2015 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツの文学・思想におけるトポスとしての「黙示録文化」―「終末」の終末は可能か―
Project/Area Number |
26284048
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小黒 康正 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (10294852)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 洋一郎 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (30206180)
福元 圭太 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30218953)
武田 利勝 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (80367002)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 黙示録 / ドイツ文学 / ドイツ思想 / 終末 / トポス / 破局 / トーマス・マン / 第三の国 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、2015年4月6日から2016年3月20日までの間、ウィーン大学の客員研究員として、研究活動を行った。この間、ドイツの5大学から講演の招待を受け、各大学のドイツ文学研究所にて、ドイツにおける黙示録文化に関する講演をドイツ語で行ったことは、特筆に値する。5回の招待講演を示すと、〔1〕ミュンスター大学(招待者 Martina Wagner-Egelhaaf 教授、2015年11月2日)、〔2〕ビーレフェルト大学(招待者 Wolfgang Braungart 教授、2015年11月5日)、〔3〕ブラウンシュヴァイク工科大学(招待者 Renate Stauf 教授、2015年12月10日)、〔4〕アイヒシュテット・インゴルシュタット大学(招待者 Michael Neumann 教授、2016年1月20日)、〔5〕フランクフルト大学(招待者 Johannes Fried 教授、2016年2月17日)であった。講演後にはいずれも30分以上の活発な質疑応答があり、今後の研究活動に役立つ意見交換を行うことができたと思う。 また、研究代表者は一時帰国し、平成27年8月20日に第3回九大独文科研研究会を企画する。場所は九州大学文学部会議室、使用言語を日本語であった。午前の部では、東口豊(九州大学)の「ハイデガーにおけるヘーゲルの所謂「藝術終焉論」批判について」と、桐原隆弘(下関市立大学)の「カントにおけるアウグスティヌス的展望とヨアキム的展望 ―「理性宗教の原理」を手がかりに」に基づいて、午後の部では、小黒康正(九州大学)の「枠を外された歴史―エーファ・ホルン『破局としての未来』(2014)をめぐって」、坂本貴志(立教大学)の「「古代神学的諸世界」対「無鬼論的諳曜」―アタナシウス・キルヒャーと山片蟠桃の宇宙論および比較宗教論について―」、杵渕博樹(宮崎大学)の「「人類の教育」と黙示録―ギュンター・グラス『女ねずみ』における滅亡の風景」に基づいて意見交換を行い、黙示録文化の多様性と同一性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が、ウィーン大学の客員研究員として在外研究を進めている間、これまで行ってきたトーマス・マンに関する研究と黙示録文化に関する科研プロジェクトとがドイツ語圏の研究者の間で高く評価された。その証左として、ドイツにある五つの大学から別次々に招待講演の話しが研究代表者にあったことが挙げられよう。実に有意義な研究交流ができたことは、予想外の進展であり、当初の計画を上回る成果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が、ウィーン大学の客員研究員として在外研究に得た研鑽の成果をもとに研究活動を深め、積極的に研究成果を国内外に発信していきたい。また、在外研究中に、日本語もしくはドイツ語で執筆活動を行っている複数の作家と知己を得たので、黙示録文化の研究をより広い視野で進めるためにも、そうした作家たちを研究会に招待し、創作者の視点を取り入れて、考察を深めて行きたい。
|
Causes of Carryover |
当初の予定によれば、平成27年4月6日から平成28年3月21日までの間、ウィーン大学の客員研究員として在外研究を行うことと、その間、平成27年8月中国(上海)開催の国際独文学会(IVG)に参加し、複数のメンバーとともに研究発表を行うことが、研究代表者としての計画であった。しかしながら、学位請求論文(博士)に対して行う審査業務が急遽入り、同学会の参加を取りやめたことが、次年度使用額が生じた理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、第4回九大独文科研研究会を9月19日と20日に、第5回九大独文科研研究会を2月中旬に、それぞれ九州大学文学部で行う。以上はいずれも当初の計画に盛り込まれていた。更に、追加計画として、ウィーン大学教授のEva Horn 氏をお迎えすることと、第6回九大独文科研研究会を福岡以外の土地で行うことを、準備中である。
|
Research Products
(39 results)