2015 Fiscal Year Annual Research Report
黄砂発生地域における表層土壌回復のための社会的経済的アプローチ
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26283008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深尾 葉子 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (20193815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安冨 歩 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20239768)
山本 健太郎 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (40305157)
北島 宣 京都大学, 農学研究科, 教授 (70135549)
宇山 浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70203594)
中澤 慶久 大阪大学, 工学研究科, 特任教授(常勤) (70575414)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 黄土 / 表層土壌 / 結皮 / 肉従蓉 / スナモモ / 沙蒿 / エミュー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年は8月10日から18日までの日程で、深尾、安冨、宇山、伊藤、協力者である河野とともに現地調査拠点および協力者活動拠点を訪問し、今後の研究について現地で議論を深めるとともに、現地の土壌侵食および土壌表面の植生について現場で採取、確認を行った。また滞在中に長年我々の調査グループと共同研究を行い、現地の緑化に多大な功績を残した朱序弼が気管支炎を悪化させ、急逝。調査グループは滞在期間中に二度朱を訪ね、最後の会話を交わすことができた。朱は我々と共同で設立した黄土高原国際民間緑色文化ネットワークの代表で、現地の人々を束ねる重要な役割を果たしていたため、今後の活動と調査の継続に大きな課題が課せられることになった。また、分担者の宇山が、昨年より申請していた中国国家プロジェクトにより我々のカウンターパートである西北大学申燁華教授のもとで、博士指導を行うとともに、現地に実験施設および研究室を持つこととなり、年間数ヶ月を西安を拠点に活動することとなった。このため、今回訪問した内モンゴルオルドスの神木にある神木生態協会の張応龍が現在建設中の調査研究拠点と連携し、今後の研究を行うべく現地で話し合いを行った。その後も、楡林学院教員のノリブ・セレン氏や内モンゴル阿拉善のオイスカ研究センターの冨樫智らと相互訪問、情報交換を行い、阿拉善・神木・西安・日本の各拠点を結ぶ共同研究案を具体化しつつある。その内容は、砂漠緑化作物、沙蒿の種子が持つ粘性多糖類の研究や、砂漠地帯で飼育可能なエミューの利用、結皮と呼ばれるシアノバクテリア(緑藻)の緑化に果たす役割、同じく砂漠緑化作物ソウソウの利用とその樹下に寄生するオニク(肉従蓉・ニクジュヨウ)の利用加工に関する研究など多岐に亘っており、それぞれいくつかのサブグループを構成して研究体制が構築されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は現地とのパイプの構築、研究の具体的テーマの設定、相互訪問などによる情報共有、さらには出版物の刊行準備など、すでに順調な成果をあげている。ただし、現地調査で訪問できる日程と資金が限られているため、相互に情報交換のうえ、効率的な手法の構築が必要であり、今後の研究成果公表にむけての取り組みを今年度は重点的に行う必要がある。具体的には当初昨年度出版予定であった阪大出版会から出版を予定している『黄砂のグローバル・マネジメント』(仮題)は出版作業の遅れにより、今年度出版予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき日中双方の拠点において、相互訪問を前提として、研究と実践の取り組みを行う。また代表者が長年かかわってきた黄土高原においても人々のコミュニケーションに依拠した生態回復の手法を今後さらに探求する必要があり、都会への人口集中や、農業放棄、交通網の整備、地下資源の採掘など現地で急ピッチで進行する社会的経済的変化に応じた、新しい生態回復の道筋を、探る。そうした社会的コンテキストの理解の上で、ソウソウやニクジュヨウ、沙蒿などの植物の利用方法、商品化について日中双方のリソースを活かして、現実化することが必要とされている。今年度はやはり夏に深尾、安冨、宇山、北島、伊藤、らが現地を訪問予定であり、また冨樫訪日にあわせて、大阪大学にてシンポジウムを開催し、今後の方向性、具体的な課題について情報を共有する。
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Causes of Carryover |
本科研は次年度以降徐々に配分額が減る傾向にあり、今後成果公表および調査に要する金額を一定程度保留しておく必要が生じたため、次年度使用額が発生した。なお、本基金では、成果公表にむけてのデータの整理や図表等の作成、また追加的調査のための資金を賄うこととする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出版のためのトレース、図表作成等データ公表のための業務委託300000円、追加的調査費用が473840円の予定である。
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Research Products
(9 results)