2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26285052
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中林 純 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (30565792)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 入札談合 / 公共工事 |
Outline of Annual Research Achievements |
【データ収集・整理】国土交通省が発注した公共工事の入札結果データを取得した。2005年4月以前のデータは非公表データのため,国土交通省の地方整備局に情報公開請求を行い,2005年4月以降と同一の項目のデータを取得した。加えて,地方公共団体発注の入札データの取得を推進した。2014年度は宮城県内市町村のデータ収集が完了し、さらに山形県、岩手県、福島県、大阪府内市町村のデータ収集に着手した。これらの地方公共団体については,国土交通省のように全面的に入札結果データをインターネット上で公表している団体は多くはなく,したがって研究補佐員を1名雇用し、データの取得を進めた。また、地方団体より紙媒体でのデータ提供を受けるケースが多いため、これらを電子化する専門の民間企業に業務を発注し、電子化を行った。 工事の詳細情報を取得するため、財団法人日本建設情報総合センター等が保有するデータを取得した。また、公正取引委員会等による談合摘発事例については,公正取引委員会のWebページより取得した。 【既存研究サーベイ】入札談合の既存研究のうち,Poter and Zona (1993) , (1998), Pesendorfer (2000), and Bajari and Ye (2003),Ishii(2009)等の分析を進めた。また、日本の談合の特徴を把握するため、日本弁護士連合会の報告書(2001年)を活用し、さらに日本弁護士連合会にデータ収集等について協力を求めた(2014年12月)。 【サンプル統計量の取得】取得したデータにおいて、工事種類別及び入札形態別に契約金額規模,落札率,平均落札者数,落札者の識別など基本的なサンプル統計量の取得を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集については、国土交通省の担当者による並々ならぬ協力を受け、過去15年分、件数で10万件を超える国の公共工事の入札結果の情報を取得することができた。 地方公共団体のデータについては、研究補佐員の努力により取得方法やデータ化について、一連の作業プロセスが確立された。ただし、地方公共団体の中には、入札結果データの保存状況が国のそれに比べて著しく悪い団体があり、また、情報公開についても保守的であるために、全自治体データの取得については相当程度の時間をかけることが必要であることがわかった。 サンプル統計量については、取得されたものから随時行っており、この点についての進捗には大きな問題はない。 既存研究サーベイについても、研究協力者のKei Kawai氏からの並々ならぬ協力の下、順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「一位不動」と呼ばれる入札の現象について分析を進める。具体的には回帰分断デザイン等の計量経済学的手法の考え方を応用し,こうした「一位不動」入札が果たして談合から生じたのか,それとも競争的な入札でも生じるのかを判別する。さらに,入札参加業者名からそうした「一位不動」入札に荷担した業者は常習的に談合していた可能性があること等を勘案し,データ期間において談合がどの程度,どのくらいの範囲にわたって行われていたのか,また,それによる社会的な損失はどの程度のものだったのかを推計する。 予定価格の事前開示や総合評価方式の採用の有無,入札結果の公表の程度や,発注全体に占める一般競争入札の比率等に代表される入札制度は,都道府県・市町村毎にバリエーションがあり,申請者は過去10年あまりの全国地方公共団体の入札制度について,パネルデータで保管している。このような入札制度のバリエーションから落札率の高止まりや談合の発生の確率が上がるかどうかについては,Ohashi(2008)が三重県発注の公共工事のデータをもちいて実証分析を行っている。そのような既存研究をベースに,本研究では,全国地方団体のデータを用いて,より大きな規模で入札制度の談合との関係を実証分析する。 その他,選挙データや政治家への献金データを用いた政治と談合の関係、また、公務員の再就職(天下り)と談合との関係についても分析を検討する。
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Causes of Carryover |
26年度研究費はおおむね計画通りに使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度分の研究費と合わせて使用する予定である。
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