2014 Fiscal Year Annual Research Report
アラブ系移民/難民の越境移動をめぐる動態と意識:中東と欧州における比較研究
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26283003
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
錦田 愛子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70451979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高岡 豊 東京外国語大学, 外国語学部, 研究員 (10638711)
濱中 新吾 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (40344783)
溝渕 正季 名古屋商科大学, 経済学部, 講師 (00734865)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政治学 / アラブ / 移民・難民 / ヨルダン / スウェーデン / 社会学 / 国際研究者交流 / 国際共同研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アラブ系移民および難民(以後、移民/難民とする)の移動の実態を、欧州および中東諸国の間で比較検討し、その特徴を明らかにすることを目的としている。調査は移民/難民の多いヨルダンおよびスウェーデンで実施し、量的・質的双方の分析手法を用いる。 初年度の調査は主にヨルダンで行った。まず、ヨルダンおよびスウェーデンでの移民/難民の状況に関する資料調査と、研究の理論的枠組みについて文献調査を行なった上で、ヨルダンでの世論調査の設計を行なった。調査対象はヨルダン国内に住む、シリア難民、イラク難民、パレスチナ難民とし、彼らの移動の動機や、移動の経路、現在抱える問題や、今後の移動に対する考え方などを調査項目とすることを決定した。世論調査は、ヨルダン大学戦略研究所(Center for Strategic Studies)に委託し実施することとし、研究代表者を中心に、調査の依頼および実施契約を締結した。2014年8月には、研究代表者、分担者、協力者がヨルダンへ渡航し、国内の数箇所で実施される世論調査の実査に立会った。また、具体的な移動の様子や背景について、移民/難民から直接、アラビア語での聞き取り調査を行なった。戦略研究所が実施した世論調査の結果は、単純集計が秋までに送付され、それをもとに、統計分析を科研費のメンバー内で行ない、仮設の検証を試みた。 現在ヨルダン国内にいるアラブ系移民/難民は多岐にわたるが、それらを総合的に対象とし、移動の実態の解明を試みる研究は、本研究の他にほとんど類を見ない。また数的概要とともに、個別の事情を調査し、地域研究の知見にもとづき分析を加えることで、現状に対する多面的な理解と分析が可能になる重要な研究といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2014年度の研究では、ヨルダンでの委託による世論調査(量的調査)および聞き取り調査(質的調査)の双方について、予定通りに現地調査が順調に進んだ。そこからは、ヨルダン在住のアラブ系移民および難民の、移動の実態の多様性と傾向が明らかになった。それに加えて2014年度内には、ヨルダンでの暫定的な調査結果に基づき、コロンビア大学での国際学会で報告も行い、論文を執筆した。こちらはプロシーディングとして年度内に刊行されている。このように、調査の実施のみならず、その成果発表までが既に進み始めているため、本年度の研究は計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目の研究は、スウェーデンでのアラブ系移民/難民を対象とした調査を中心に進める。提携研究機関との間で、世論調査(量的調査)の実施について交渉を進め、また移住した移民/難民に対する聞き取り調査(質的調査)の準備を行う。世論調査の委託先には、大手調査会社のIpsosもしくはユーテボリ大学を想定している。聞き取り調査の実施は、昨年度の調査結果に基づき、パレスチナ系難民が集中的に移住している町マルムーで行う予定である。ヨルダンでの調査結果にもとづき仮説構築と質問票の作成を進め、スウェーデンとの比較研究を行うことを計画している。研究成果については、エクセターなどで開催される国際学会での報告に応募しているほか、今年度の日本政治学会でも報告することが決定している。
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Causes of Carryover |
今年度の実支出額だけで、2014年度は研究プロジェクトの遂行に十分な金額が確保された。また、次年度は北欧での調査を計画していることから、高額の旅費および研究費が必要となることが予測されるため、生じた剰余金は次年度使用額に回した方が望ましいことが、研究プロジェクトの全体計画の観点から判断されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
北欧での研究調査における旅費および調査委託費等の研究費に使用する予定である。
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Research Products
(25 results)