2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26285044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 慎一 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00221531)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アベノミクス / 日本経済 / 高頻度データ / ゾンビ企業 / 潜在成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アベノミクス下で時々刻々と入ってくるデータを精査・分析することで、現在の日本経済を短期的な観点と中長期的な観点の両方から理論的・実証的に検証し、それに対する政策的な処方箋を提言することを目的としている。アベノミクスへのこれまでの評価はデータの蓄積が十分にない段階で行われたものが大半で、必ずしも学術的な観点から十分な検証が行われてきたとは言い難い段階にある。本研究では、社会実験アベノミクス下で起こっている現象を、研究期間中に入手可能となるさまざまな新しいデータを精査しながら標準的な経済理論に基づいて客観的に事実確認し、現在の日本経済を短期的な観点と中長期的な観点の両方から理論的・実証的に分析した。 短期的な分析では、intra-daily dataなど高頻度のデータを利用して、金融市場を分析した。高頻度のデータを使った金融市場の分析は、先行研究でも研究の蓄積が多い研究分野である。しかし、本研究では、伝統的なファイナンス理論で前提となっていた「効率市場仮説」とは異なり、国内投資家と外国人投資家の違いなど、投資家間の異なる見方が、アベノミクス下での金融市場の価格形成にいかなる影響を及ぼすかに注目した。特に、一日の異なる時間帯(東京市場、ロンドン市場、ニューヨーク市場)で金融市場の価格形成がどのようなメカニズムで行われ、どのような影響を他の金融市場に及ぼしてきたのかに関する実証分析を、研究協力者らとともに取り組んだ。また、長期的な分析では、金融面に注目することで、日本経済の中長期的な成長可能性を考察した。特に、研究協力者らとゾンビ企業の判別に関する新手法を応用するなど、アベノミクス以降に日本経済で金融面において何らかの大きな変化が生まれているかどうかを検証し、今日の日本経済が潜在的に抱えるリスクとはどのようなものかを理論的・実証的に考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本経済を短期的な観点からの理論的・実証的分析は、すでに論文が複数、国際学術誌に刊行されるなど、当初の予定以上の大きな成果が上がっている。一方、中長期的な観点の理論的・実証的分析は、まだ論文が国際学術誌に刊行される段階には至っていないが、分析に向けたデータベースが順調に整備されるなど、論文の完成に向けて当初の予定通りの成果が上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は、平成27年度に引き続き、短期的な観点からは高頻度データを用いて金融市場の価格決定メカニズムの検証を推進し、学術論文の形でまとめて学会誌に投稿する予定である。また、中長期的な観点からの分析においても、財務データを中心にデータの蓄積が徐々に進んでいる。このため、中長期的な観点からの分析も、来年度は本格的な推計を行い、本格的な分析に着手する予定である。こちらの分析も、最終年度までに学術論文の形でまとめて学会誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の遂行に必要なデータベースを購入する予定であったが、数か月の手続きの遅れから購入が次年度の4月にずれ込んだため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の4月に購入可能であることは判明しており、数か月の遅れとはなったが、予定通りデータベースを購入し、発生した次年度使用額をほぼ消化する予定である。
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Research Products
(6 results)