2017 Fiscal Year Annual Research Report
X線CT調査による古墳時代甲冑のデジタルアーカイブおよび型式学的新研究
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26284123
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
橋本 達也 鹿児島大学, 総合研究博物館, 教授 (20274269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 一隆 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 課長 (10416555)
中久保 辰夫 大阪大学, 文学研究科, 助教 (30609483)
今津 節生 奈良大学, 文学部, 教授 (50250379)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 考古学 / 古墳時代 / 甲冑 / X線CT / 型式学的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本列島の古墳時代を代表する考古資料である鉄製甲胄に関して、新たな文化財科学的分析法であるX線CTスキャナを用いたX線透過三次元データの集積を行い、既存情報との比較検討を通して、複雑な形態・構造の研究方法の革新し、新たな考古学研究を目指すものである。 従来の研究では複雑な構造をもつ立体遺物の記録・情報共有において主として実測図や写真が研究に用いられてきたが、それらは作成者個人の認識差によってバラツキが生じ、また捨象される情報が多い。資料の比較研究を新たに展開させるには、情報の標準化、精度向上を進めるとともに、その共有が必要である。本研究では、三次元情報とともに、金属器の研究において必須のX線透過情報を同時に獲得できるX線CTを用い、その解析によって画像の作出を行うことで、これらの課題を克服しつつ、今後の研究の展開を進める上で有益なデータを提供することを目指した。 本研究を進めるにあたって、X線CTデータの取得は九州国立博物館にて実施した。その上で、データを鹿児島大学総合研究博物館にて解析し、画像を作出するという方法を採った。さらにその画像をレイアウトして、印刷物としても提供できるように編集作業を行った。 同時に、文化財科学と古墳時代甲冑を専門とする考古学研究者を研究分担者・連携研究者として研究組織に加え、その組織での協議によって必要な情報の収集・提示・利用方法などの議論を進めた。調査および検討会はH26年度からH29年度まで継続して進めており、膨大なデータの蓄積ができた。 一定の研究の方向性が得られた平成29年9月9日に成果公開研究会を開催している。また、毎年度、調査を行った資料およびその情報は印刷物における資料紹介や博物館展示などを通して公開も行っている。最終的な成果公開としては、論考および資料からなる研究報告書を刊行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の当初目的に沿って、古墳時代甲胄のX線CT調査を進めてきた。H29年度は、最終年度であるためデータの取得は前年度までより少なめであるが、それでも大阪府野中古墳、宮崎県島内139号地下式横穴墓出土資料などの重要データを取得することができた。当初の目的に沿って、近畿の政権中枢に関わる古墳出土甲冑と九州の良好な遺存状態の甲冑に関するデータを多量に取得できた上に、刀剣、馬具等の関連する古墳出土品、あるいは中世大鎧などのデータを取得することができた。またその解析もH29年度内にほぼ終えることができた。 成果の公表にあたっては研究組織のメンバーとの検討会を行い、その成果を踏まえ学会発表、公開研究会の開催、博物館での展示などを行ってきた。おおむね当初計画の多くは達成できたといってよいであろう。 ただ、一方で扱うデータが膨大になり、研究報告の編集・印刷までを終えるには至らず最終年延長申請を行い、研究報告の刊行はH30年度に延期することとした。その背景には、資料の所蔵機関が多数に渡り、画像利用掲載に関する申請・許可手続きが膨大になり相当な時間を要したこともある。H30年度に論考および資料編からなる研究報告を刊行し、本研究は終了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究修了年度を迎えたため、X線CTデータの取得および解析はすでに終了している。残りの作業は、論考及び資料編からなる研究報告の編集、H30年度中の刊行である。この研究報告は膨大な資料情報を提示するものであり、今後の古墳時代遺物研究において大いに利用されることが期待できる。 また、各資料の画像データは、資料所蔵機関にコピーを提供している。そのため、今後展示等各種企画において解説用画像としての活用が期待され、広く社会に還元できるだろう。すでに、本研究成果を用いた新たな資料再報告などでの利用も一部で進められており、今後もその拡大が期待される。
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Causes of Carryover |
研究成果をまとめた研究報告に関する作業量が膨大で、その編集を終了し、刊行にまでは至らなかった。最終年延長申請を行い、報告の刊行のための印刷経費を次年度に残して作業を終え次第、執行する予定である。
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Research Products
(5 results)