2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26284087
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本村 凌二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (40147880)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雄祐 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60237443)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 史学 / 比較史 / 識字率 / 通時的研究 / 読み書き能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は研究会を2回開催した。香港を専門とする研究者により「現代香港における広東語」と題して現代の香港言語と中国語全体の状況について考察した。中国は多民族国家であり最大多数の方言を有する。その中で七大方言の一つである広東語は香港では話しことばであるが書きことばは北京語である。香港の言語状況は歴史的背景からの影響と戦後の中国大陸からの移民により広東語は事実上の公用語化となり学校教育の普及にも繋がると同時に非識字率も格段に下がっていった。広東語ネイティブの広東語と中国語の違いを生の発音で確認することもできた。 海外調査はロンドン大学古典学研究所でリテラシーの文献と資料を収集した。オーストリアでは古代ローマ遺跡を訪れ、軍駐屯地の宿営地であったカルヌントゥム地域のローマ帝国の影響と市民の生活環境の変化について調査した。 国内の調査では津藩校の崇廣堂にて藩士の子弟の教育について調査した。藩校廃止後は私立学校が開設され近代教育制度へ移行された通時的な教育現場の史跡の調査となった。 研究分担者の研究実績は、ICTを活用した読み書き・文書管理研究の一環として行ったプロジェクト、16~19世紀のスペイン植民地帝国における文書管理実践に関するインターネットを使った可視化(http://bunteku.sakura.ne.jp/hisGisMinpaku/)の成果を踏まえ、論文「近代ヒスパニック世界と文書ネットワーク・システムの成立と展開」研究者の集合知と可視化の試み」を執筆した(『近代ヒスパニック世界と文書ネットワーク』(吉江貴文(編)出版社:悠書館、総頁数:398頁(327-344)、2019年4月16日出版予定)。またコーディネートを務めた2017年度東京大学学術俯瞰講義「文化資源、文化遺産、世界遺産」OCW( UTokyoOpenCourseWare)が公開された。#4「文化資源の読み書き」(「Literacy for Cultural Resources 」、#5「文化資源と情報技術の変化」(「Cultural Resources。」)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も研究会等にて引き続き地域的・通時的研究としてアジア圏の同国内でも複合語が混在する「中国語」と「広東語」に焦点をあて考察した。比較社会史の研究としても歴史的背景を読み解くことがやはり重点を持ち、さらに識字率の問題提起を明確にすることにつながることがよく理解できた。植民地時代もある地域の言語への影響はやはり多大で、多種多様に変化する生活環境による人類生存とリテラシーをめぐる関連性は言語からも大いに分析できる。人間の社会と文化にも影響を及ぼしながら、言語分布や文化人類学・心理学などの視点からも状況を把握すること、特に現地での調査、最新のものも含む史料・文献・情報の分析を精査することは、リテラシーの問題点を明示する上で重要であることはいうまでもない。発展途上国の開発援助にも示唆する論点も浮かび上がってくることも確信した。さらに本研究の比較研究において、江戸時代の藩校の教育とその取り巻く環境からの影響との関連性にも取り組むことができている。しかし総括に向けて、細分化した地域の分析と調査の追加となる部分があり、次年度に究明したいと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度の総括に向けて、議論を重ね、問題点を精査・検討し、提示できるようにまず遂行する。問題は複雑化しているが、その中におけるリテラシーの分析で本研究における地域的でかつ、通時的な比較研究の資料を有効に活用し、手掛かりを探っていく。 無文字社会から近現代までの広範囲な規模を視野に、さらに現代社会情勢から先進諸国と発展途上国における教養の質の向上、格差の問題などの解決策へと導くことができるよう本研究の社会史的比較研究の目的である人類の生存とリテラシーをめぐる問題を考察していく。人口動態としても今日、減少化するにつれて、言語そのものがなくなる地域もある。また情報化社会の多大な情報の正しい理解力を身に付けることが早急に要求されている昨今では、歴史の変動による研究からおもに教育学面から読み書き能力の発展とは何かという原点を探り、解決策となる論点を明示できるように推進していこうと考える。
|
Causes of Carryover |
比較研究となる専門の研究者による講演をかねた研究会の延期と、本研究の国内の一部地域の研究の資料収集および、ヨーロッパ地域の研究対照となる言語に対しての広範囲となる近現代までの研究資料の収集の必要が生じたため、次年度の予算の計画として遂行することとなっている。 なお次年度の使用計画としては、研究会開催の費用と国内外の比較研究資料を収集目的の旅費と、すでに発注している一地域における通時的研究の資料収集のために支出する予定である。
|
Remarks |
研究代表者は『エコノミスト』:「歴史書の棚」に書評を毎号掲載。毎日新聞、読売新聞、産経新聞、中央公論に書評等を掲載。「THINK ABOUT」に「古代ローマ史に学ぶ組織論」のインタビュー記事を掲載。「Voice」(2019年1月号)「ローマ人は何事も正攻法を好んだ」を掲載。
|
-
-
-
-
-
[Book] 日本の崩壊2018
Author(s)
御厨貴、本村凌二
Total Pages
248
Publisher
祥伝社
ISBN
9784396115418
-