2014 Fiscal Year Annual Research Report
北海道における先住民族の「知」の接合に関するアクション・リサーチ研究
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26284135
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
ゲーマン・ジェフリー ジョセフ 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80646406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 博志 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30333579)
飯嶋 秀治 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (60452728)
マーティン カイリー・アン 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 特任准教授 (90570474)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化人類学 / アイヌ / 教育 / 文化伝承 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は研究計画の通り、ハワイ州ホノルル市において開催された世界先住民族教育会議(WIPCE)に12人のアイヌ教育者・文化実践者とともに参加し、5つの国際発表を行った。同時に、ハワイ大学マノア校への訪問・見学やホノルル短期大学での収録体験、WIPCE自体の開催に関する調査を通じて、現地の先住民族教育における先住民族の「知」・の活用の仕方を把握し、それ以降の研究交流に向けた重要なネットワーキングも達成できた。それ以降、北海道における「知」の接合の有り方に関して検討すべく、3人の海外研究者・実践家を札幌に招へいし4つの国際研究会や講演会を開催する等、8か月の研究成果をも踏まえた見解を北海道大学の教育学院の総合講義に還元した。その中、3月のハワイ大学の講師の招へいはWIPCEのアイヌ発表者による非公開報告会と同時に行われ、有意義な交流活動に結実した。また、ゲーマンは10月に韓国の釜山大学の国際会議へ招へいされ、教育人類学に関する講演も行った。その他、WIPCEの体験を掘り下げ、アクション・リサーチを確立するべく、2つの研究合宿と一つの話し合いも行った。これらの活動は出版物につながらなかったが、報告会は新しいメンバーの追加依頼や、ブログ、FBでの言及に結実した。 しかし、プロジェクトの中心的研究方法であるアクション・リサーチのコンセプトが不明確だった上に、調査・実践の両面における情報共有に課題が出現した。よって、H27年度から、調査対象やプロジェクト・メンバーを絞り込むことにより、より実態に即した実践的調査の有り方を目指す。当面は継続的な省察を通じ、現実的なプロジェクトマネージメントの有り様やアイヌ・和人・外国人の有効な異文化間コミュニケーションを考え直すと同時に、地域に根差したアイヌ教育者・文化実践者と共に、合宿やイベントと違った形の共同研究形態について探究する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、(1) WIPC:Eへの出席および発表、(2)海外の先住民族教育・研究者との共同によるアクション・リサーチプログラムの実施・開発およびその記録、分析、(3)これらを踏まえて、先住民族アイヌの個別の「知」の構築に影響する要因や構造の分析と解明、(4)これらを受けて、札幌近辺の高等教育機関における、地域に根差した教育研究の検討と実施という4つの研究を柱として、3年間かけて実施することを目的としている。また、これらを総合して、先住民族の「知」の構築について海外の先住民族出身の教育者や研究者との交流からの意義と方法をまとめていく報告する予定である。 H26年度においては、課題(2)と(3)の参考になる基礎資料がWIPC:Eの発表原稿から揃えている。課題(2)と(3)の性質から、新たなメンバーで新しい資料を作り出すことがプロジェクト遂行上、新たな課題となる。また、アクション・リサーチにおける海外の研究者の参入に関しては、プロジェクト・メンバーの中には統一性が見られなく、実施した二つの合宿においては海外の先住民族教育・研究者の参加までは至っていない。従って、今後課題(2)と(3)を継続するために、新しいアイヌの当事者をプロジェクトに取り入れ、新たな資料を作り出すとともに、新たに海外の先住民族教育・研究者の加入を実現しなければならない。また、(2)の実現のために、H26年度に現れた根本的な課題である、アイヌ当事者にとってのアクション・リサーチのメリットを明確に示すという課題も現れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の課題を受けて、当面はH26年度から残っている一人のアイヌのメンバーを中心に、アイヌの社会的力学により即した、継続が現実的で、かつ当プロジェクトの趣旨にも適合したアクション・リサーチ的な研究方法を探究する予定である。合宿やイベントの是非についても再検討する。同時に、ゲーマンと残っているメンバーやゲーマンとルアレンは国際共同研究発表を通じて、国際研究者交流も実現し、引き続き国際的共同研究につなげる方法を積極的に探究する。 新しいアイヌメンバーに入っていただく前に、H26年度に課題として現れたアクション・リサーチ研究に参加するメリットや、そのコンセプトについては明確化し、参入の時点で具体的に役割や作業量が分かることができるよう、説明書を新たに作成する。課題として上がったプロジェクトマネージメントの体制を強化するために、北海道大学内でアイヌ研究の指導に携わっている教員を中心に、補佐適任を探す。同時に、継続的な省察ができるのに、研究プロジェクトに関するブログを公開し、昨年度まで参加していた人々をも含めたフィードバックを募る。 具体的な日程としては5月の台北での国際ワークショップや6月のワシントンにおける国際学会での共同研究発表、5月の千葉や8月の東京の国際学会における発表、8月の札幌における日本開発教育全国研究集会における発表を予定している。11月及びH28年の2月に公開シンポジウムや国際研究集会および国際研究合宿を予定しているが、これらの形態は上記のアイヌ当事者との共同検討による。 いずれにしても、これらの対応策により、上記の「現在までの達成度」で述べた研究目標を3年間以内で達成できるよう、軌道修正をはかる。
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Causes of Carryover |
当初予定していた金額と異なったいたため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降に物品費に使う。
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Research Products
(10 results)