2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26285015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山川 隆一 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60158079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 悠 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00456097)
石崎 由希子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 講師 (50547817)
桑村 裕美子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70376391)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 法の実現手法 / 労働紛争の解決 / コンプライアンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、①労働法の実現手法についての分析の視角や検討の対象を確立したうえで、②日本における労働法の実現手法の現状を把握し、③あわせて比較法的な分析の準備作業を行うこととしていたが、①については、これまでの研究を基礎に、労働法の実現手法とより広義の労働政策の実現手法との違いや関係を明らかにするなど分析視角の整理を試み、論文として発表した(山川隆一「労働法における法の実現手法」(佐伯仁志責任編集・岩波講座現代法の動態第5巻『法の実現手法』171-199頁(岩波書店、2014年)))。また、②については、統計資料を基礎に検討を行い、その結果の一部を上記論文に盛り込むとともに、労働紛争の解決という観点から、研究代表者が、平成27年2月の国際会議において論文提出と報告・議論を行った(JILPT-ILO Joint International Seminar on Performance of Prevention and Resolution Mechanisms and Processes for Individual Labour Disputes(2015年2月23-24日、東京 (論文は現在公刊作業中))。さらに、「違法労働」という観点からみた日本の労働法の実現手法の特色と課題についても論文を公刊した(山川「『違法労働』と労働政策」日本労働研究雑誌654号74頁(2015年))。以上の他、各研究分担者において、個別領域を含む労働法の実現手法について検討を進め、検討結果を公刊し、あるいはその作業中である(桑村裕美子「使用者の反組合的行為に対する損害賠償請求の可否ー名古屋自動車学校事件」法學78巻4号68-77頁(2014年)など)。 ③については、平成26年度は、研究代表者がアメリカ合衆国に赴いて、合衆国労働省及び雇用機会均等委員会を訪問し、行政機関における法の実現の手法について聞取り調査と資料収集を行うとともに、同国の労働法研究者からも本研究テーマに関する聞取り調査を行った(その結果の一部は上記「『違法労働』と労働政策」に反映されている)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の所期の研究計画のうち、労働法の実現手法というテーマについての基礎的な検討として位置づけていた、法の実現手法の概念の明確化や様々な手法の分類、あるいは日本における現状の把握については、相応の進展が見られたと思われ、すでにその成果を一部公表している。また、比較法的な研究についても、当初の研究計画通り、研究代表者において、いわばパイロット調査としてのアメリカ合衆国での調査を先行的に実施し、有益な知見や資料が得られている。ただし、さらに広範な比較法的な検討を行うに当たっては、同国以外の国を含めて様々な制度の内容やそれらの位置づけを把握したうえ、各国における共通点や相違点を明らかにすることが有益であるが、そのように共同研究としての色彩がより強くなる段階には、必ずしもまだ到達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27 年度においては、労働法の実現手法に関する基礎的な検討を継続するとともに、本年度の検討で得られた問題意識に照らして、アメリカ合衆国以外の検討対象国において採用されている労働法の実現手法につき、各国の制度の運用面の実態調査を含めて詳細に検討する予定である。また、本年度においては必ずしも十分達成できなかった、アメリカ合衆国以外の国を含めて様々な制度の内容やそれらの位置づけを把握したうえ、各国における共通点や相違点を明らかにするという作業にも、28年度における総括をも視野に入れて取り組むことを想定している。 さらに、平成27年9月には、南アフリカ共和国における、国際雇用労使関係研究協会世界大会において、研究代表者による本研究テーマについての報告を行う予定である(報告承認済み)。
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Causes of Carryover |
物品費のうち文献購入に係る費用については、研究代表者において、主たる検討対象国であるアメリカ合衆国の文献の購入が中心になり、その余の外国における文献の購入が予定どおりには進行しなかった。また、外国文献については、年度中に納入等の処理がなされなかった図書が相当あり、次年度の納入時点での支払が予定されている。さらに、物品費からパーソナルコンピューターを購入したが、予定額よりも廉価なものでも性能としては十分であったので、予定額よりも支出が少なくなった。その他、人件費は作業実績に応じて支払っているところ、必要な作業を終えた段階での報酬が予定額より若干少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては、比較法的研究の対象が本年度よりも広範になるため、本年度の繰り越し分は主に文献購入の費用に充当される予定である。また、本年度は旅費の見込みを低額に抑えた結果、使用実績が予定額を超過したが、27年度は海外調査が多く予定されているため、可能な範囲で旅費としての使用も検討する予定である。
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