2016 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀中国地域社会の指導層・中堅層―江南地方の人材基盤研究
Project/Area Number |
26284110
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高田 幸男 明治大学, 文学部, 教授 (90257121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 肇 中部大学, 国際関係学部, 講師 (00469636)
飯塚 靖 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00514126)
水羽 信男 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50229712)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国江南地域 / 人材養成 / オーラルヒストリー / 地方史 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀中国の国家建設のありかたを地域社会(県レベル)の指導層・中堅層の人材基盤という視角から総合的に分析し、その地域社会における役割を解明するため、平成28年度は、江蘇省と浙江省で調査をおこなうとともに、清末から中華民国期に活躍した江南の名士王清穆の未公刊日記『農隠廬日記』の講読と既講読分の整理・公開を進めた。 具体的には、平成28年9月3日・4日に江蘇省南京で南京大学の協力の下、元大学教授など4名、9月5日・6日に同鎮江で江蘇科技大学の協力の下、元地方幹部や庶民15名、翌29年3月に、浙江大学と寧波大学の協力の下、同月11日に浙江省寧波で知識人2名、同12日に同じく奉化で地方幹部ら2名に対して聞き取り調査をおこない、それぞれ生まれた当時の家庭環境、受けてきた教育、そしてキャリア獲得に至った経緯などについて貴重な情報を得ることができた。 また、平成28年9月6日午後には鎮江市史志弁公室で『鎮江市志』の編纂に使用した大量の史料ファイルを閲覧し、同7日には鎮江市図書館の古籍閲覧室で中華民国期の地方文献を閲覧した。常州市では聞き取り調査はおこなえなかったが、同9月8日に常州大学の協力の下、常州市図書館において地方文献を閲覧した。平成29年3月14日には寧波市図書館において地方文献を閲覧し、同15日には江蘇省無錫市濱湖区政府において無錫市の地方文献の提供を受けた。 いっぽう、『農隠廬日記』の講読は、戊辰(1928年)旧暦正月から十月までを講読するとともに、既読の癸亥(1923年)五月から(1924年)までを整理・修正し、『近代中国研究彙報』誌上で公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画においては、江南各地の地域社会指導者から彼らが実際に受けた教育やキャリア獲得に至る経緯を聞くことは文字史料等の収集・講読と並ぶ重要項目であったが、中国の引き締め政策や日中関係の悪化によって、聞き取りが実施できるか懸念があった。 そのため、中国の南京大学と浙江大学を介して、各地の大学・学院(単科大学)の研究者の協力を得て聞き取り調査を実現した。そのため、直前になって聞き取りが中止になったり、調査対象が当初想定していなかった大学教授のような高級知識人も聞き取り対象に含むことになったが、インタビュイーは79名に上り、教育・人材養成をめぐるさまざまな事例を収集することができた。 また、地方文献についても、現地で出版された冊子や雑誌のほか、地方史編纂のために各地で収集されたファイルを閲覧するなど、史料状況の一端を把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、あらたな現地調査は、新たな必要が発生しない限り実施せず、調査記録の整理と、その分析を進める。そして、順次出版をめざす。『農隠廬日記』に関しては、引き続き戊辰(1928年)十月以降の講読と既講読分の整理・公開を進める。 そして、11月には現地調査に協力した中国人研究者等を招聘し、国際シンポジウムを開催して、本研究の成果と課題について討論する。そのほか、他の研究会等の場を借りて成果を披露する。
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Causes of Carryover |
平成29年3月に浙江省を中心とする補足的調査を実施したため、年度内の会計処理ができず、次年度使用扱いとなった。また、一部は同調査への参加人数が減ったため、次年度使用へ回すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度には、調査記録の整理や国際シンポジウム、その他の成果公開を予定している。そのため、昨年度3月調査の立て替え払い分を除く次年度使用額は、平成29年度分と合わせて、シンポジウムへの海外研究協力者等の招聘や史料の購入等に充当する。
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