2014 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシア・ローマ史における新しい「衰退論」構築に向けた統合的研究の試み
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26284114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
長谷川 岳男 鎌倉女子大学, 教育学部, 教授 (20308331)
井上 文則 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20400608)
藤井 崇 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50708683)
桑山 由文 京都女子大学, 文学部, 准教授 (60343266)
阿部 拓児 京都府立大学, 文学部, 准教授 (90631440)
南雲 泰輔 山口大学, 人文学部, 講師 (70735901)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古代ギリシア / ローマ帝国 / 衰退 / 都市 / 心性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は本研究の第1年度であったため、まずは課題を研究班全体と個別分担分の両方にわたって整理し、掘り下げ、研究史を確認する作業を進めた。具体的には、1980年代以降の新正統派学説を築いた諸研究の再検討が大きな課題であったために、関連する研究文献や新正統派学説の根拠とされた史料の検討を本格的に始めた。そして、研究史の再検討と研究課題の掘り下げのために、研究代表者・研究分担者・研究協力者は、所属研究機関だけでなく、他の研究機関、とくにヨーロッパの大学や研究所をも訪ねて、資料収集や意見交換をおこなった。 研究代表者・研究分担者・研究協力者は、「衰退論」に共通する検討課題を念頭におきつつ、また研究史の再検討を踏まえて、各自の個別分担テーマについても研究を推進し、文学的史料の少ない分野では考古資料の検討をすべく、遺跡や博物館の調査をも進めた。各自進めたテーマの研究について、2度開催した研究班全員参加の研究会で報告、検討し、また本研究開始後すぐに開設したホームページにて簡潔に公表した。本年度は前提となる作業に重点を置いたため、論文発表までは進めなかったが、研究推進の基礎は固められた。 研究会では、本研究の計画を順調に進めるべく、次年度以降の手順についても相談し、特に第3年度にイギリス、オックスフォード大学で主催を予定している研究集会に関して検討した。また、研究代表者はこの研究集会実現のために、オックスフォード大学の教員に協力を依頼し、打ち合わせをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1年度の研究では、交付申請書の「研究目的」に掲げたに課題の整理・深化と研究史の再検討について力を入れたが、研究分担テーマ個々の事情で飛躍的に進んだ分野もあれば、研究の前提となる概念の問題の検討などで多くの時間を割かねばならないところもあった。 研究分担者である長谷川、阿部、南雲は、従来の衰退論を整理して研究の今後の方向性を探る作業に時間をかけた。長谷川は、ヘレニズム以降の西方ギリシア人に対する「衰退」の言説を考察することが重要である点を確認し、阿部は小アジアの都市の「衰退」を論じる際の規範を設定することの難しさを、トルコの研究所と遺跡での調査で明確にした。南雲は、ローマ帝国衰亡に関わる諸学説を、学説の置かれた文脈を勘案しつつごく最近の研究まで消化して、今後の課題を明確化した。 研究代表者の南川と分担者の桑山は、ローマ帝国の都市の実態を考察して、その変化と「衰退」との関係を明確にしようと努めた。研究分担者の井上と藤井は、宗教の面での変化を取り上げて、宗教的、精神的状況を「衰退論」の課題の中に取り入れようと試みた。研究分担者の栗原は「家」の位置づけを通じてギリシア世界の変容を考える作業を開始した。研究協力者の西村も、「衰退論」を念頭に置きながら、後期ローマ帝国時代のローマ人の言説分析をおこない、その自己理解や世界観を明らかにしようと努力した。 以上の共通課題を踏まえつつおこなった分担テーマ研究は、最初の年度の作業としてはおおむね順調に進展したと考えている。第1年度の活動報告は、本科研費研究開始後すぐに開設したホームページに、簡潔に公表した。次年度以降研究手順についても研究会で相談し、イギリスでの研究集会主催についても準備を始めた。論文による具体的な成果発表は次年度に持ち越したが、発表のための準備はしっかり進められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度には、課題の整理や深化、研究史の再検討について、第1年度でまだ充分果たせていないと思われる領域について継続するとともに、具体的な史資料の検討を進め、研究機関での調査だけでなく、遺跡や博物館など考古学的知見を得られるところでの調査まで、具体的な作業を進展させたい。研究代表者と研究分担者が渡欧してこれに従事する。 第2年度の成果は、ホームページ等で一方的に発信するだけでなく、学会などで発表することを通じて批判を仰がねばならないと考えている。そのため、研究班メンバーのみの研究会だけではなく、本科研共同研究班が主催者となって、年度末頃にシンポジウムを京都で開くことにしている。シンポジウムでは、個別の研究テーマを越えて、古代ギリシア史とローマ帝国史に共通する「衰退論」をめぐる課題を明示した上で、個別の研究成果を報告し、議論したい。さらに、シンポジウム準備と並行して、分担テーマの研究が進んだところから、論文や研究ノートの形で、研究成果の一部を発表していきたい。広く一般読者に研究成果を披露することも進めたい。 第3年度のイギリス、オックスフォード大学で主催する予定の国際研究集会も、第2年度の研究成果、とくに京都でのシンポジウムの成果を踏まえつつ開催する。そのため、研究会を開いて十分検討した上で、シンポジウムと国際研究集会の準備を進めたい。誰が、どのようなテーマで報告するか、イギリス国内とヨーロッパの研究機関から誰を招聘して報告やコメントをしてもらうか、など、研究集会の具体的なプログラムまで決められるようにするつもりである。イギリスでの具体的な開催準備は、第1年度の南川の作業を受けて、第2年度は藤井が渡英し、さらに具体的に進めることを予定している。
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Research Products
(2 results)