2014 Fiscal Year Annual Research Report
自由主義と自由の制度化の多元性と相互作用:思想史の東西融合と学際的展開に向けて
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26284014
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安藤 隆穂 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00126830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
愛敬 浩二 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10293490)
區 建英 新潟国際情報大学, 国際学部, 教授 (20267701)
川尻 文彦 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (20299001)
蔡 大鵬 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20402381)
杉田 敦 法政大学, 法学部, 教授 (30154470)
和田 肇 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30158703)
田村 哲樹 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30313985)
小野 耕二 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70126845)
大塚 雄太 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70547439)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自由 / 自由主義 / 公共性 / 社会思想史 / 政治思想史 / 東西思想交流 / 立憲主義 / 労働問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は大きく3つの分野で展開した。 第1は欧米自由主義の思想史的研究分野であり、2014年6月21‐22日、山田園子(広島大学教授)、安藤祐介(立教大学助教)を招聘し、ロックとフランス啓蒙期の自由主義思想について報告を得て、フランス革命に前後する時期の自由主義思想についての研究会を行い(会場:名古屋大学高等研究院)、思想史チームの研究を軌道にのせた。また、今後の海外との研究交流の礎石構築のため、大塚がドイツのハレ大学での留学を生かし、安藤がドイツのフライブルク大学高等研究院との研究交流の機会をとらえ、それぞれの大学の関連研究機関等と打ち合わせを行った。 第2は東西思想交流分野であり、各人が専門研究をスタートさせるとともに、台湾大学での国際シンポジウム「東アジア思想交流史」(2014年11月7-8日:台湾大学高等研究院)を開催し、安藤、區、川尻、和田が報告し、この分野での研究分担と相互のつながりを確認した。本シンポジウムでは、枝川明敏(東京芸大教授)、國分典子(名古屋大学教授)も招聘し、国内の外部との研究ネットワークを構築し、台湾大学高等研究院思想研究チームと「東アジア思想交流研究」を主題とする共同研究体制を組織することができた。 第3は現代の自由と制度の相互作用の研究分野であり、これも各人がそれぞれの専門の研究をスタートさせたうえで、2015年3月1日に法政大学で、自由主義とその諸制度を主題とする政治及び法哲学的研究の現状について、井上達夫(東京大学教授)、斎藤純一(早稲田大学教授)による招聘報告を得て、研究会を行い、共同と研究の枠組みとネットワークの設定を行った。 以上に加え、それぞれの個別的研究成果は別記の通りであり、これらをより有機的に関連付け、次年度以降の研究を展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予算の縮小に伴い、研究計画も大きく縮小せざるを得なくなった。本年度は、思想史班の活動を先行させ、その進展を踏まえながら、全体計画を見直すこととした。 思想史班のうち、西欧思想史については、安藤と大塚の個別研究の蓄積に大きく依存した。「大陸自由主義の成立と展開」という共通主題を追いかけ、それぞれ、別の外部資金も活用し海外調査研究を行い、欧米圏と国内の関連研究者とのネットワークを構築し、研究成果報告も行った。ただし、予定していた「啓蒙思想国際シンポジウム」(グラースゴウ大学)への出席は、シンポジウムが主催者の事情で開催されなかったので、実現できなかった。 東西思想史の融合については、大きな前進と成果を上げることができた。區、川尻の研究を先導とし、安藤による中国(主に南京大学)および台湾大学(高等研究院)との研究交流実績を活かし、上記の「東亜思想交流史国際研究集会」(11月7-8日、台湾大学)を開催し、台湾大学黄俊傑教授等の国際的最先端の研究者の参加する共同研究体制を構築した。この研究会は、申請時点では名古屋大学で開催する予定であったもので、今回を台湾に変更したので、2015年度には名古屋で行うこととする。 「制度分析・理論化」研究については、基本的には、各人の専門的研究に力を入れたが、前記の法政大学での研究会(2015年3月1日)により、チームとしての組織体制にめどをつけることができた。この分野は、成果報告欄にあるように、小野がフライブルクへの調査研究を行うなど、個別研究として実績をつんだ。ただし、その他の杉田、和田、愛敬、蔡などの研究成果は、多くは別資金によるものであったことは言っておかねばならない。 以上のように、研究規模の縮小を余儀なくされる中、様々な外部リソースを活用し、水準を維持すべく努力した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究規模の縮小を余儀なくされる中で、申請時の基本的枠組みを維持したい。思想史分野の主導権を一層強化し、あわせて「制度分析・理論化」の集約性を高める事によって、この方向を維持していきたい。特に、既に大きな実績を上げかつ継続を約束している「東アジア思想交流」の分野の国際的研究を中心に共同研究活動の一層の質的向上を図りたい。具体的には、2015年度は、「東アジア思想交流史国際研究集会」の名古屋大学での開催を実現し、これに「思想史班」、「制度分析・理論化班」のそれぞれの研究成果を密接に関連付けるようにして、研究の全体的統一性を図りたい。 西欧思想史については、安藤と大塚による「大陸自由主義」研究を、フランス革命に前後する時期の仏独思想における「政治的自由」の概念的定着の問題を中心に推進することを基本軸に、一層の組織性向上を図り、これを、區、川尻の東アジア自由主義の研究に、有機的に結合する。 「制度分析・理論化班」の研究については、研究規模の縮小を補うために、思想史研究との連携をより意識して展開していくこととする。愛敬主導の憲法の分野について立憲主義の思想史的研究の側面を強化し、また、現代政治哲学と思想史との研究連携をより強化するために、梅川佳子(アメリカ政治哲学)を分担研究者に加える。 以上に加え、海外との研究連携について、それぞれの持つリソースを利用するほか、当初予定した通りに、高等研究院世界連合組織(UBIAS)によるインター・コンティネンタル・アカデミイをサポートする。具体的には、「時間」を文理融合的主題とするアカデミイ(2016年3月、名古屋大学)のプログラムに安藤と和田が参加するが、これに、本研究の成果を活用するとともに、本研究の国際的活動連携を発展させていきたい。 以上、各人のもつ別外部資金による研究を有効に活用するなどし、申請時に予定した水準を維持していきたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者による海外調査研究が予定変更となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に延期した研究代表者の海外調査研究旅費の補充に当てる。
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