2015 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル国現地収集史料等による13~14世紀モンゴル高原史の再構成
Project/Area Number |
26284112
|
Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
松田 孝一 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (70142304)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 太 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10333709)
村岡 倫 龍谷大学, 文学部, 教授 (30288633)
白石 典之 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40262422)
松川 節 大谷大学, 文学部, 教授 (60321064)
矢島 洋一 奈良女子大学, その他部局等, 准教授 (60410990)
中村 淳 駒澤大学, 文学部, 教授 (70306918)
山本 明志 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70710937)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | モンゴル帝国 / 元朝 / モンゴル高原 / 碑文 / チベット語史料 / ウイグル文書 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の平成26年度の研究成果等15件の報告を含む報告書『13~14世紀モンゴル史研究』(A4判125頁)を、27年度前半の成果の一部を含めて刊行配布し、成果を広く学界共有情報とした。2015年8月~9月松田、村岡、松川はオチル(モンゴル国遊牧文明研究所、教授)、中田裕子(龍谷大)とモンゴル国ホブド県ムンフハイルハン郡ドロンノールのウラーントルゴイのシリア語、漢語銘文を調査し、又チンカイ城・チンカイ屯田の位置に関する陳得芝(南京大)のドルグン湖南に比定する説を同湖付近で検討した。銘文の漢字について大澤孝(大阪大)の既読以外の文字の解読を試みた。陳説については現地景観が『長春真人西遊記』の記載に対応せず成立不可と判断した。松田はモンゴル高原での西遼と金の対立とチンギス・カンの動向の研究を深化させた。松川は、興元閣碑について検討を継続し、又モンゴル調査の調整に当たった。中村淳は新発見のチベット文語命令文(法旨)を分析、モンゴル統治下チベット行政を検討、行省管轄外の元朝行政の実態の新知見を得た。白石は2015年7月にモンゴル国南東部のダリガンガ地域を踏査、モンゴル帝国時代の主要交通路「テレゲン道」関連の調査を行い、地理的・考古学的データを得た。山本はチベット年代記によりモンゴル駅伝制のチベットへの導入時期について知見を深めた。村岡はアルタイの元朝軍の動向について検討した。矢島洋一はクブラヴィーヤ教団の開祖ナジュムッディーン・クブラーのチンギス西征時の殉教伝承を検討した。松井太はイラン発現のトルコ語・ペルシア語二言語文書や内蒙古出土モンゴル語文書を研究し、モンゴル時代のウイグル仏教徒・景教徒の巡礼ネットワークに関する学会発表を行なった。研究集会を2016年2月大谷大で開催、本年研究成果や昨年本研究課題にもとづく発掘を主導したモンゴル科学技術大学エルデネボルドの発掘報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の昨年度研究計画のうち、モンゴル現地調査は2015年8月23日~9月2日の間に実施し、漢文銘文の新たな解読を進め、陳得芝によるチンカイ城をドルグン湖南岸に比定する考えが成立しえないことを現地にて確認し、当初の計画通りに進捗した。チンカイ屯田、チンカイ城所在地として2014年に発掘したシャルガ遺蹟資料は白石典之により検討が続けられて、またモンゴル国の発掘を現地主導したエルデネボルド准教授による成果検討報告も得た。松田はモンゴル帝国、元朝時期のモンゴル高原の歴史の展開について継続して検討し、チンギス・カン勃興期におけるカラキタイのモンゴル高原での活動について確証を得た。村岡倫はアルタイ地域の元朝軍の展開について漢文、ペルシャ語史料により新知見をまとめた。中村淳はチベット文法旨の検討を進め、帝国の政治とチベット仏教教団との関係性について、山本明志はチベット語資料により駅伝制についてそれぞれ知見を深めた。松井太はウイグル人の同時期の動向についてウイグル文書の分析を基礎に進めた。矢島洋一はモンゴル帝国期のイスラームの主要勢力クブラヴィーヤ教団の開祖のモンゴル征服による殉教とモンゴル支配の容認という矛盾に対しどのような妥協点をイスラーム側が見出していたか、またそれがその後の各時代においてどのような変遷をみたかを分析した。松川節もモンゴル語資料の分析を継続しており、モンゴル帝国・元朝期のモンゴル高原やその地域と密接に連関した周辺の歴史展開の考察が進捗し、研究計画はほぼ達成されている。これまで収集した「モンゴル高原通史」の事件史については整理が済んでいる。ただ、これまで収集した碑文等にみられモンゴル高原現存碑文所載の人名、官職名、地名の索引化の作業は目下作業中である。研究成果の公開のための研究集会の開催及びニューズレター(報告書)の刊行も予定通り達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は前年度に引き続き組織の代表者、分担者もそれぞれの研究を推進するとともに、最終年度として研究成果を総合した『モンゴル帝国・元朝時代モンゴル通史』(仮題)の完成をめざす。代表者の松田孝一は研究組織全体の研究推進や研究成果のとりまとめを総括する。具体的には、通史の基本的項目と分担者の個別専門研究成果との接点を年度前半に示し、代表者及び各研究分担者はそれぞれの課題の研究を推進するとともにそれらの総括を行い、年度後半(平成29年2月まで)に代表者に報告する。代表者は各分担者と連絡をとりつつそれらを取りまとめて通史の原稿の基本事項の大枠を決め、原稿の完成をめざす。 松田はまた分担者の村岡倫、松川節とともにモンゴル国のオチル教授の協力を継続して求めて、現地での碑文・銘文資料の調査を実施する。松川節はその円滑な推進のためにモンゴル側との折衝にあたる。分担者の村岡倫はチンギス・カン一族のモンゴル高原の親藩領の統治、チンカイ屯田、松川節は『勅賜興元閣碑』等モンゴル語史料、白石典之はシャルガ遺蹟、アウラガ遺蹟等の考古資料、中村淳は、モンゴル帝国、元朝におけるチベット仏教の動向、矢島洋一は同時期のイスラーム教団の活動、松井太はウイグル人の活動、山本明志は、モンゴル高原の元朝行政システムや駅伝制についてそれぞれ研究を総括する。成果の広報について、昨年度の研究成果については年度後半に『13-14世紀モンゴル史研究』第2号として刊行し、今年度の成果については平成29年2月に研究集会を開催して広報する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は、主として研究分担者が昨年度予定したモンゴル現地調査に参加できなかったため旅費等の繰り越しが生じ、今年度、当該分担者はモンゴルにて調査を行ったが、繰越金を出張費用に充当したため、今年度分担金の一部分を次年度に繰り越すこととなった。また比較的少額の繰越金は、物品費として使用する予定であったが、次年度の研究推進で執行する方が有意義と考えて繰り越すこととしたものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金は、モンゴル現地調査で得られた考古資料の理化学的分析費として次年度(平成28年度)に使用するほか、関連文献資料の収集のための物品費として使用して、当科研費による研究の次年度の継続的進展に有効に執行する予定である。
|
Research Products
(28 results)