2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26284087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本村 凌二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (40147880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雄祐 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60237443)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 史学 / 比較史 / 識字率 / 通時的研究 / 読み書き能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、年間4回の研究会を開催した。まず研究全体の方向性の打ち合わせをした上で、人文情報学を主導している研究者から、人文学と情報学との融合の重要性について、おもに仏教学のデータベースをもとに、識字率のデジタルデータ化の基盤を考察することができた。またイスラム中東地域の諸言語圏のイスラム世界の政治文化研究で、オスマン・トルコ帝国を専門とする研究者より、通時的研究につながるアラビア文字世界としてのイスラム世界や諸社会層の社会化とリテラシーについて、社会全体での識字率の低さ、さらに近世期におけるイスラム世界の印刷術の変遷など、イスラム世界から世界に広がる多文字世界が、通時的に諸社会の中で互いに文字と語彙を受容していることなど解説してもらい、古代から近世・近代期への変遷を知ることができた。さらに、現代の情報化社会の問題点となるコミュニケーションの重要性について、言語学・文化人類学者の専門家に、東アフリカ地方やインド洋諸島などのアフリカ諸語の研究を教示してもらい、従来の地中海世界を対象とした多言語の生み出す社会史の比較にも繋がる研究会となった。 現地調査では、今年度は南イタリアにて、生の史料の現状を把握し、文書・碑文等をデジタル化し、保存・保管状況をも記録した。基本的データの集積は、後に、誰がどのようにして読んだか、あるいは読まなかったかという識字率の問題を考える手掛かりとなる。今後も外部の研究協力者から、その書法の解明と研究の現状を解説してもらうつもりである。また、それぞれの社会について比較検討し、研究の主軸となる共通点と差異とを探りながら論点を明らかにする。それらに潜む問題点をめぐっては、文化人類学、認知考古学、心理学などの視点からも続けて検討を進めている。非アルファベット文化圏では、特に江戸時代の一貫教育で優秀な人材を育成した會津若松藩の藩校にて、史料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究会の開催により、研究内容がより細分化でき、全体を通して、進捗状況も明確に把握することができている。 特に今年度の専門的分野における研究会は、今までに踏み入れたことのない情報学からのデータベース化の情報など、幅広い学識が研究者同士で得ることができ、情報学と人文学との融合の重要性や、データベース化への足掛かりや基盤となる情報学からの知識をも得ることができた。また、歴史学の研究者としては、今後の研究を進めていく上でそれらを活用でき、グローバルへ配信するものへと繋がると考える。また、通時的研究として、おもにイスラム中東地域の諸言語を、オスマン・トルコ帝国時代の古代史から近代史への流れの中で、民族・文化・教育・生活環境など様々な分野から考察することで、多言語と歴史の関係性を見付け出すことでき、各地域、各時代の特質を比較することに重点をおくことができている。さらに言語学・文化人類学者から、現代のコミュニケーションから生まれる認知学的分析による、多種多様な言語と環境の変化についての社会史的観点や、言語がもたらす問題点についてもより明確にできるように分析を試みている。 実証史学における現地調査では、まず地中海世界の一地域である南イタリアにも調査を広げている。また比較史の研究として、江戸時代の藩校・寺子屋にも調査を広げ、読み書き能力の原点を探り、その影響力を論究し、比較できる史料としてまとめていく。
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Strategy for Future Research Activity |
年度内の研究会では、まず、東アジア、南アジア、中央アジアの言語分布の状況を考慮し、歴史的に日本と密接な地域の東洋史に焦点をあて、遊牧民の誕生からユーラシア大陸で繰り広げられる累々たる論争など、現代史まで通時的に広げ、論点を探る予定である。 さらに、各言語文化研の現地調査も含め、専門研究者からの助言により、言語を通してみられる通念や伝統について、それらを取り巻く文化・環境など様々な要素から、知識を深め、意見交換をしながら、読み書き能力を及ぼす問題点を解明していく。 文化人類学の分野からは、おもにコミュニケーションから生まれる認知学的分析により、多種多様な言語がどのような環境の変化に繋がっていくかを今後の課題として取り上げていくこととする。 また、各地域・各時代について幾つかの言語文化圏に分けた、生の史料のデータベース化への作業に移行できるような基盤を作成し、アクセス可能な原資料を最新の文献情報の体系化に整備できるように努める。
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Causes of Carryover |
まず、現地調査における生の史料の集積において、一地域においては把握できているが、保管状況や位置など細部にわたる情報が足らず、またデータを体系化するまでには至っていないことから、その作業にかかる経費が少額であることがあげられる。どのような形、方法などで保存することが望ましいか、研究会を重ねることで、研究者の意見や情報の交換もでき、最善の対策をこれからも練っていく予定である。 次に、次年度以降にできれば海外から研究者を招聘することで、言語・情報学における海外での研究を比較研究できる研究会を予定することとしたために、少しでも経費を残存することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各言語文化圏の現地調査と各専門分野の研究会を開催し、総合的データベースの基盤となる作業に取り掛かる。できる限り不備・不明な点を明らかにしつつ、画面上でも解析できる状態にまで情報の体系化をすすめていく。 来年度には、海外の専門分野の研究者を招聘を試みて、相互の意見や情報学の面から助言をもらう予定とする。 さらに、言語の発達から教育へつながる社会史的比較研究もすることにより、幅広い視野を持って現代社会の識字率の問題点を考察していきたい。
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Research Products
(13 results)