2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26284086
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 賢 千葉大学, 文学部, 教授 (90230482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 悠一郎 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20636071)
佐藤 仁史 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (60335156)
引野 亨輔 千葉大学, 文学部, 准教授 (90389065)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 比較史 / 東アジア史 / 日本史 / 国際研究者交流 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国大陸・朝鮮半島・日本列島などを包括する東アジア諸地域を対象に据えて、16世紀における世界的変動の衝撃の後に進行した秩序の再構築(「近世化」)過程のもとで、基層地域の内部に育まれた秩序・秩序意識を比較史的に検討するものである。具体的な焦点の一つは、あるべき秩序への願望を鋳込まれつつ語り出された地域社会の「記憶」を手がかりに、東アジア諸地域における「伝統社会」の構造と、そこに内在化していた秩序意識を検証することにある。検討対象とする記憶の語りとしては、「地域」の記憶、「明君」、「名宦」、「名士」の記憶、ならびに「家」の記憶の三つを想定している。 本年度は、以上の観点の中でも、とくに日本列島と中国大陸における「地域」の記憶、と「明君」の記憶を中心に検討を進め、郷土志など比較史研究のための基礎的な素材を収集した。本年度の研究においてあらためて再確認されたのは、記憶の不安定性とその生成的性格である。近世末期にはとりわけ中国大陸や日本列島では盛んに地方志・地誌が編纂されるとともに、地域住民のアイデンティティーに結びついた地域意識(「郷土」意識)が顕在化する。すなわち、編纂される地方志・地誌自体が「郷土」の記憶を鋳込まれた歴史の語りであるわけだが、その語り口の中で先立つ近世社会のイメージが形成されていくことになる。近世日本における「明君」であれ、中国の「名宦」であれ、前提としての災厄など困難な地域社会の状況が描写された上で、秩序を回復した手腕が賞賛されるわけであり、背景として描かれる近世のイメージ自体も比較検討すべき重要な要素であることを認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的において掲げたのは、東アジア諸地域の近代移行期における「地域」の記憶、「明君」・「名宦」・「名士」の記憶、ならびに「家」の記憶を手がかりに、比較史の構想を立ち上げることであった。初年度において中国近代における「地域」の記憶を鋳込まれた郷土志等について現地調査を開始したこと、日本近世の「明君」の記憶について研究を進展させることができたこと。以上の理由によって、研究事業はおおむね順調にスタートしたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において端緒についた中国地方文献史料の閲覧と収集、近世日本における「明君」と地域社会における知の共有状況について、継続的に検討を進める。それと同時に、初年度においては十分な検討ができなかった「家」の記憶について、史料と研究状況の整理を進め、なんらかのかたちで中間報告を行いたい。また、中国の日本研究者との交流をさらに積極的に進展させつつ、東アジアという文脈の中で比較史の方法を検討する。
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Research Products
(7 results)