2015 Fiscal Year Annual Research Report
生体機能光制御分子の創製と細胞機能精密制御への応用
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26282212
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
戸嶋 一敦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60217502)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体機能分子 / 光制御 / 糖鎖 / 糖転移酵素 / 有機合成 / ハイブリッド / キノリン / ガラクトース |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖は、核酸、タンパクに次ぐ、「第三の生命鎖」と呼ばれ、恒常的な生命現象や様々な疾病に深く関与している。そのため、標的とする疾病関連糖鎖の発現量を選択的かつ精密に制御する人工生体機能分子の創製は、ポストゲノム研究における重要な研究課題である。生体内の糖鎖は、糖転移酵素が触媒する糖ヌクレオチドと糖受容体とのグリコシル化反応により生合成されており、標的とする糖転移酵素の機能発現を時空間的に制御する新手法の開発は、標的糖鎖の発現量を精密に制御する有効な手法として期待されている。そこで本研究では、人体に無害な光照射下、タンパクを光分解することが当研究室で見出された光感受性分子である2-フェニルキノリン(PQ) 誘導体と、糖ヌクレオチドを連結したハイブリッド分子を創製し、標的とする糖転移酵素を選択的に光分解することで標的糖鎖の発現量を精密に制御する新たな人工生体機能分子の創製を行った。すなわち、標的糖転移酵素には、ガラクトース転移酵素であるB4GalT1を選択し、B4GalT1の基質であるUDP-Galに対してPQを付与したハイブリッド分子をデザイン、合成した。次に、ハイブリッド分子のB4GalT1に対する酵素阻害活性を、長波長紫外光(365 nm, 100 W)の照射下及び非照射下において評価した。その結果、ハイブリッド分子は、光非照射下においてもB4GalT1の酵素活性を阻害し、さらに、光照射下、その阻害活性が2.4倍向上することを見出した。以上の結果より、本ハイブリッド分子が標的糖転移酵素であるB4GalT1の酵素活性を、光照射下、顕著に阻害し、LacNAcの生成量を制御可能な新たな人工生体機能分子であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、疾患にも関連する糖転移酵素を選択的に光分解する生体機能光制御分子の創製とそれらを用いた酵素活性阻害制御に関して、当初の計画以上の大きな成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、引き続き、生体高分子(タンパク、糖鎖)を光分解する光感受性分子(小分子)と、疾病に関連する標的生体高分子を認識する分子(小分子や高分子)から構成されるさまざまなハイブリッド分子を(生体機能光制御分子)を創製し、これらを用いた細胞機能生業を指向した応用研究を行う。尚、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での大きな問題点は現時点ではない。
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Research Products
(15 results)