2014 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル国現地収集史料等による13~14世紀モンゴル高原史の再構成
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26284112
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
松田 孝一 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (70142304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 太 弘前大学, 人文学部, 教授 (10333709)
村岡 倫 龍谷大学, 文学部, 教授 (30288633)
白石 典之 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40262422)
松川 節 大谷大学, 文学部, 教授 (60321064)
矢島 洋一 奈良女子大学, その他部局等, 准教授 (60410990)
中村 淳 駒澤大学, 文学部, 教授 (70306918)
山本 明志 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70710937)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モンゴル帝国 / 元朝 / モンゴル高原 / 碑文 / チベット語史料 / ウイグル文書 / 嶺北行省 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
帝国初期、大臣チンカイがモンゴル西部に建設し、元代にも軍事拠点となったチンカイ屯田及びチンカイ城の位置確定について、松田、村岡、松川はゴビアルタイ県シャルガ郡ハルザンシレグ遺蹟を同屯田・城の遺蹟と判断し、2014年8月~9月にモンゴル国遊牧文明研究所A.オチル教授と協力して発掘を実施。出土物の日本での放射線炭素年代測定で、木片はチンギス・カン時代、骨片は元代のものと推定され、土器片は白石の鑑定で文様からモンゴル帝国~元代のものと比定され、同遺跡が同時期に活動していたことが確定された。 松田はモンゴル高原での西遼の活動を論証し、またハルホリンの碑文断片から「嶺北行省題名記」碑を復元、元代モンゴル高原の官員リストを得た。村岡は、ハルホリンのエルデニ=ゾー内の「和林兵馬司劉公去思碑」(1328-29)からカラコルム1303年設置の官庁「兵馬司」の機能及び設置目的を解明した。中村は、敦煌チベット語文書2断片を帝師発令文と断定した。松井は、元代ウイグル文行政文書4件の冒頭表現を分析、モンゴル高原等のモンゴル王族諸王によるウイグル国での徴税事例を提供した。山本は、チベット仏教のカルマ=カギュ派勢力に分析を加え、また上記「嶺北行省題名記」記載の官職在位者の在職時期について論証した。矢島は、イルハン朝フレグが発行したアラビア語ファルマーンを分析してモンゴル語命令文研究の基礎データを提示した。これらのモンゴル帝国各地発現の命令文書の研究はモンゴル高原行政システム理解の基礎となる重要な成果である。 研究成果の検討及び広報に関して、2015年2月、松川、松田が研究分担者を招集し、またA.オチル、D.バヤルサイハン(モンゴル国立大学)らを招へいして科研研究集会を大谷大学にて開催し、研究者へ広報し、松川、松田、村岡がモンゴル・日本両国において発掘成果について新聞等マスコミへの情報発信を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モンゴル帝国~元代のモンゴル高原の通史や支配システムの復元には、文献史料の他、モンゴル高原現地における発掘史料、碑文史料に加えて、モンゴル支配下の周辺地域の同種史料や文書史料の分析によって比較検討しながら進める必要がある。考古学的発掘は、モンゴル側の研究協力者のA.オチル氏の主導でモンゴル科学技術大学のエルデネボルド教授ほかにより実施され、上記成果に記載したようにハルザンシレグ遺蹟が放射性炭素年代測定により年代的にチンカイ屯田、チンカイ城である確実な証拠を獲得した。文献研究では、帝国勃興期に西遼がモンゴル高原で活発な活動をしていたことを論証したことは通史の初期に関する画期的な成果である。またモンゴル支配下の行政システムを理解するには、元朝中央政府の行政、王族諸王のそれぞれが帝国各地に保有する領地(分地)領民(分民)支配、仏教教団、寺院、仏教徒に対する帝師の支配権行使など複雑な支配権の行使がみられる。それらを記録した碑文、文書はモンゴル、ペルシア、アラビア、チベットウイグル語など多種の言語で記載されている。それらの史料を探索すること自体が大きな課題であり、収集された史料を分析、研究することもそれぞれの言語の専門性に依拠してなされるものである。上記発掘作業は研究代表者、分担者の努力により予定通りの結果を獲得でき、また研究代表者、分担者はそれぞれの専門性にもとづき、モンゴル語、漢語、ウイグル語、アラビア語、ペルシャ語史料の研究を推進した。上記の新成果は次年度に向けた研究基盤を得たと言える。本研究課題は、平成26年度の研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、本研究課題の2年目であり、2014年度と同様のモンゴル現地での史料収集を実施し、碑文、墨書の調査を行い、昨年度発掘したハルザンシレグ遺蹟関連の調査も行う。予算の関係上、昨年と同様の発掘はできないが、遺蹟附近景観あるいはモンゴル西部の他のモンゴル帝国時代の遺蹟調査を進める。アラビア、ペルシャ語、チベット語、ウイグル語、モンゴル語文献資料の調査研究も併せて進める。『元朝秘史』に関しては、帝国勃興期の部族間の通婚の展開と部族勢力の支配・被支配関係を解析する。『元史』に関しては、本紀の記載のモンゴル高原史関連記事の整理を進める。昨年度の研究成果を研究界全体の共有するものとするために成果などの科研関連情報を印刷・発行する。2016年度は、本研究課題の最終年度であるため、研究成果を総合して、通史の再構成を完成する。 モンゴル国での調査に関しては過去20年以上にわたる共同研究の実績と成果の上にゆるぎない信頼関係があり、松川節の堪能なモンゴル語運用能力によって両国研究者間の研究交流を推進して研究成果を両国ならび全世界のものとしたい。 研究推進のために資料整理・翻訳業務の補助員を雇用して作業を進める。
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Causes of Carryover |
2014年度研究成果及び研究集会(2015年2月27日)での報告等を年度末に印刷発行する予定であったが、整理に時間を要し、発行が2015年度(平成27年度)当初に延びていること、また研究分担者が昨年度予定したモンゴルでの現地調査へ参加ができなかったために旅費等の繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
目下成果の報告書の整理を進めており、その印刷及び分担者のモンゴル現地出張等での本研究課題の2年目(2015年度)の現地調査および関連文献資料等の物品費として有効に使用する。
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Research Products
(20 results)