2015 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシア・ローマ史における新しい「衰退論」構築に向けた統合的研究の試み
Project/Area Number |
26284114
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
長谷川 岳男 鎌倉女子大学, 教育学部, 教授 (20308331)
井上 文則 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20400608)
藤井 崇 関西学院大学, 文学部, 准教授 (50708683)
桑山 由文 京都女子大学, 文学部, 教授 (60343266)
南雲 泰輔 山口大学, 人文学部, 講師 (70735901)
阿部 拓児 京都府立大学, 文学部, 准教授 (90631440)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 古代ギリシア / ローマ帝国 / 衰退 / 都市 / 心性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究第2年目の平成27年度は、昨年度の研究史の検討・確認を継続しておこなうとともに、個別分担テーマの掘り下げに努力した。研究史の検討・確認といっても、単に書物・論文の検討に留まらず、ヨーロッパの大学を訪れ、同学の研究者と討論をおこなって、理解を深める作業にも力が注がれた。個別分担テーマの掘り下げに関しては、史資料の具体的な検討が主となったが、ヨーロッパの研究機関だけでなく、関係の遺跡や博物館所蔵の出土遺物を調査することなど、多様な活動が展開された。2年目の個別分担テーマに関する研究活動については、本研究のホームページに簡潔な報告文を掲げた。 さらに、本年度は、研究史の検討結果を踏まえて、本研究で果たされるべき重要な論点を絞り込む作業をし、西洋古代世界における衰退に関する議論を再構築するために現段階で最も必要な論点として、「衰退叙述/言説の構築」を設定した。そして、本年度末の3月に京都大学においてシンポジウムを実施し、「古代ギリシア・ローマ世界における衰退と衰退叙述」と題して、先述の論点に関わる研究報告と討論をおこなった。(1)衰退を考える前提となる過去との比較、(2)人々が主体的に衰退叙述/言説を構築するケース、(3)衰退叙述/言説構築に関する他者の関わり、これら3つのテーマを立て、更なる研究の展開のために、参加の研究者たちから広く意見を徴することに努めた。このシンポジウムの後、その成果を受けて、2017年3月に連合王国のオックスフォード大学で主宰するシンポジウムの内容について、メンバー全員で検討をおこない、報告者・コメンテータや討論形式について一致を見、本格的なプログラム作成へと進むことになった。これに関連して、研究代表者は、オックスフォードでのシンポジウムでの報告を依頼するドイツのテュービンゲン大学の教授らと研究打ち合わせをおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年目の研究では、前年度の研究史の検討を踏まえて、史資料の分析の具体的な作業に入り、調査も考古学的な性格の領域に進むことになった。研究活動や年度末の京都大学におけるシンポジウムに向けての準備作業の結果、研究代表者・研究分担者・研究協力者の個別研究の方向は、協議の結果、「衰退叙述/言説の構築」に収斂することになった。さらに、この論点を具体的には3つのパートに分けて研究することとし、それぞれのパートで分析が進められた。第1部門では、衰退認識の起点になる「過去と現在の比較」を中心課題とし、繁栄の時期からの変化を如何に認識していったかを、史実の次元を踏まえて検討する作業をおこなった。この部門の研究には、研究代表者の南川と分担者の栗原・南雲が従事し、京都大学でのシンポジウムでは南雲が代表して報告したが、報告そのものは秀逸であったものの、課題の設定自体に無理があることが判明した。そのため、オックスフォードでのシンポジウムの第1部では、中心課題を第1年目の研究蓄積のある「近現代からの衰退観」に切り替えることにした。第2部門は古代における人々の主体的な衰退叙述/言説の構築を扱い、研究分担者の井上、研究協力者の西村・岸本が従事し、京都でのシンポジウムでは岸本が報告した。第3部門は、衰退叙述/言説の構築と他者との関わりをテーマとした。研究分担者の長谷川・桑山・阿部が検討し、シンポジウムでは桑山が報告した。 上記活動と並行して、第3年目のオックスフォード大学におけるシンポジウムに向けて、具体的な準備も進めることができた。上記の第1部門の切り替えも、メンバー全員の協議の上、大きな無理なく決めることができた。シンポジウムの会場となるウルフソン・カレッジ等との協議・契約も順調に進み、ドイツからの参加者とも面会の上で打ち合わせを済ませた。研究活動はおおむね順調に進んでいると自己評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究第3年度目の最大の目標は、これまでの研究成果を活かして、連合王国、オックスフォード大学で3月に主催するシンポジウムを成功させ、共同研究の活動と成果を国際的なものとすることである。そのために、メンバーはこれまで順調に進みつつある研究を、個別研究の単位でまとめることに努力しなければならない。オックスフォード・シンポジウムでの報告担当者は成果を英文でまとめ、報告しないメンバーは、それぞれの分担箇所での意見表明のために英文でスピーチを準備することに努力しなければならない。また、シンポジウムで研究報告しないメンバーも、報告者同様に英文の研究成果報告書を提出する予定で作業を進めることになっている。研究代表者は、このシンポジウムで報告やコメンテータをしてもらう英独の研究者との打ち合わせを綿密にする必要がある。そのため、プログラムが出来上がった時期に渡英し、オックスフォード大学やケンブリッジ大学の研究者への協力依頼をする予定である。加えて、本研究の専用ホームページを利用して、このシンポジウム開催を国内外の学会・研究者等に広く通知し、国際的に参加者が登録できるよう、ホームページ画面を設定をしなければならない。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成27年度にイギリスより招聘する予定であった研究者、エクセター大学上級講師リチャード・フラワー博士の来日が、同博士の母親の病気により平成28年7月に延期になったこと、ならびに研究代表者が平成29年3月のオックスフォード大学でのシンポジウムの事前打ち合わせのために渡英する時期を、平成28年3月から9月へと変更したことである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
リチャード・フラワー博士の来日は本年7月と決定しており、研究代表者の渡英も9月末と決定していて、すでに航空券購入など準備を進めている。
|
Research Products
(8 results)