2015 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッド型労働法における実体規制・手続規制と労使関与メカニズム
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26285016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒木 尚志 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60175966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富永 晃一 上智大学, 法学部, 准教授 (30436498)
神吉 知郁子 立教大学, 法学部, 准教授 (60608561)
成田 史子 弘前大学, 人文学部, 講師 (90634717)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 実体規制 / 手続規制 / 従業員代表制 / 労使関与メカニズム / ハイブリッド型労働法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の①諸外国の労働法規制における実体規制と手続規制の分析、②手続規制の対象事項・担い手・許容度に関する比較法的研究、を継続すると共に、③欧米の従業員代表制度についての比較法的検討を行った。 欧州各国では、労働組合とは別の従業員代表が制度化されていることが多い。労働組合が基本的に任意に加盟するものであるのに対し、従業員代表制度は、当該事業場に所属する全従業員を自動的に代表するのが特徴である。その場合に、労働組合と従業員代表組織の権限・機能がどのうように整序されているのかを解明に努めた。欧州では労働組合は産別レベル、従業員代表は企業・事業所レベルと分離して存在していたが、今日では組合の権限を従業員代表に委譲する例が生じてきており、その動向をフォローした。 他方、アメリカでは、1935年の全国労働関係法制定時の御用組合排除政策の影響が、今日でも強力に同法の解釈を支配している。その結果、使用者のイニシアティブによって設けられた従業員の経営参加制度は、労働団体に対する使用者の支配介入として禁止されると解されている。しかし、アメリカの排他的交渉代表制度は、当該交渉単位の労働者を、自動的・強制的に代表するという限りでは従業員代表立つ側面を備えている。このようなアメリカの排他的交渉代表制の現状と改革論をフォローし、分散化したレベルにおける労働組合と従業員代表制の関係についての一つのモデルとして検討を行った。 比較法的に見た労働条件規制の特色を、国際学会において報告し、種々の意見交換を行うと共に、従業員代表制度についても成果を公表する等、集団的労働条件決定の担い手について、検討を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実体規制と手続規制の対象事項の検討、両規制の適切な組み合わせ、デロゲーションの活用のあり方等の検討に加えて、手続規制の担い手となる従業員代表制について、欧州・アメリカの状況について検討を行うことができた。さらに、その成果を、国際労働法社会保障法学会のベネチアセミナーおよび同ケープタウン世界会議において報告し、諸外国の研究者と有益な意見交換を行うことができた。また、日本における従業員代表制のあり方についても、研究分担者が研究成果を公表することができた。 したがって、概ね順調に進展しているといってよいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの検討を踏まえて、本研究の総合的考察のとりまとめをおこなう。特に、日本における労使関与メカニズムを踏まえた実体規制と手続規制のハイブリッド型規制システムの構築という課題に向けて、検討を深化させる。 具体的には、手続規制事項と実体的規制事項の整理が課題となるが、これは手続規制の担い手との相関で行うべきと考えられる。そこで、手続規制の担い手として、過半数を代表する労働組合が存在する場合、少数組合が存在する場合、組合が存在しない場合について、それぞれ従業員代表組織を導入すべきか否か、それと労働組合との権限分担に留意しながら考察を深める。ここでは欧州における労働組合と従業員代表制度の関係、そして事業場レベルに労働組合が排他的代表として存在するアメリカの状況を参考としつつ、企業レベルに複数組合が存在するという特殊事情を考慮して、慎重に検討する。 さらに、これまで日本に欠けていた産業別や地域レベルで、国家法を労使関与を通じて柔軟化させるメカニズムの可能性を検討し、これが困難とすれば代替的な協議会・審議会を活用することの可能性も検討し、日本の状況に適合的な制度論の構築に努める。
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Causes of Carryover |
研究分担者の予定していた海外調査が諸般の事情から取りやめとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度のとりまとめのために必要な書籍購入等に当てる予定である。
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