2014 Fiscal Year Research-status Report
井筒・東洋哲学の構築とその思想構造に関する比較宗教学的検討
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26284013
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
澤井 義次 天理大学, 人間学部, 教授 (30178826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70152840)
野元 晋 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (10276420)
氣多 雅子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20201478)
市川 裕 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20223084)
池澤 優 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (90250993)
河東 仁 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80224799)
島田 勝巳 天理大学, 人間学部, 教授 (30341043)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 井筒・東洋哲学 / 比較宗教学的視座 / 東洋思想の共時的構造化 / 表層意識と深層意識 / 意味論 / 言語的意味分節 / 思想テクストとその解釈 / IAHR(国際宗教学宗教史学会) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の澤井義次は、研究分担者と情報交換しながら、井筒俊彦の著作における引用文献およびキータームを少しずつデータ化するとともに、各研究分担者が比較宗教学の視座から、井筒・東洋哲学のあり方を検討し、その思想構造の特徴を明らかにしようと試みた。 井筒俊彦が構想した「東洋哲学」の思想構造を比較宗教学の視座から批判的に検討するために、平成26年度には、二回にわたり研究フォーラムを開催した。まず、第一回研究フォーラムは、2014年6月14日(土)に天理大学を会場として開催した。研究分担者の鎌田繁教授(東京大学)が発題1「井筒俊彦とイスラーム」をおこない、研究代表者の澤井義次が発題2「井筒俊彦とインド宗教思想」をおこなった。その後、全体討議をおこない、井筒・東洋哲学の特徴を比較宗教学の視座から討議した。 さらに第二回研究フォーラムは、2014年11月22日(土)に東京大学東洋文化研究所において開催した。まず、氣多雅子教授(京都大学)が発題1「井筒俊彦における哲学と体験」をおこない、次に市川裕教授(東京大学)が発題2「井筒俊彦とユダヤ思想―哲学者マイモニデスを中心に―」をおこなった。その後、比較宗教学の立場から、発題の内容をめぐって全体討議をおこない、井筒・東洋哲学に関する批判的検討をおこなった。翌11月23日(日)には、鎌倉の井筒宅を訪問し、井筒が「東洋哲学」を構想した現場において、井筒の蔵書をひもときながら、井筒・東洋哲学の特質を検討した。 また2014年9月13日(土)、同志社大学で開催された日本宗教学会学術大会では、澤井がパネル代表として学会パネル「井筒俊彦の「東洋哲学」への宗教学的視座」をおこない、鎌田教授、氣多教授、澤井を中心に共同研究の成果を発表した。各研究発表の内容を踏まえ、会場の聴衆も交えて、井筒哲学の意義とその特徴をめぐって、活発な議論を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
井筒俊彦が「東洋哲学」という哲学的構想を具体化した研究の過程を辿りながら、井筒・東洋哲学の構造とその特徴を批判的に検討し、その思想的展開の可能性を比較宗教学的に考察した。 まず、澤井(研究代表者)は、井筒・東洋哲学の全体像の理解をめざして、研究分担者と情報交換をおこないながら、井筒の著作における引用文献およびキータームのデータベース化を少しずつ進めた。個別的には、澤井はインド思想の視点から、井筒がシャンカラの思想の中に見た、東洋思想の豊饒な思想的可能性をめぐって検討した。鎌田と野元はイスラーム思想の視点から、井筒のイスラーム思想の解釈を中心としながら、井筒・東洋哲学のもつ思想的展開の可能性を探究した。 氣多は宗教哲学の視点から、井筒・東洋哲学の全体像を読み解く作業をおこなう中に、井筒の哲学的思惟と西田幾多郎や西谷啓治をはじめとする京都学派の哲学的思惟のあいだに見られる共通点および相違点を明らかにした。市川はユダヤ思想の視点から、井筒・東洋哲学におけるユダヤ思想の位置を確認しながら、井筒・東洋哲学における根源的思惟形態の一つ、ユダヤ神秘主義の思想構造を掘り下げて考察した。 池澤は中国思想の視点から、これまで研究を進めてきた儒教的生命倫理の構造を一層深く考察し、井筒・東洋哲学の思想的展開の可能性を探究した。河東は神話学・心理学の視点から、井筒が関心をもっていたユング心理学との接点を探究した。井筒・東洋哲学の表層と深層の関わりを独自の東洋的な意識構造論として捉えなおした。最後に、島田はキリスト教思想の視点から、井筒・東洋哲学における否定神学的な思惟形態を考察した。 このように研究実施計画は、前もって計画したように、おおむね順調に進展してきたと言えるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、具体的に次の3つを考えている。まず、(1) 井筒の著作における引用文献とキータームのデータベース化を進める中で、井筒・東洋哲学の批判的な検討を引き続いて推進していく。 そのうえで、(2)研究代表者と研究分担者は、絶えず密接に連携を取りながら、各自の専門的な研究視座から、井筒の構想し続けた「東洋哲学」の枠組みの検討を比較宗教学の視座から深めていくとともに、その思想的展開の可能性を探究していく。 さらに、(3)研究代表者と研究分担者が蓄積した研究成果を踏まえて、井筒・東洋哲学に関する研究フォーラムを開催していく。また、今年(2015年)8月に、ドイツ・エルフルトで開催される国際宗教学宗教史学会(IAHR)において、パネル発表および個人発表をおこなう。さらに、9月に開催される日本宗教学会学術大会において、学会パネルや個人発表をとおして、井筒・東洋哲学に関する研究成果を発表していく。 このように、井筒・東洋哲学に関する共同研究の成果を蓄積していくとともに、井筒・東洋哲学の比較宗教学的考察を世界へ向けて発信していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額について、2015年8月にドイツのエルフルトで開催される国際宗教学宗教史学会(IAHR)に参加し、これまでの井筒・東洋哲学に関する研究成果を世界へ発信する予定である。国際宗教学宗教史学会では、パネル発表あるいは個人発表を計画している。したがって、その国際会議に参加できるための旅費を支出することができるように、当該年度は、旅費の使用を出来るだけ節約した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年8月にドイツのエルフルトで開催される第21回国際宗教学宗教史学会(IAHR)において、科研の共同研究に関するパネル発表「井筒俊彦と東洋の宗教思想」(Toshihiko Izutsu and Oriental Religious Thought)、あるいは、井筒・東洋哲学に関する個人発表を計画している。その国際会議に参加するための経費として使用する予定である。
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