2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代ロシア文化の「自叙」の研究:自伝的散文と回想を中心に
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26284044
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中村 唯史 山形大学, 人文学部, 教授 (20250962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大平 陽一 天理大学, 国際学部, 教授 (20169056)
梅津 紀雄 工学院大学, 工学部, 講師 (20323462)
野中 進 埼玉大学, 教養学部, 教授 (60301090)
武田 昭文 富山大学, 人文学部, 准教授 (70303203)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近現代 / ロシア(ソ連) / 自伝・回想・日記 / 歴史 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代以降のロシア文学・思想・絵画・映画等に関係した者の自叙-回想、日記、手記、書簡等を対象として、歴史や記憶の問題を「私」という語りの機制と連関させて考察し、ロシア文化において大きな比重を占める歴史と個人の問題に新たな一石を投じようと意図するものである。 研究の初年度である26年度は、関係者がそれぞれ必要な文献書籍の収集に着手するとともに(個別の文献整備のほか、研究分担者武田が上智大学・早稲田大学・国立国会図書館、連携研究者福間がロシア国立図書館・フランス国立図書館・英国ナショナル・ギャラリー等で調査)、第1回の研究会を26年11月29日に早稲田大学文学部で公開実施し、情報と見解の共有化を図った(報告は研究分担者大平「エイゼンシュテインの自伝的文章と精神分析」、同梅津「作曲家の自叙:プロコフィエフの自伝と日記を中心に」、連携研究者福間「画家の自叙伝:ペトロフ=ヴォドキンを中心に」)。 また国際学会や研究会での報告も開始した(研究代表者中村が台湾・中華文化大学の国際シンポジウムでオリガ・ベルゴーリツの自伝について報告(26年5月24日)、奈倉有里が日韓ロシア文学者共同セミナーでアレクサンドル・ブロークの自叙について報告(韓国外国語大学、27年3月21日))。 本格的な論文等の発信はなお一部に留まっているが、次年度へ向けて何本かの執筆・投稿が進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、それが重要なジャンルだった1820年代から1990年代初めまでのロシアにおける「自叙」-自伝的小説、回想録、日記・手記・書簡等の考察を目的とし、ロシア文化における「自己」と「歴史」「記憶」の表象を相関的・包括的に把握することをめざすものだが、現時点では20世紀前半に対象が集中しているという難がある。だがメール等による日常的な意見交換、第1回研究会での質疑応答を通じて、方法論的な枠組についての相互理解と共有は進行しており、次年度以降に充実した成果を発信できる土台を構築することができた。 本年度2回程度を予定していた研究会の開催は1回に留まったが、27年3月にソウルで開催された日韓共同セミナーには、協力者奈倉の報告に加えて、研究分担者2名が参加し、国際的なネットワークも整備されつつある。また代表者中村が国際学会での報告も行っている。 資料文献の収集も、おおむね順調に進んでいる。 以上に鑑み、本研究は初年度としては順調に進展していると判断する、
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については、関係者相互および国際的なネットワークの確立、文献資料の整備については順調に推移しているが、論文・報告等の発信は必ずしもまだ十分ではないと認識している。方策としては、国内外の学会での報告発表を推進し、類似の関心を抱く内外の研究者との連携を更に深めることが考えられる。 27年8月には千葉県幕張で、国際的なスラブ研究者組織ICCEESの世界大会が開催されるが、本研究の関係者の多くがパネルの組織、報告、司会、対論者等として、この大会に参加することが予定されている。上記の方策は、この機に飛躍的に推進されるものと予期している。 研究計画自体については、方法論的な枠組の構築と共有化が進んでいるため、現時点で変更の必要は認められないが、研究会の開催の頻度を上げ、公開とすることが必要だろう。
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Causes of Carryover |
26年度は2回程度の研究会を予定していたが、初年度ということもあり、関係者が文献収集や方法論の構築に力を注いだ結果、1回の開催に留まった。また関係者の海外出張等に当たっては、本計画以外の助成を受けることができた場合もあったため、上記の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、スラブ・ロシア研究者の世界的な組織であるICCEESの世界大会が千葉県幕張で開催される予定であり、本研究関係者もパネルオーガナイザー、報告者、対論者等として参加の予定である。次年度使用額については、グローバルな学術連携の重要性と研究者の資金不足に鑑み、本研究関係者が組織したパネルに参加する海外研究者の旅費・滞在費等の一部支出に充当する予定である。
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