2018 Fiscal Year Annual Research Report
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26284119
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 浩平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (60588226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80250140)
池谷 信之 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (80596106)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / 海蝕洞穴遺跡 / 弥生文化 / 津波堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、弥生時代において海を生業の舞台とした集団に関する学際的研究である。この研究を通じて、これまで水田稲作の解明に研究が傾倒してきた弥生文化そのものの多様性を見いだすことができる。この研究では、神奈川県三浦市に所在する白石洞穴遺跡の発掘調査を基礎研究とする。併行して周辺の海蝕洞穴遺跡から出土した人骨の形質人類学的・文化財科学的研究を通して、海人集団の時系的変化や周辺の海蝕洞穴遺跡や集落遺跡から出土した弥生土器の胎土分析から、海人集団の交流域となる時空的変化を明らかにすることを目的としている。この3つの研究テーマを統合して、弥生時代の海人集団の特質を検討し、弥生文化に内在する集団・生業・交易の多様性を明らかにしたい。 白石洞穴遺跡の研究では、今回で7度目の発掘調査を2019年3月に実施した(白石洞穴遺跡2019調査)。今回の発掘調査では予算の都合上、弥生時代の貝塚部分の限定的な発掘調査とその下部における遺物包含層の有無を確認することに重点を置き,約1週間調査を行った。その結果,貝塚の層厚は約40cmで、出土土器からみると、弥生時代中期後葉よりも古くはさかのぼらないことが明らかになった。しかし、人工物を含まない焼土層があり、今後この層位出土の有機物の年代測定をおこなうことで、白石洞穴の利用の開始時期が明らかになる。 また、2017年度の発掘調査で出土した大量の弥生時代のアワビ資料を整理作業をおこなった。その過程で三浦市所蔵の他の海蝕洞穴遺跡からの出土アワビ資料の観察を進め、洞穴ごとに特徴があることが明らかとなった。 洞穴内部に堆積している津波堆積層については、年代測定をすすめ、最も厚く堆積している層位については、これまで発見されていなかった室町時代の関東地震に伴うものであることが明らかとなった。 研究成果の社会的還元としてサイエンスカフェを2019年2月に開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に研究は進んだ。本研究の主たる調査である白石洞穴遺跡の発掘調査は順調に進んでいるものの、研究前半段階(2014年~2016年)での古墳時代の人骨資料が想定以上に出土したために、記録と取り上げに多くの時間を割かざるを得なかったことが影響し、研究最終年度である本年度において、期待していた弥生時代の貝塚を掘りきることはできなかった。しかし、これまでの調査範囲内においても、弥生時代の海人集団に関わる様々な資料を得ることができた。 堆積物の調査と研究においては、当初想定していた時期・規模の予想を大きく裏切るように、大きな成果を得ることができている。 土器の胎土に着目した文化財科学的研究では、この研究期間に分析のバックボーンとなる地質的基礎資料の収集と分析は終え,実際に遺跡出土土器との対比も行うことができた。しかし、うまく遺跡データとバックボーンデータとの照合(一致)をみる例は決して多くはなかった。これは、想定していた以上に土器の移動が行われているためであるのかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度までの研究において、多くの成果を上げることができたが、白石洞穴遺跡の発掘調査については、予定した範囲において、弥生時代の遺物包含層のすべてを調査し終えることはできなかった。また、津波堆積物についても、明応四年の堆積物の詳細な検討、および上下の層位にみられる津波堆積物の検討は行うことができなかった。 本研究費は、2019年度まで延長したものの、発掘調査を行うには経費的に十分ではないため、2019年度は行わない。今後、何らかの方法で研究を進めていく所存である。
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Causes of Carryover |
杉山の研究成果論文を掲載した書籍『弥生文化 再考』(雄山閣)の出版が遅れた。その制作費として予算を計上していたため、次年度への繰り越しとなった。2019年度5月には出版される予定であり、その際に支出する。
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Research Products
(18 results)