2014 Fiscal Year Annual Research Report
発蛍光プローブが拓く生体分子ダイナミクスイメージング
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26282215
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00444563)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PYPタグ / 発蛍光プローブ / Regnase-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成蛍光プローブを用いた蛋白質標識法は、蛍光蛋白質に代わる新たな蛋白質イメージング技術として近年注目を集めている。これまでに、我々は、PYPタグと発蛍光プローブを用いた蛋白質標識技術の開発を行ってきた。PYPタグは、紅色硫黄細菌由来の125アミノ酸からなる小蛋白質であり、発蛍光プローブとは、標識反応に伴い蛍光強度を上昇させる蛋白質標識剤のことである。以前の研究より、PYPタグと共有結合する発蛍光プローブとしてジメチルアミノクマリン誘導体CMBDMA2を開発している。本年度の研究では、標識反応後の蛍光強度上昇に加え、蛋白質分解後に蛍光強度が減少するOFF-ON-OFFスイッチングを利用して、NFkBシグナル経路を制御するRNA加水分解酵素であるRegnase-1の発現及び分解を可視化する研究に取り組んだ。 Regnase-1は、IL-6のmRNAを加水分解することでNFkBシグナル経路を抑制制御しているが、LPS刺激時にRegnase-1がプロテアソームにより分解されることが知られている。そこで、我々は、PYPタグとRegnase-1を融合させ、CMBDMA2により標識し発現を蛍光検出するとともに、LPS刺激により蛋白質分解が起こり蛍光強度が減少するかを検討した。実験を行うにあたり、CMBDMA2標識複合体を安定化するPYP変異体を用いた。また、Regnase-1が自身のmRNAを分解し蛋白質発現量が極めて低下したことから、発現量を増加させるためにRNA活性を喪失させたReg D141N変異体を用いた。PYP-Reg D141Nは、標識反応を行うと核の外側から蛍光が観測されることが分かった。更に、LPSを添加すると蛍光強度が有意に減少することが分かった。以上の結果から、本システムを用いることで、蛋白質の発現・分解をリアルタイムで追跡することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的は、PYPタグと発蛍光プローブを用いた蛋白質の分解をイメージングすることであった。一方、PYPタグとCMBDMA2は、短時間で標識することができるものの、標識後細胞内で徐々に蛍光を減少させることが問題であった。そこで、PYPタグに変異を導入することで、長時間の蛍光イメージングが可能となった。このPYPタグ変異体を用いることで、Regnase-1変異体の発現・局在解析に加え、当初目的のRegnase-1変異体の分解のイメージングに成功した。このことから、計画時の目的を達成することができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAのメチル化は、遺伝子発現を制御するエピジェネティックな化学修飾の一つである。これまでに、生細胞でDNAメチル化を検出する方法として、蛍光蛋白質とメチル化DNA結合ドメインMBDの融合蛋白質の局在を観測する手法が知られている。一方、この手法の問題点は、メチル化DNAに結合していない融合蛋白質からも蛍光が観測され、メチル化DNAの局在を正確に解析することができない。そこで、今後の研究において、PYPタグ標識技術を応用することで、メチル化DNAに結合すると初めて蛍光を発するプローブを開発する。このプローブ開発は、PYPタグの標識分子に新たな機能性分子を組み込んだ分子を設計することで達成することを目指す。
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Causes of Carryover |
PYPタグの変異体の解析を行ううえで、変異導入部位のアミノ酸がラベル化速度に大きな影響を及ぼすことが新たに発見された。このことは、蛋白質標識技術において極めて重要な発見であり、更なる変異体の解析と検証を実施する必要が生じた。このため、次年度の実験経費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに変異体を作成するための分子生物学試薬に1,500,000円と、その変異体を生細胞蛍光イメージング解析するための細胞生物学試薬に1,277,369円、メチル化DNAの検出に必要なPYPタグ標識分子の合成試薬に1,000,000円を支出する。また、培養関連物品の滅菌のためにオートクレーブ310,000円を支出する。成果発表を行う学会に参加するための旅費に600,000円を支出する予定である。更に、成果発表を行うための論文の英語添削を依頼する費用として、200,000円、論文投稿費用として、200,000円を支出する予定である。
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