2015 Fiscal Year Research-status Report
井筒・東洋哲学の構築とその思想構造に関する比較宗教学的検討
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26284013
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
澤井 義次 天理大学, 人間学部, 教授 (30178826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70152840)
野元 晋 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (10276420)
氣多 雅子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20201478)
市川 裕 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20223084)
池澤 優 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (90250993)
河東 仁 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80224799)
島田 勝巳 天理大学, 人間学部, 教授 (30341043)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 井筒・東洋哲学 / 比較宗教学の視座 / 東洋思想の共時的構造化 / 意識の重層構造 / 意味論 / 言語的意味分節 / 思想テクストの解釈 / IAHR(国際宗教学宗教史学会) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の澤井は、研究分担者と情報交換しながら、井筒俊彦に関する研究文献のデータ化を少しずつ進めた。各研究分担者は専門的な視座から、井筒・東洋哲学の批判的検討をおこなった。井筒・東洋哲学を比較宗教学的に検討するために、二回、研究フォーラムを開催した。 まず、第三回研究フォーラムを2015年4月25日(土)、京都大学で開催した。池澤優教授(東京大学)が発題1「現代的状況に対する井筒思想の適用可能性」を、研究協力者の下田正弘教授(東京大学)が発題2「言語、意識、存在」をおこなった。その後、全体討議をおこなった。翌日には、井筒と親交のあった宗教学者の西谷啓治の蔵書を研究調査した。第四回研究フォーラムは、2015年11月14日(土)、慶應義塾大学で開催した。河東仁教授(立教大学)の発題1「ユング心理学と禅」、野元晋教授(慶應義塾大学)の発題2 「イスマーイール・シーア派思想と井筒俊彦」の後、全体討議をおこなった。前日には、同大学メディアセンターで、井筒の肉筆原稿の研究調査をおこなった。 その他、国の内外で研究の成果を発表した。2015年8月27日(木)、ドイツのエアフルトで開催された第21回国際宗教学宗教史学会(IAHR)では、パネル「井筒俊彦と東洋思想」(代表・澤井義次)発表をおこなった。池澤、研究協力者の下田、ロぺス講師(天理大学)、澤井が井筒・東洋哲学について研究発表した。さらに宗教学者のG・アッレス教授(米国マックダニエル大学)がコメントをおこない、活発なパネル討議をおこなった。 また2015年9月6日(日)、日本宗教学会学術大会(創価大学)において、鎌田教授をパネル代表として、パネル「東洋の宗教思想と井筒俊彦の哲学的思惟」をおこなった。河東教授、池澤教授、研究協力者の下田教授と金子奈央研究員(中村元東方研究所)が研究の成果を発表し、その後、活発な議論を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
井筒・東洋哲学に関する共通理解を確認しながら、各自の専門的な研究視座から、井筒の構想した「東洋哲学」の枠組みと内容について批判的に検討し、さらに、その思想的可能性を比較宗教学の視座から考察した。 まず、澤井義次(研究代表者)は、井筒・東洋哲学の全体像の理解をめざして、研究分担者と情報交換をおこないながら、井筒・東洋哲学に関する文献のデータベース化を少しずつ進めた。個別的には、澤井はインド哲学思想の視点から、井筒・英語論文集『東洋哲学の構造』や『意識と本質』などに見いだされる井筒・東洋哲学の思想構造とその特質を探究した。鎌田繁と野元晋は、イスラーム思想の視点から、井筒・東洋哲学の思想的展開を射程に入れて、イスラーム哲学を中心とした井筒・東洋哲学の思想構造を、スーフィズムなどを踏まえて探究した。 氣多雅子は宗教哲学の視点から、井筒の哲学的思惟と京都哲学および禅思想を比較検討することによって、井筒・東洋哲学に見いだされる思想構造の特徴を探究した。市川裕はユダヤ思想の視点から、ユダヤ文化論に注目しながら、井筒・東洋哲学におけるユダヤ的思想構造を明らかにすることを試みた。 池澤優は中国思想の視点から、井筒・東洋哲学が開示する存在の本質構造論を踏まえ、儒教思想における生命倫理観を掘り下げて考察した。河東仁は神話学・心理学の視点から、井筒・東洋哲学の意識構造論に注目しながら、ユングの分析心理学との接点を掘り下げて考察し、そのことによって、井筒・東洋哲学の心理学的展開の可能性を探究した。最後に、島田勝巳はキリスト教思想研究の視座から、井筒・東洋哲学の思想構造を探究しながら、クザーヌスの神学思想に関する諸論考を纏め、東洋哲学における否定神学的特徴を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、具体的に次の3点を考えている。まず、(1)井筒・東洋哲学に関する研究文献のデータベース化を進め、その過程の中で、井筒・東洋哲学に関する批判的な検討作業をおこなっていく。そのうえで、(2)研究代表者と研究分担者は、お互いに密接に連携を取りながら、各自の専門的な研究視座から、井筒の構想した「東洋哲学」の枠組について、掘り下げた考察を進めていく。 さらに、(3)これらの研究成果を踏まえて、今年(2016年)の秋、海外で井筒・東洋哲学に関する研究でよく知られる二人の著名な宗教学者を招いて、井筒・東洋哲学に関する国際研究フォーラムを開催する。また、今年の9月に早稲田大学で開催される日本宗教学会学術大会においても、井筒・東洋哲学に関する学会パネルを企画して、井筒・東洋哲学に関する共同研究の成果を発表する。 このように、これまで二年にわたる共同研究の成果を踏まえて、今後も研究成果を着実に蓄積しながら、井筒・東洋哲学の比較宗教学的考察を推進し、その研究成果を世界へ向けて発信していくことにしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として、海外から2名の宗教学者を招いて、国際研究フォーラムを企画している。そのために、海外の研究者のための旅費および滞在費を支出することができるように、当該年度は、旅費の使用を出来る限り節約した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年10月に天理大学において、井筒・東洋哲学に関する国際研究フォーラムの開催を計画している。その国際会議には、アメリカ合衆国とインドネシアから、2名の宗教学者を招待して開催する予定である。
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