2015 Fiscal Year Annual Research Report
変容する現代所有概念の再構築-所有概念の多元的モデル化
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26285022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横山 美夏 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80200921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 健介 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00551459)
荻野 奈緒 同志社大学, 法学部, 准教授 (30546669)
佐久間 毅 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80215673)
北村 雅史 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90204916)
原田 大樹 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90404029)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 所有権 / 区分所有権 / 会社法 / 都市計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、①所有概念に関する理論構築に必要な比較法研究および②わが国において所有制度の変容が指摘される事象の分析を進めた。 ①については、前年度の研究から、フランス法研究の有用性が判明したため、文献調査のほか、現地での聞き取り調査や情報交換等を集中的に行った。具体的には、第1に、所有権の排他性の射程を検討するため、共通財をめぐる議論を検討した。その結果、排他性を所有権の本質とは見ない見解が存在するほか、自然資源等については、私的所有権と所有者による利用の独占を直結させない考え方も有力であることがわかった。第2に、遺体の帰属に関する議論を検討した。その結果、当初は遺体の所有権を認める見解が有力であったものの、遺体を共通財とし、所有権より限定された権利しか認めない立場が有力化していることがわかった。第3に、美術品の譲渡と複製権の帰趨に関する19世紀の議論を検討した。その結果、複製を美術品の所有者の権能に含める見解と、物的所有権とは別個独立の複製権を観念する見解があることがわかった。 ②については、第1に、区分所有につき、建物区分所有法における規律の変遷を手がかりに、区分所有建物における区分所有者の権利の捉え方について検討した。第2に、株式につき、株主から株式を強制的に奪うことのできる会社法上の制度の趣旨と問題点を検討した。具体的には、会社が少数株主から株式を奪うことのできる制度として、株式併合、合併および全部取得条項付種類株式等を利用した締出しを、大株主が少数株主から直接株式を取得する制度として、特別支配株主による株式等売渡請求を取り上げた。第3に、民法と行政法の双方が関係する所有権の内容・効力・制限の問題につき、都市法を素材とする検討を行った。具体的には、エリアマネジメントを取り上げ、その活動資金の負担や土地利用制限がどのような法理論によって正当化可能なのかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成27年度は、①比較法研究についてはフランス法を中心に研究を進め、②日本法研究については、区分所有、株主の権利、都市計画の3つの領域における、わが国の問題状況の分析を進める予定であった。上記研究実績の概要にあるとおり、①・②の双方について、おおむね計画どおりに研究は進展している。①比較法研究については、海外調査も実施した。 なお、当初はドイツ法の調査研究も行う予定であったが、フランス法の調査を進めたところ、フランス法の複数の分野で有益な示唆を得られる議論が存在していることが判明したため、フランス法の調査研究を先行させることとした。また、比較法研究の個別テーマについては、わが国で問題となりうるテーマを取り上げて研究を進めたところ、外国法の対応する議論が必ずしも日本法に参考にならないものもあることがわかった。この点については、研究テーマを修正して検討を進める必要がある。 研究方法については、当初の予定どおり、①比較法研究班と②日本法研究班に分かれて研究を行った。全体研究会については、2ヶ月に1回開催することを考えていたが、授業期間中の日程調整が難航したため、授業期間外に開催することとし、各班の研究がある程度進んだ9月および2月に集中的に研究会を開催して6つの報告テーマにつきそれぞれ検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も、研究計画に沿って、研究を進める。ただし、比較法研究については、これまでの研究により、フランス法研究に示唆を得られる議論が多く存在することがわかったため、フランス法を中心に研究を行う。その際、これまでの研究により、日本法の考察に直結しないテーマについては研究対象から外し、反対に、平成27年度までの研究により、より深く扱うこと必要があることが判明したテーマについては重点的に検討を行う。また、新しく取り上げることが有益であると思われるテーマについては、その必要性も含めて検討を加える。日本法研究については、これまでの研究をさらに深め、具体的提言に向けた検討を行う。 研究推進の方法については、これまでと同様、比較法研究班と日本法研究班とに分かれてそれぞれの研究を進める。今年度は、とくに、研究成果のまとめと公表に向けて研究を行う。そのために、今年度は、前半はそれぞれの研究テーマの完成に向けた作業を行い、後半に、研究成果の公表のため、全体をまとめる全体研究会を集中的に行う。
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Causes of Carryover |
まず、比較法調査について、フランス法研究が進行ししたため、当初予定していたドイツ法の聞き取り調査について平成27年度は行わないこととした。また、国内における実務状況についてのインタビューにつき、方法およびインタビュー先について再検討する必要が生じたため、その部分については、次年度に行うこととした。 つぎに、物品費については、印刷機の更新年度を、研究のまとめや公表に向けた作業が必要となる最終年度に延期することとした。また、入手を予定していた文献のうち、法改正の遅れなどの事情で出版が遅れたものがあり、それらについては次年度に入手することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、比較法研究に関する補充調査について、必要に応じて文献調査あるいは聞き取り調査を行う。また、実務インタビューについて、平成27年度に行うことができなかった分を平成28年度に行う。さらに、必要な機器の更新のほか、入手の遅れている文献収集を進める。
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Research Products
(12 results)