのか!」のテーマで、講演とワークショップを開催した。当日は近畿圏から多数の教員が参加して活発な議論が行われた。 2.Safeguarding in School に関する教育史的観点からの解明継続のため、イギリス教育史研究者への現地での聞き取り調査及び資料収集を行った。 3.関西の3つの情緒障害児短期治療施設付設学校教員への聴き取り調査を行った。昨年の調査校を加えた6校について、体制整備の観点から現状と課題を整理した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.日本子ども虐待防止学会において国際シンポジウムを開催し、学校教育関係者のみならず、子ども家庭福祉・司法・医学・母子保健領域等で子ども虐待防止活動を行っている実践者並びに研究者への啓発活動を行った。その内容は学会誌への掲載が決まっている。 2.教員対象の日英教員交流セミナーで講義とワークショップを行った。イギリスの制度や取り組みを学び、日英の学校における子ども虐待対応の実際や対応時の困難等に関して意見交流を行った。参加者からは、法律や制度の違いはあるが日本での実践への示唆を得ることができたとの感想が多く寄せられた。 3.イギリスへの現地調査は、イギリス教育史研究者への聞き取り調査や資料収集を継続して行った。 4.情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)付設学校教員への聞き取りからは、次のような現状と課題が明らかになり、整備の方向性が示された。①被虐待児童が示す様々な問題行動に対して、一般校から転任の教員にとって経験が少なく、精神的な疲労を与えている。一方、個々の子どもへの教育は特性やレベルに合わせた授業の工夫がなされており、それらへの対応には教育と福祉との連携が重要との認識が共通している。加えて一般校との交流に関しては、受け入れ校の教員や児童生徒に対して、施設や施設の子ども理解をどのように深めるか、連携の課題がある。児童心理治療施設でケアされる子ども達は今後一般校でも増加すると思われる子ども達で、併設学校は先駆的な教育の場であり、一般校での教育に還元できる子ども理解力と対応力を身につけるのに最適な場であるという認識が教員にはあるが、それには体制整備が必要である。②以上を踏まえた課題と整備の方向性としては、マンパワー不足、教育環境としての設備の不足、研究体制、教員養成過程での福祉教育の不足や、教育行政における児童心理治療施設併設学校の位置づけの曖昧さ、措置と教育の問題等である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.イギリスにおけるSafeguarding in Schoolの理念やその理念がカリキュラムに与えた影響についての解明の継続のために、イギリスでの現地調査の実施と資料収集を行う。 2.イギリスの学校における子ども虐待対応に係る学校内連携及び機関連携のあり方の実際、また虐待を受けている子どもにとって学校が安全で安心した場になるための体制と教育活動の実際、さらに虐待の影響に起因する問題等を抱える子どもとその家族の支援に係る他機関や他職種との連携のあり方等を明らかにするため、Leicester州と Sussex州において聞き取り調査を行う。その際、Leicester州においては、平成28年度に日本に招聘したSimon Genders氏の協力により、またSussex州においてはNHS Foundation Trust に勤務している内藤氏の協力により調査を進める。 3.平成26年度からの調査研究の成果を図書として出版する。
|
Causes of Carryover |
最終年度である平成29年度は、4年間の研究の総まとめを行い、その成果として図書を出版する。そのために、イギリス現地での更なる詳細な調査と資料収集の必要性が生じている。また、図書出版に向けて、研究内容の共有と執筆の打ち合わせのために複数回の研究会開催が必要である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.イギリス(ロンドン、レスター州、サセックス州)の現地調査に係る費用:旅費(日本ーイギリス往復交通費、イギリス国内移動交通費、ホテル代)×4人、通訳料、謝金、図書費、資料整理人件費等
2.研究会開催費用:旅費(大阪×3回、東京×2回)、図書費、資料整理費等
|