2016 Fiscal Year Annual Research Report
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26284087
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本村 凌二 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (40147880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雄祐 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60237443)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 史学 / 比較史 / 識字率 / 通時的研究 / 読み書き能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は国内の研究会を2回開催した。今年度は日本の教育学に精通した研究者を講師に迎え、日本の教育学の歴史と日本史のなかで識字率研究の実態について考察を進めた。その実態を探っていくと日本の識字率研究は、研究の対象としては歴史が浅いことがわかった。しかしながら、ごく小地域、村単位でのデータから人口、男女比率、職業、身分制度、地形などによる統計学をみると3D のようなグラフ化もできるが、一つのサンプルとなることの積み重ねによるデータベースを作成するのには、時間と労力が必要となる。 国内調査では江戸から明治にかけて有識者を輩出した山口県萩藩と信州の藩校において、教育学の面から研究資料を収集しながら、識字率に関係する読み書きの分野から工学や商学などの広範囲のわたって海外からの影響を受けた学問にも目を向け、比較資料を収集した。海外調査では南フランス地域における遺跡調査も行い、古代・中世における地域的文化や宗教など比較できる資料を入手することができた。 また今年度は通年的歴史研究も中心に世界史概論の視野に位置づけられる英文資料の作成にも力を注いだ。英文資料は基盤研究の研究成果報告の英文資料となる内容である。 平成28年度の研究分担者の研究実績としては、2015年度に引き続き、読み書きの学際的研究のための方法論の比較検討、特にデジタル技術を活用した様々な分析方法を学術研究向けに発展してきたフリーソフトを中心に進めた。一つの焦点はテキストデータの分析で、基礎的なbag of words方式の基本的な考え方、語彙の共起などを考慮に入れたより複雑な分析、それらの多次元的な分析結果の次元圧縮やその可視化の方法を検討した。また、並行して、文書の地理的分布を分析するための方法として、地理情報システム(GIS)を使った分析方法の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究会にて日本の識字率研究に目を向けることができたことは大いに欧州と比較研究の材料となる要素を見つけることができ、また日本における教育学の歴史研究の遅れについて発見することができたことは、本研究の目的がいかに重要性について改めて認識することができた。日本における識字率研究の遅れと分野的に研究の保存が成しえていたなかったことは、今後の課題とするべきことであり、日本史における研究も比較研究とさらなる推進すべきリテラシー問題の研究として関連付けていかなければならない課題であると考える。 しかし日本と隣接し、仏教の教えや世界的に影響を及ぼした中国の教育学の根底となる論語などについての識字率研究の分析まで、今年度の研究成果としてあげることができなかった。歴史的に日本と密接な関係となる中国の宗教(仏教)や漢詩による表象やその保存方法、普及などについては、日本における今後の多面的な研究の発展にもつながることとなるので、来年度以降の研究会にて通時的な研究から地域的な研究へと細分化しながら、文化・教育・人口動態など考察し、現代社会へのリテラシーの変動による問題点を探っていこうと考える。 今年度は通年的世界史に目を向け、概論をまとめることができたが、今後は焦点を絞りつつ、識字率に影響をおよぼす要素を地域的に抜粋しながら、共通項を抜き出し相違点との因果関係を体系化できるように努める。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は研究会において地域的な研究を広げることとする。研究会にて東アジアの中国における長期間の教育学や漢詩の教えは、現代にも根強く浸透しており、その影響力について究明することで、普及することの要因を探ることとする。 また仏教やキリスト教などの宗教が布教することで人々の生活環境にどのような変化をもたらすか比較することで見えてくる社会史的背景との関連性についても検討する。 海外調査においても、特徴のある地域、例えば島のような閉鎖的な地域が受けた影響について現地調査を進める予定である。同様に国内調査でも昨年度同様に、時代の変貌に伴う教育の変化と生存環境による人口の動態や健康観など日本史において急速な変化に対して実態についても研究者とも議論を重ねつつ、究明していく。 さらに今年度は、海外から研究者を招聘し、おもに古代史について論じ識字率の問題点について議論をしたいと思う。
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Causes of Carryover |
今年度は通年的な研究成果をあげることとして、世界史の概論について英文研究資料を作成することとなった。そのため研究会を2回として、資料作成に時間を掛けた。よって来年度に向けての研究会と海外からの研究者招聘のために、支出経費を少額に抑えることができ、来年度への予算の計画を立てることとしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究会において、まず通年的・地域的研究としての研究分野として日本にとって最も重要であり、多大な影響をおよぼした地域となっているアジア圏の漢字の発祥の中国について開催する。広大で複雑な地形による複数言語(広東語や北京語)や人口形態、宗教など歴史的背景とともに究明することにより、日本との比較検討することができる。現代社会に至るそれぞれの経済発展に伴なう問題点などを探ることもできる。 また、海外からの研究者招聘による研究会により、違った観点からの問題をも定義し研究を遂行する予定である。よって、来年度の各研究会の費用として予算を使用する予定である。
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Remarks |
週刊エコノミスト・「歴史書の棚」に書評を毎号掲載。
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