2016 Fiscal Year Annual Research Report
法廷における異文化衝突の言語分析―法文化の変容と法批判をめぐって―
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26285001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾崎 一郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00233510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱野 亮 立教大学, 法学部, 教授 (80267385)
宇田川 幸則 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80298835)
高橋 裕 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (40282587)
池田 公博 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (70302643)
堀田 秀吾 明治大学, 法学部, 教授 (70330008)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多文化主義 / 法文化 / 司法通訳 / マイノリティ / 法批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年7月に、博多にて、九州大学に短期滞在中の海外研究協力者Dimitri Vanoverbeke教授(ベルギー)を囲んで、尾崎・高橋・池田の参加のもとに全体会合を行い、最終年度へ向けての研究取りまとめと遷延している国内調査の実施について情報交換と議論を行った。また、7月と10月にそれぞれ東京と大阪にて研究会合を行った。 9月には研究協力者の郭薇(北海道大学助教)が、Asian Law and Society Associationの年次大会(シンガポール)において、また、11月には尾崎・堀田・郭薇が、中国において(長春理工大学中日法学理論国際学術フォーラム、北京第2外国語大学中日社会学会成立記念シンポジウム)、これまでの調査、研究成果にもとづき、研究報告を行った。 海外調査として、昨年度に引き続き尾崎が平成29年3月にベルギーを訪問し、Vanoverbeke教授、平山翔悟判事補(さいたま地方裁判所・ベルギー出向中)と意見交換を行った。また国内調査として、松岡佑美判事補(名古屋地方裁判所)を札幌に招聘し、東海圏における外国人等を当事者とする訴訟の現況と課題についてのインタビューを行った。さらに現地での調査実施の布石として、裁判所におけるヒアリング、参与観察、インタビュー等の調査の是非を松岡氏を通して照会中である。 これらの作業を経て、一定の文化を共有する集団が外周団のメンバーに対して本源的に有している敵意や憎悪、排除傾向という根本問題に直面することとなり、それを克服するための実態規範、トランスレーション、手続規制に関する実証研究の必要性に想到するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
法廷における異文化衝突というテーマをめぐって、国際シンポジウムや国際学会での報告、全体研究会、実態調査を着実に積み重ね、知見を深めてきたが、その結果直面することとなった人間集団が外集団に対して本源的に有している敵意、憎悪、排除傾向という根本問題は、進化心理学、認知科学、言語人類学などの新領域科学の知見も取り入れながらより学際的に処方を考察すべきである課題である。 人間の心のメカニズムとして生来的に組み込まれている内集団優位傾向は、法的コミュニケーションをプロトタイプとする理性的コミュニケーションによって克服されなければならず、そのためには実体規範による憎悪の可視化による緩和、文化的コンテクストに配慮したトランスレーションの実現、手続による対立感情の緩和という循環的関係にある三要素についての実証研究が必要である。しかし、それを行う時間的余裕はなく、資金的規模も限界にあるため、研究遂行は停滞せざるをえなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度として、調整に手間取り遷延している東京と名古屋における国内調査を、再調整して行う。研究分担者間の協働を一層密にして、東京と名古屋の地裁における実態調査、両地の弁護士会および(社団法人)日本司法通訳士連合会、(NPO法人)東京国際人権協会等における調査を行いたい。 特にこれまで調査ができずにいた国内の法廷については、名古屋地裁についてようやく調査の是非、方法についての照会にこぎつけることができもう一歩のところまで来ている。 また、外国人や移民を当事者とする訴訟に通じた弁護士(法律事務所)については、以前から調査の確約を得ている日中の渉外事務を専門とする弁護士法人(福岡市)での聞き取りを実施したい。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究費に関しては475,192円の残額が生じた。これは国内調査に関して調整がなおうまく進まなかったことが最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の残額については29年度の交付額と併せて、28年度にやり残した東京と名古屋での国内調査のための旅費、資料代、謝金等として効率的に使用するとともに、最終年度の総括シンポジウムおよび研究成果の公刊へ向けて用いる予定である。
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Research Products
(13 results)