2016 Fiscal Year Annual Research Report
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26284086
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 賢 千葉大学, 文学部, 教授 (90230482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 悠一郎 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20636071)
佐藤 仁史 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (60335156)
引野 亨輔 千葉大学, 文学部, 准教授 (90389065)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 比較史 / 東アジア / 近世 / 近代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は計画4年目の3年目に当たるため、これまで進めてきた各地域別実証研究を統合すべく、数度の研究集会において比較研究の方向性を相互に確認するとともに、国際シンポジウムの開催によって、いわば外部からの視点による研究方向の検証を行った。まずはじめに我々の比較研究の視点として確認したものは、第1に、出版や文書、あるいは語りによる知の伝播と接触、交流と葛藤であり、第2に、そのような自覚的な「語りだし」の中に生成され、再確認されていく各地域の「伝統」である。山田による報告「江戸時代の漢籍輸入から見る中日文化交流史」、引野の論考「日本近代仏書出版史序説」などは、いずれも語り出された知の体系が広範に流布しつつ、同時にそれぞれの地域に再土着化しながら東アジア各地域の「伝統」へと回収されていく過程を示唆する。国際シンポジウムでは、オーストラリア、イタリア、中国の研究者を招聘してディスカッションを行ったが、その前提としてそれぞれ話題提供として以下の報告をお願いした。「「国」境を越える意味をもう一度考える」(Tomoko AKAMI オーストラリア国立大学)、「沖縄とモダニティの相互作用-沖縄アイデンティティの創出-」(Rosa CAROLI ベネチア・カ・フォスカリ大学)、「近代日中文化交流史再考」(王宝平、浙江工商大学)の3つであり、それぞれ近世~近代移行期における文化交流、接触、その中から誕生する地域アイデンティティー、そしてそこから再び越境しようとする動機などが示されたが、これは我々の研究の方向性とも合致するものであった。すなわち、近世~近代移行期における交流と接触がそれぞれの地域における「伝統」の発見と、前期国民国家化を導いたのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
招聘者の辞退などにより、やや規模は縮小せざるを得なかったが、計画通り国際シンポジウムを開催して、研究方向の対照的検証を実施できた。また、近世における「伝統」の生成から近代国民国家への道程について見通しを持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって明らかになってきたのは、近世における出版と語りの時代における知の越境と接触こそが、逆説的ながら、一面では各地域における「伝統」の再構築に資していたのではないかという見通しである。すなわち、近代国民国家における有機的統合体の夢想の背景となった時間的連続(「伝統」)、空間的一体性(「文化的同一性」)などは実は近世において胚胎したのではないかと考えられる。だとすれば、最終年度における研究の統合に当たっては、近世東アジア比較史の内側から、東アジア近代国民国家化への展望を拓くことができるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
国際シンポジウム開催に当たり、予定していた招聘研究者複数が本務多忙等により辞退したこと、招聘を受諾した研究者の1名がたまたま他の用務により日本滞在中であったなどの事情により、シンポジウム開催のための経費が当初見込みより大幅に圧縮されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度招聘できなかった研究者の招聘、あるいは本研究計画に従事する研究者の海外渡航と研究交流等を特に予定する。
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Research Products
(14 results)