2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本における仏教と神信仰の融合に関する総合的研究―アジアとの比較の視座から―
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26284015
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 一彦 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (40230726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脊古 真哉 同朋大学, その他部局等, その他 (20448707)
荒見 泰史 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (30383186)
藤原 崇人 関西大学, 付置研究所, 研究員 (50351250)
上島 享 京都大学, 文学研究科, 准教授 (60285244)
二階堂 善弘 関西大学, 文学部, 教授 (70292258)
佐藤 文子 佛教大学, 公私立大学の部局等, その他 (80411122)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東洋日本思想史 / 神仏習合 / 仏教史 / 神信仰 / 道教 / 宗教儀礼 / 文化交流 / アジア宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2回の研究会を実施し、3回の国内調査、2回の海外調査・学術交流を実施して、多くの知見を得ることができた。研究会(アジアにおける仏教と神信仰研究会)については、6月14日に京都大学で開催し、脊古真哉「日本における感生説話の受容と展開」、吉田一彦他「スライド検討会 四川省大足石刻の調査と成果」が報告された。また10月25日に名古屋市立大学にて開催し、松本浩一「台湾の道教と民俗宗教の現状」、吉田一彦他「スライド検討会 ベトナムの調査とその成果」の報告があった。いずれも仏教と神信仰との融合についてアジア宗教史の観点から考究し、日本との比較検討を行なった。 国内調査は、5月10日~11日に高野山の調査を実施した。ここでは、近年の御社の保存修理事業の中で発見された鏡像、懸仏、円形華鬘形荘厳具などの御神宝を実見、観察して高野山の神仏習合について知見を得、あわせて奥之院燈籠堂で実施された儀礼を見学した。10月3日~4日は延暦寺の「法華大会」を調査することができた。4年に1度のこの法会を講堂の外陣から実見させていただき、多くの知見を得ることができた。3月17~18日に吉野の蔵王堂、坊、院、神社の調査を行ない、山岳信仰、修験道について知見を得た。 国外調査は5月30日~6月2日に韓国の江原道江陵市の山神祭、城隍祭を調査した。これは祭官、巫女などによって挙行される鎮めと護りの祭で、韓国の霊魂観に根差した儀礼であった。また、国外学術交流・調査として、9月10~17日にベトナム社会科学院宗教研究院と学術交流を行ない、祠・寺・廟の調査を実施した。ベトナムは神仏の信仰の重層、複合、融合が見られ、仏教と神信仰の融合に関して多くの知見を得ることができた。 この研究の研究成果は、研究代表者、分担者がそれぞれ口頭発表、論文の形で発表し、今後も順次発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた研究会、国内調査、国外学術交流、国外調査を実施することができ、研究はおおむね順調に進展している。今年度の大きな成果は、2016年3月の大足石刻調査の結果を整理して研究会全体で知見を共有したことがまず挙げられる。これは中国における宗教の複合、融合を考える第1級の題材であると考えられる。また、ベトナムの祠・寺・廟の調査で多くの資料を収集できたことも大きな成果であった。 研究代表者はこの科研による研究の成果を学会、研究会で報告し、調査報告、論文を執筆した。研究分担者も成果を報告し、著書、調査報告、論文を執筆した。成果の発表はおおむね順調である。また、研究会を通じて国内外の研究者と学術交流し、知見を共有することができた。さらに、打ち合わせ会において、研究チームで研究の進捗状況を確認し、来年度の研究計画の詳細を構築し、研究成果の発信について論議することができた。 研究成果の発信については、現在企画、執筆が進んでいる6冊ものの日本宗教史のシリーズ(吉川弘文館刊行予定)に研究成果の一部を盛り込むこととした。このシリーズの4人の編者は、研究代表者、研究分担者2人と、この科研に連携する研究者が担当している。平成27年度に、このシリーズの最終編集編集会議を行なって目次の細目を確定した。あわせて、執筆者たちが集まる構想検討会を3回にわたって実施して、各項目の内容について意見交換することができた。 それとは別に、もう一つの出版社からアジアにおける仏教と神信仰の融合に関する学術論文集を刊行する計画を進めている。これには、この科研の代表者、分担者のほか、研究会にお招きして講演、発表いただいた先生方にも論文執筆をお願いする予定である。 研究会、打ち合わせ会、国内外調査、出版計画などが予定に従って進んでおり、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究計画をおおむね順調に実施することができたので、平成28年度も研究計画の大きな変更はなく、予定に従って研究を進めていく予定である。ただ、部分的には、思ったよりも研究が進んだ部分と、それを優先的に実施するために次年度回しにした部分とがあるので、28年度にはそれらを調整しながら前に進んでいく必要がある。そのため、打ち合わせ会の時間を十分にとり、研究代表者と分担者の意志を確認し、意見交換を密にし、情報を共有しながら前に進んでいく。 28年度は、本科研の最終年度にあたる。予定に従って研究会を実施し、国内外の調査を実施し、論文を執筆する。研究会としては、ベトナムの調査等で連携することができた大西和彦氏(ベトナム宗教史)を招聘してベトナムの神仏習合の諸相についてご講演いただき日本との比較を巡って意見交換する予定である。国外調査では、四川省大足石刻調査で得られた成果が大変大きかったので、その近隣にある安岳石刻および関連資料の調査を実施して、宋代の四川省における宗教の融合について知見をさらに深めたい。特に銘文については、実見調査によって文字を確認し、また周辺情報を獲得して、資料の精度、意義を増していく予定である。科研研究の成果については、学術雑誌等に研究成果をまとめた調査報告、論文を執筆し、発信する。 さらに最終年度の公開シンポジウムを計画している。時期は2017年1月、会場は名古屋市立大学を考えており、研究代表者、研究分担者がパネラーおよび司会を務めるパネルシンポジウムを実施する。これを公開のセミナーとして、研究成果を研究者および市民に発信する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しているが、研究が思ったよりも進んだ部分と、それを優先的に実施するために翌年回しにする部分があり、そのために次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究会開催費用、国内外の調査費用の費用に充てる。また、国外調査によって収集した資料の集積が予定より遅れているのでその費用に充てる。また、注文した専門書の入荷が遅れており、その費用にも充てる予定である。
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