2015 Fiscal Year Annual Research Report
日中韓在住アフリカ人の生活戦略とアジア―アフリカ関係の都市人類学的研究
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26284139
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
和崎 春日 中部大学, 国際関係学部, 教授 (40230940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 和明 立教大学, 文学部, 教授 (10257157)
三島 禎子 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20280604)
嶋 陸奥彦 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (30115406)
田中 重好 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50155131)
松本 尚之 横浜国立大学, その他の研究科, 准教授 (80361054)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 在日アフリカ人 / 多文化共生 / 移民 / 都市人類学 / アジアーアフリカ関係 / 日中韓関係 / 東南アジアのアフリカ人 / アフリカでの日中韓プレゼンス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年は、共同研究2年目なので、中国と日本においてとともに、より力点を置いて韓国において在アジア・アフリカ人の生活動態の調査・研究を進展させた。韓国研究の蓄積の厚い嶋陸奥彦教授が3回にわたって在韓アフリカ人の調査研究と共同討議をおこなった。8月2日~4日にかけては、韓国ソウルの在韓アフリカ人が集中するイテウォン地区のアフリカ人街、外国人が集まる電気器具街のなかの、特にモスレム・アフリカ人が集まるイスラーム寺院近辺を、和崎と共同調査した。また、韓国のアフリカ研究と在韓アフリカ人研究の第一人者韓ゴンス教授と嶋教授・代表和崎とがソウルにて研究会を開催して、在韓アフリカ人研究のキリスト教による包摂性など新たな研究視角について討論した。8月下旬に、嶋教授は、ソウル・イテウォン地区と外国人居住区のアフリカ人生活動態を調査した。三島准教授は、アフリカー中国の交流関係調査をアフリカで実施し、セネガルで中国人商人とアフリカ・ソニンケ商人との接触による競合関係を調査した。松本講師は、中国・中山大学と交流をはかりアフリカ人動態の資料を収集した。田中教授は、異文化による地域社会作りや多文化共生にかかわる論考を数多く発表し、共同研究の理論フレームづくりの部分を発展させた。在韓アフリカ人の生活動態の調査研究については、旧年と今年の三島、嶋両分担者の調査を継承発展させて、松本、栗田、和崎、嶋の4名が集中的に調査をおこなった。こうした研究の成果の一部として、10月28日~31日は、韓国アフリカ学会の事務局が置かれ韓国アフリカ研究の中心地・韓国外国語大学の主催による第5回国際アフリカ研究大会で、和崎、松本、栗田の3名が報告し、在韓アフリカ人の生活研究も含めて在アジア・アフリカ人の移動動態を学会報告し韓国アフリカ研究者、アメリカ・アフリカ研究者等と厚い討論を行い共同研究を進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目なので、論文発表や業績の出版については、調査の進展とともにそれなりの厚い進展をみた。旧年度にスタートしてフロンティアだった韓国におけるアフリカ人の活動について、嶋、栗田、松本、和崎と4人が現地調査を複数回行い、共同研究を進展させることができた。10月28日~31日は、韓国アフリカ学会の事務局が置かれ韓国のアフリカ研究の中心地・韓国外国語大学主催の第回国際アフリカ研究集会で、日本アフリカ学会を経由して在日アフリカ人研究者の発表を日本アフリカ学会が後押しする形で、松本尚之、栗田和明、和崎春日の3人が代表発表をおこない本共同研究を国際舞台で検証することができた。研究代表とメンバーによる発表があいつぎ関連の書物も出版され、相互に有機的関連をもつアフリカ人のディアスポラ展開をめぐる業績がかなり集積されてきた。具体的には、日中韓でのアフリカ人の活動研究のみならず、これを含んだアジア全体を視野に入れたアフリカ人の移動生活動態をかなり有機的に、且つ、深く共同研究できた。代表を中心とする昨年からの継続調査によって、今まで社会主義体制下の門外不出のスポーツ資料の収集調査を発展させ、ベトナム・サッカー界におけるアフリカ人の活動活躍の様態が始めて明らかになり、分析と投稿完了の段階にまで進展した。この東南アジアでのアジアーアフリカ交流研究をめぐっては、モザンビーク人はじめアフリカ人を大学に受け入れ教授しているハノイ国家大学のナム教授とフオン講師の2研究者を中部大学に招聘し、両研究者による「ハノイ国家大学におけるベトナムーアフリカ交流」報告を受けた討論を行い、本共同研究を発展させた。代用と分担者あわせて、アフリカ人の世界展開をめぐる書物を含めた価値ある刊行が続いてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は、最終年度にあたるので、調査の継続発展に加えて、共同研究会や報告発表、業績の公表・出版にも力を注ぎたい。在日中に比べて在韓のアフリカ人動態の調査は、今年最も強化して行い、それを論考の形にまとめ公表したい。また、在日中韓の東アジアのアフリカ人動態からより東南アジア等アジア全体に広がるパースペクティブで共同研究を発展させたい。ベトナムでのアフリカ人の活動については、研究成果が刊行・公表される。日本におけるアフリカー日本社会との交流でも、今まで調査を重ねてきた東京・名古屋・関西の3大大都市圏での研究に加えて、九州において厚い交流を蓄積している熊本の調査研究を進めて在日アフリカ論のまとめを重厚化して論を発表したい。アフリカにおける日中韓との交流や共同・競争関係は、今日、アフリカ大陸に広く現象しており、これを捉える調査研究を、カメルーン、セネガル等で行い、進め発表にたどり着きたい。共同研究を総合化する際に、中国、韓国、ベトナム等関連地から研究者を招聘して研究会を進化させることも考えている。今のところ、昭和堂が関心を寄せており、公表に際しては一般書物の出版の形をとりたいと考えている。
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Causes of Carryover |
移動困難が生じうる現地調査(カメルーン、ベトナム、韓国等)をおこなった地で、移動用に想定していた車チャーターを必要とせず、公共交通を利用した調査を実施した。また、中国調査で長くカウンターパートである広州・中山大学の王建新教授の所属大学移動により、共同研究引継ぎがうまくできず、中国調査を執行できなかった。アフリカ、ベトナム、韓国での現地調査だが、学内事情により希望していた日数の調査ができず、限られた日数の調査となった。資料整理においては、フランス語、ベトナム語、韓国・朝鮮語を扱える人材が限られ、またアフリカ文化に通じるアルバイトが限られ、当初予定よりも整理が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中国の広州・中山大学での協力によるアフリカ人調査では、カウンターパートを人類学・社会学研究室のたとえば王維教授に依頼するなど、新たなネットワークや的確な引継ぎを行い調査を実施したい。アジア・アフリカ調査で、たとえば在ベトナム・アフリカ人の調査、韓国調査やアフリカ調査は、軌道に乗ってきているので、日数、訪問頻度、調査量を拡大増加させる。ベトナム、韓国、中国等の研究者を招待して、共同研究の質を高める方法もとれる。アジア・アフリカでの移動手段では、時間効率を上げ万全のセキュリティを期して、節減せず、車チャーターを活用して調査を実施する。
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