2016 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代中期における甲冑生産組織の研究-「型紙」と製作工程の分析を中心として-
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26284128
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 附属博物館学芸課, 学芸係長 (10250375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 謙一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 客員研究員 (70110088)
辻田 淳一郎 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50372751)
坂 靖 奈良県立橿原考古学研究所, 附属博物館学芸課, 課長 (30250377)
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部企画課, 企画係長 (20301004)
井上 主税 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部企画課, 主任研究員 (80470285)
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 指導研究員 (90421916)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 甲冑 / 三次元計測 / 型紙 / 生産組織 / 配布・流通 / 古墳時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
古墳時代中期の甲冑について短甲を中心に、畿内をはじめ広く精密な三次元計測データの収集をはかり、Ⅰ.全体形状、使用鉄板の形状・寸法などを比較、Ⅱ.平面的設計図「型紙」の差異を検討、同一「型紙」で製作された甲冑を認定、Ⅲ.同一「型紙」に基づく製品でも製作後半段階にかかる要素が異なる個体を識別する。この基礎作業を通じて、甲冑製作の実態を追求し、さらにその配布・流通に関わる問題に取り組むものである。28年度の実績は以下の通りである。 1.甲冑の三次元計測を九州(熊本県伝左山古墳)、近畿(京都府宇治二子山古墳、和歌山県大谷古墳、奈良県新沢千塚古墳群)、関東(群馬県鶴山古墳)出土資料、さらには韓国出土倭系甲冑(福泉洞112号墳、杜谷43・72号墳)について実施した。内訳は、短甲13(横矧板鋲留8、三角板横矧板併用鋲留1、三角板革綴1、長方板革綴3)、眉庇付冑2、衝角付冑4である。 2.三次元計測対象以外の資料調査(熟覧・細部計測・写真撮影)もおこない、基礎データを収集した(大阪府岡本山A-3号墳、滋賀県黒田長山4号墳、静岡県安久路2・3号墳、五ヶ山B2号墳、石ノ形古墳、多田大塚2・4号墳出土甲冑)。 3.三次元データに基づき、長野県飯田市内出土の未報告資料の実測を進めた。 4.横矧板鋲留短甲の特徴的な部品、後胴押付板と竪上第2段につき、計測データから形状・寸法を比較検討し、同一「型紙」による製作と認められる新たな事例を発見した。九州内の別県の出土例、福岡県と長野県の出土例という地域を越えた出土甲冑間で一致例を見いだした。 5.4の分析成果について、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館において、ポスターとCG動画による成果報告展を開催した(29年3月7日~4月16日)。また、同館特別陳列「ヤマトの戦士-古墳時代の武器・武具」(29年2月4日~3月20日)において、研究成果の一部を活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
甲冑の三次元データの収集が計画通りに進捗している。28年度は関東出土例のデータを計測したことで、データの地域的な偏在(九州・畿内)の解消へ一歩進めることができた。さらに、古墳時代中期の甲冑、甲冑生産を考える上で欠かせない韓国出土の倭系甲冑のデータを少数ながら収集でき、今後の比較検討の糸口を得た。 短甲各部品の形状・寸法比較の方法について、試行錯誤を重ねた結果、標準的な比較検討方法を確立し、新たな「型紙」一致例を発見するに至った。 これまで進めてきた宮崎県出土甲冑に加え、長野県飯田市新井原7号墳、石行2号墳出土短甲の実測図作成に着手するなど、精密な三次元データを有効活用した甲冑の資料化を軌道に乗せることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は本研究の最終年度である。新たな三次元計測は、一旦、奈良県出土資料についての補足的なものに留め、計測データの比較分析に注力する。これまでの比較は横矧板鋲留短甲のみであったが、分析対象をその他型式の短甲にも広げ、全体形状、各部品の形状・寸法の比較分析を実施する。部品は裾板など未比較部位も対象とする。この一連の作業を年度前半に集中的に実施し、同じ設計に基づく甲冑を抽出する。さらに年度中盤に掛けて、組み立てから仕上げ段階までの諸属性の分析も併せておこない、甲冑製作、生産組織の実態を考察する。研究分担者との討議も踏まえ、成果報告書を刊行する。
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Causes of Carryover |
外国旅費の支出が以下の理由により予定を大きく下回ったため。 1.韓国への航空券が予定額より安価であったこと。 2.研究分担者の1名が在外研究により不在であったため、年度末に予定していた研究参加者全員による研究会議を29年度に先送りした。これにより出席予定だった海外共同研究者の旅費支出がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度前半の研究会議への研究分担者旅費(国内他機関所属)、補足的な資料調査旅費に充てる。また、甲冑三次元計測データのなかに、比較検討に加工を必要とするデータがある。その作業を計測専門業者に発注する費用として一部充当する。、
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